第11話 悪ノリデスマッチ

 呆然とする中、黒猫は地上の鬼が後ろに回ったことを知り、祖父に伝えるように、足元にかみついた。

「ええい、じっちゃんのセブンスヘブン!」

森が新緑に戻った。

「きちんと、やらないとダメだよ、父さん。変身抜けてるよ!」

「だって、変身だけは先にみんな、準備してたし。」

 祖父は、がっかり、しょぼ~んとしていた。地下の鬼も狙ってくる。

「マジカルステッキの本領発揮だ!ななちゃんのセブンスヘブン・マジカル~!」

 青空が広がり、陽光が温かく照らす。紫外線が少し柔らかく、大地に草が生えてきた。命に満ちた空間が、辺り一帯を包み込む。

「今日は俺のパーティーだ。魔法少女ななちゃんは永遠不滅、父さん、じいちゃん、力を貸して!トリプルブースト・スリーセブン!!」

「おおっ」

「新緑の大地に流れ込む、高き山頂より流る水よ、永遠の水田をもたらさん。」

「なんじゃ、そりゃ?」

 大地の神がいうには、地下の鬼は溺死し、地上の鬼は完全に帰農したという。

 その証拠に、地下の鬼は消え去り、地上の鬼は、ジャバジャバと泥と戯れだしたかと思うと、ポケットからスマホを出し、残りの四天王も呼び集め、植苗祭が始まった。えっさほっさと、敵味方なく、おいしいコメが取れるという一心で、皆が苗を水田に植え付ける。改良米らしく育ちも早い。


 闇の中で、

「あ、おばあちゃんの匂いがする。どのくらいいるんだろう? 魔王の仇の張本人が消えてどうなるのかなぁ。あんな鬼があと何匹いるのやら。ああ、何やら溶けていくわ~。おばあちゃん。暗黒を使ったの~。」

 いなかった祖母を気にかけていたせいか、復讐の鬼と化した魔王と会うことのなかった長女は闇の中で、

「あんなところだったら、もうちょっといればよかった。」

 と、祖母の後悔と融合し始めぐるぐると回転が始まった。私たち、こうして忘れられていくのね。

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