第16話  天界にご案内

 ワープゲートを抜けると、そこは神や天使、悪魔の暮らす天界であった。見渡せば、大天使ミカエルや、ガブリエル、遠くの方には、黒い集団が組み手をしているのが見える。天界とは、見た感じ文字通り雲の上のような世界だ。

 大天使を前に、エリスはきびきびと、天界の説明を始める。大御所や、大先輩の前で、しどろもどろ。家族も天使も参ってしまっていた。

「ご利益は、生から、死神様に引き渡す闇の領域を超えるとこまで、まあ、ほぼほぼ人生の全ては、神様や我々天使側、光のものが請け負っています。悪魔はあくまで、極悪人とのコミュニケーションの練習台として飼いならしてありますので、心配しないでくださいね。」

「しつもーん! 私たち、事故で死ぬのは何故なんですか? 平気じゃないのはどうしてなんですか~?」

 こともあろうに、事故の加害者当人の長女が言う。

「まあ、わたしたちも、悪魔とはあくまで、研修的な付き合いでして……。従ってくれてるとき以外は、、、わかりませんね。てへっ。」

 エリスは、茶目っ気でごまかそうとした。

「で、今回はなにをするんだい?」

 かあさんは、少しせっかちだ。エリスちゃんはもっと打ち解けた関係を求めていたのに。だから、精いっぱいの誠意を込めて、応対する。

「神のご加護を受けるため、7つ目の天までのピクニックとなっております。」

「なあんだ、悪魔退治じゃないんだ!」

「天界でも、時として戦争も起こります。しかし、我々は神のご加護を受けていますから。」

「あなたはいいけど、守られない神様はどう戦うの? 地球を救うの?」

「そこは、連携ということでして。」

「神様死んだら、あなたたちの責任になるのよ。ちょっと、のんきなんじゃないの?」母が声を荒げる。

 その裏で、祖母を一人にしないようにと、祖父が面倒を見ている。

「エリスも日々精進してますから。まずは、お茶でも振る舞いましょうか!」

「は~い。ほんとに大丈夫なの?」

「大丈夫ですよ。エリスも、女神さまの力を得たり、皆さん、仲間意識強いですから。あ、お茶、熱すぎませんか?」

 ま、天界なんて詰め所見たいものなんですけどね。

「じゃあ、気を取り直して、BBQでも始めようか!」

「おっ、お父様、ありがとうございます。では、天界の霞でも、まず頂きますか?これ、食べると神力が強くなるんですよ。」

「歯がない我々も食べられます。」

「でも、白一色じゃね~。空は青いけど。」

「何かご不満ですか?」

 エリスは、笑顔を崩さないように、しんどいながらも姉の愚痴に反論する。

「地上のグレーみたいなけがれた雲は、天界にはありませんのですよ。」

 エリスはにっこり笑って、続ける。

「まあ、ここでは、食事がどこでも取れることが分かったと思いますので、チャチャっと、道案内させていただきますね。まあ、一直線なのですが。」

「何の問題もなさそうね、むしゃ。」

「じゃな。ばあさん、暗黒はやめておくれよ。」

 祖父がジョークをかますと、ホワイトホールが祖母を闇に落とした。

「なんじゃ?」祖父は、怒り気味に驚いた。「天界で人が死ぬって何?、説明して」祖父が切れだす。

エリスはどぎまぎしながら、「ここは、天界でも聖域付近なので、暗黒はちょっと……。ということだと、思うのです、が。」半べそをかかされた。「まあ、記念写真も撮りましたし、一足先にと。」なだめようとエリスは粘る。

「なにが一足先じゃ、わしも帰る。暗黒を使えばいいのか?」

「やめてください!エリスの株が下がります!!」

「自分が第一か。」「神様の仕組みっておかしいね」造反組も出た。

「あの皆さん? 天界は、絶対安全なんですよ!」

「どの口が言う!」「そうだそうだ!」「解散しよう!まっすぐ行けば、帰れるみたいだし。」「あの、あの、エリスの株が・・・・・・。」

 予想もつかない事態が起こってしまった。



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