第19話 試練のセブンスヘブン

 ぐえぇぇぇぇ~~~~~!!

「ねえ、なんかおかしな声聞こえるんだけど?」

 長女が言った。

「ななちゃんズ、アイ!……あれ、おかしいな。魔法が使えない。」

 エリスが答える。

「難度Cの世界は絶対安全ですから。魔法も召喚も出来ません。ここの雲のような霞には、空腹を埋めるだけではなく、治癒能力もあるのです。固めれば、あなた達のように、……」

 ボカン!!

 またも、エリスの顔面にクリーンヒット。

「武器にもなるわけです。」

 眉間から血が垂れている。

「実に、便利でしょ。腕白ものさんなんだから、もう。ハハ、ハハハハハ。じゃあ、フォーロ・ミー!! 進むは天の大地から~ 溢れる力に身を任せ~」

 もう、歌おうが踊ろうが何でもいい、必死さに気づいてこっちについて来て!!

 お母さん「あら、芸達者。あたし嫌いじゃないよ! みんな集まって!!」

 鶴の一声で、家族が集まる。(ばあさんを抜いて)

「ありがとうございます(涙)エリス、このご恩は一生忘れません・・・。」

「あれ、おじいちゃんは?」

「ホント、どこいったのかな?」


 そのころじいさんは、「トイレに行こうにも、隠れる場所がない。」と、聖域の支柱におしっこをひっかけていた。

「いましたよ~。」

 探しに来た父さんが、みんなに大声で伝える。

「もう、単独行動は、禁止だゾ!って、ええっ、ここ聖域なんですけど~!!!!」

「ばあさんのそばにいてやりたくてな。」

「それなら、それで、ひと声くださいよ。聖域侵犯は、重罪ですよ!」

「え?」

 次の瞬間、魔導球がエリスの手に。大天使ミカエル様からの合図だ。

「好きに裁け、お前の裁量を見てやる。」

 凍り付くエリス。愛しのミカエル様の前で、高難度な試練だ! ガンバレ!エリス! そして、じいさんの運命は・・・。


「落ち着け、落ち着くのよ、エリス。困ったときのための、「天界審判」じゃないの。これにのっとれば、……死っ、死罪ぃぃぃぃぃ。」

「どうした、なんとかボールがあるんじゃろ。」

「いえ、少々時間をください。」エリスは汗でびしょびしょになった。

「あの、聖域とは知っていましたか?」

「当り前じゃ、ばあさんの復讐に」

 もう、バカバカバカ~。なんでそうなの? 命がかかってるのよ。

「どうした天使エリス。早く、裁かぬか?」

 憧れのミカエル様が怒ってる~。ごめんなさい、お父さん、お母さん、ルイーザ様。私は、もう、堕天使です。

「おじい様、あの、このボールの中へ。」

「それで、いいんじゃよ。」

 そうすると、エリスは、自らの片方の羽根を折り、ホワイトホールを作った。

「(小声で)おばあさんと仲良くね。断罪します。天の裁き、ホワイトホール!!」

おぉぉぉぉぉ!

 祖父が、ホワイトホールに吸い込まれていく。

「それで、経験値玉に? 神なんて言っても所詮は、・・・・・・。」母

「おじい様には、おばあさんのところへ転送させていただきます。エリスは、添乗員ですから。」

 エリスは、不条理にも、堕天使の版烙印を押されたようなものだ。「天界審判」を破ったのだから。

「さあ、行きましょう。神のもとへ。」作り笑いが痛々しい。


 

 がんばれ、エリス! 負けるな、エリス! 明日に向かって、羽ばたくんだ!!

あ、かわいそうなこといっちゃった。

 しかし、「天使のお使いも出来ぬとは、情けない。だが、お前の勇気、このミカエルがしかと見届けた。」大天使は、エリスに仮の羽根を雲で創って渡した。


 なのに、転送先の融合炉では、憎悪が渦を巻いている。

「おじいさん、ばあさんの気持ちわかったかい? 何もない、こんな空間でひとり、寂しかったと思うかい?」

「そりゃそうじゃろうて、うっうっ。」

「違うよじいさん、のけものにするようなやつは、」

「ばあさん、まさか、こんなとこで暗黒を・・・・・・。」

 憎悪が憎悪を呼ぶ融合炉と化していた。

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