来るべき時が来た! ⑦

「誰ともしないで、ハルが大人になるまで我慢できるの?」

「……他の女はもうどうでもいい」

「ふーん?ハルとするから?」

「だから……!ああもう、なんにも言えなくしてやる!」


 リュウはハルの頭を引き寄せ、唇を塞いだ。

 何度も何度も、ついばむような優しいキスをして、ハルの唇を舌先でゆっくりとなぞる。


「ん……」


 ハルが小さな声をあげると、リュウは貪るようにハルの唇を吸って、舌を絡めた。


「んっ……」


 リュウの激しいキスに、ハルがまた小さく声をあげた。

 リュウはハルを抱きたい衝動が抑えきれなくなりそうで、慌てて唇を離す。


(ヤバイ……)


「とーちゃん……?」


 ハルがとろけそうな目でリュウを見つめると、リュウの胸がドキドキと激しく音をたてた。


(マジでヤバイかも……)


 いつになく色っぽいハルの目付きから逃れるように、リュウは目をそらして必死で耐える。


「ハル……とーちゃんと、したい……な……」

「今はまだダメだって……」

「いじわる……。とーちゃんから、あんなキス……してきたくせに……」


 ハルが目を伏せて、リュウの胸にそっと手のひらを添えると、リュウの胸が更に激しく高鳴った。


(ああもう……!!いつの間にこんな色気のある顔とか仕草とか覚えたんだ!!)


「ハルの事、好きだって言ったのに……。たいして好きじゃなくても、大人の女の人とはするくせに……。やっぱりハルの事、子供扱いしてるんでしょ」


 うつむいてそう言うと、ハルはまたリュウに背を向けた。


「えっと……ハル?」


 思わぬ事でハルの機嫌を損ねてしまい、リュウはおそるおそるハルの顔を覗き込んだ。


「もう知らない。とーちゃんがしてくれないなら、他の人に大人にしてもらう。ハルと付き合いたいって言う人、他にもいるもん」

「待て、ハル!それはもっとダメだ!!」


 実際にハルが他の男から迫られていた事を思い出し、リュウは焦ってハルの体を抱き寄せた。


「だったら……とーちゃんがハルを大人にしてくれる?」

「でもなぁ……約束したしな、姉貴と……」


 ハルはクルリとリュウの方に体を向けて、人指し指を唇に当てた。


「妊娠しないように避妊さえすればしてもいいって、ママは言ってたけど……とーちゃんのために、ママには内緒にしとく」

「内緒にって……そういう問題か?」


 リュウが眉を寄せて複雑な表情をすると、ハルは真剣な目でリュウの目をじっと見つめた。


「あのね、とーちゃん。たしかにハルはまだ15だけど……好きな人のものになりたいって思うのはそんなにおかしい?ハルだって、女だよ?」

「まぁ……たしかにそうだな……」


 ハルの言葉に妙に納得して、リュウは大きな手でハルの髪を梳いた。


「ホント言うと、オレの我慢もそろそろ限界だしな……。ハルの気が変わんねぇうちに、ハルの全部、オレのモンにしちまうか……」


 リュウはハルの髪を撫でながら、さっきよりも甘いキスをして、そのままゆっくりとハルの細い首筋に唇を這わせた。


「いやなら今のうちに言えよ。途中でやっぱダメって言われても、やめてやれねぇから」

「いやだなんて言わないよ。でも……ハル、初めてだから……優しくしてくれる……?」


 少し恥ずかしそうにそう言うハルをたまらなくかわいいと思いながら、リュウはこれまで体を重ねた相手を優しく抱いた事などないと気付いて、一瞬戸惑った。


(オレを本気で好きになってくれた女も、初めての相手に選んでくれた女もいなかったし、優しい抱き方なんて知らねぇんだけど……相手はハルだしな……)


「目一杯、努力はする……」



 それからリュウは、おずおずとハルの肌に口付けて、ゆっくりと愛情を確かめるように身体中に舌と指を這わせた。

 リュウが時間をかけてハルの体を優しく丁寧に愛撫すると、まだ誰も受け入れた事のないハルの体はリュウの愛と熱を感じて、少しずつリュウを受け入れるための準備を整える。

 リュウはハルの腰を引き寄せ、できるだけハルがつらくないように、ゆっくりとハルの中に入り込んだ。

 ハルが顔を歪め、苦痛の表情を浮かべながら、初めての痛みに耐える。


「ハル……大丈夫か?……やっぱ、もうやめるか?」


 リュウが心配そうにハルの顔を覗き込んだ。


「痛い……けど……やめないで……。ハルの全部、とーちゃんのものにして……」


 そう言ってハルは、リュウの背中を抱きしめる指先に力を込めた。


「わかった……できるだけ優しくする。つらかったら言えよ」


 リュウは込み上げる愛しさを伝えるように、ハルの唇にキスをした。


「ハル、好きだ。ずっとオレだけのハルでいろよ」

「うん……。大好き……」


 誰かをこんなに愛おしいと思うのも、優しくしたいと思うのも、リュウにとって生まれて初めての経験だった。

 ずっと気になっていた歳の差も、戸籍上は身内であると言う事も忘れるほど、すべてが愛しくて温かい。

 この先何があっても、ハルをこの手で守って幸せにしようとリュウは思った。



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