第17話 難度Cは変わらず

 融合炉の中には、暗黒体質がたたって、天界の影響で即死してしまった暗黒の使い手の祖母が、炉の中で「また、ひとりかい。かすみの一つも口に入れていないのに。」と、怒り心頭であった。しかし、闇でしかない融合炉の中では、暗黒を使うことも、肉体の存在がないことから、殴ったり、物を投げつけるというようなこともできなかった。「あたしゃまた、一番上がりだよ。」そう闇の認識である文章には、上記のように祖母がしゃべっていることが確認され、記述されている。


 一方、天界では、天使のエリスちゃんと馬が合わないのか、ここに来て怒りが爆発していた。本当は、ほぼ言いがかりなのだが……。

「だから、エリスは調査がちょっと大変でして。大体、7人家族が全滅ですよ、猫さんも。ツッコんだ車や、多重衝突したほかの車のドライバーさんも多かったですし、時間かかるのはしかたないでしょう。エリスは頑張ったし、今も頑張ってる。だから、これ以上、エリスのこといじめるのやめてください。憧れの大先輩の前なんですよ。」

 エリスは、涙ながらに懇願している。

 すると、一番言いがかりっぽかった母が、

「まあ、いいわ。あんたトロそうだし。事故だしね。でも、神様なんてほんとにいるの?」

「最後にお会いできます。神様自らの加護を持って償おうというわけです。なかなか、ないことですよ。」

 エリスは、自分の無能さを隠すように、大きな話で切り抜けようとしていた。


そんな時、「あいつらなに?」

 エリスは背筋をぴしっと伸ばし、

「わが麗しの大天使ミカエル様、何かわたくしめに御用でしょうか?」

「あなたじゃなくて、あいつらなんだけど。その御用ってのは。」

 と、ミカエルが目をやった方向をエリスが見ると、エリスは膝から崩れ落ちた。

「父ちゃんいくよ~」

「そんなへなちょこ、届いてないぞ~!」

「じっちゃんの、堅い雪玉を食らえ!」

「もう、おじいちゃん! それ反則! マジで痛いんだもん!。」

 霞で雪合戦を始めていた。

 ミカエルは、エリスに、「すぐやめさせろ!うるさい!」

 エリスは言葉たどたどしく、「はい。ミカエル様。」

 ミカエルは、のっしのしと歩いて去っていった。


「あの、みなさん。ひとりずつでも、神様に拝謁に行きませんか?」

 返事がない。

「あの、この霞用のシロップもありますが?」

 エリスちゃんの精一杯の笑顔で、ポーズも決めてみたのだが、

ドカン!

 大きな雪玉が、エリスの顔面をとらえた。

 顔から、霞片が零れ落ちる。

「ぬぬぬ、神力を……。」

 もう限界かと思われた時、エリスの方に手を置くものが、

「わかった。お前は、できる天使だ。」

 大天使ミカエル様の声だった。

「おい、そこの人間ども、ここは聖地だ、静かにしてもらおうか?」

 と、緩い竜巻で、家族が回る回る。

「目が覚めたら、神に逢ってくるがよい。そこに答えはある。」

 勇壮な言葉を残し去っていくミカエルに、心を熱くするエリスであった。

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