第12話 女神の本懐

 みんなで一緒に草むらに座って、御結びを食べていた。

「食べ物って、ホントありがたいわねぇ。」

「あ、いただきます。」

「あれ、誰この人? 知らない人が来たよ。鬼かな?」

「あ、一応この辺で魔王やってるものなんですが、ね。」

 と、おにぎりを握りつぶした。

「食事テロとは、たちの悪い。お前らを生贄にしようと思ってたのに。でも、許す。俺もこの土地大好きだもん。都会はよくない。いろいろよくない。復讐もやめた~。」

 と、手についた米粒を食べ、大地に手を広げ大の字になった魔王は、あれだけの業を重ね準備していたにもかかわらず、成仏した。

 あ、おらたちの姿も変わっていくべさ。鬼たちが、いつの間にか農民になっている。

「これって、クリアじゃね?」

 と、俺は勇者の証の刀を初めて抜いた。

 ポーズをとって、父に写真を撮ってもらう。

 すると、天から堕女神が降りてきた。

「えー、こほん。あの、覚えてる?私、女神のルイーザ。貴方たちの戦いは見事だったわ。こんな形で、平和をもたらして、魔王まで倒して、無血開城? すばらしい。(手をゆっくりなリズムで叩く)でも、これじゃあ、罰になってなくない? わたしは、魔王というヒエラルキーの最上部に上れって、針山に登れって言ってなかったっけ? いや、いいのよ。もうひとステージ、もっと怖いところから始めてもいいし、っていうか、次の冒険お願いしていいかな~。私の力で世直ししたようなもんだから~、出世の大パーティーに呼ばれちゃって。難度Sのクリアですもの。」

「き、貴様が魔王か!?」

 祖父の意見だ。正しい目をしている。しかし、今回は違った。

「これは、これは、うちのルイーザを成長させていただき誠にありがとうございます。彼女は、性格にちょっと難がありまして、正確には、堕天した女神、堕女神という身分からの復活チャンスでしたのですが、どうやら、御迷惑ばかりかけていたようで。お礼に、皆さん家族7人と猫ちゃんを融合してですね、新たな冒険の準備が整うまで、休んでいただこうかと」

 というと、全員闇落ちさせられた。

「お姉さま、さすが、堕女神様の最上級の堕天ぶりですわ。」

「さあ、素敵な殿方と楽しんでから、また、バカを遊ばせてあげましょう。」

 と、上空に上がっていく。出所祝いのパーティーみたいなものだ。「あ、堕女神ルイーザを発見しました。また、パーティー会場に紛れています。」(天界人事院)


 融合が開始されると、飽きれた祖母と、汚されたななちゃん(特におじいちゃん)の格好を見た長女は、ぐにゃ~ンといや~な空気が流れ、充実した変態男児たちの活躍の話と、おにぎりがおいしかったくらいの感想しかない母の気持ちが、とろーりと溶けていき、ブラックホール化が起こり、渦巻き状に7人の一番の思いから融合されていく。最後はまた、同じなのかなぁ? 


「あ、ごめんなさい。天使のエリスです。あのボックスカーの三世帯全員死亡事故の方ってここですか? わたし、ちょっと、事情聴取っていうか、どこまでの事故に巻き込まれた人まで入れるのかとか、ちょっと調べていまして、遅れて参ったわけですが・・・。難度Cってところでどうでしょう? え? 済んでおしまい?」


え? 冒険終ってないの? いや、そもそも、始まってもいないらしいし、終わってもいないらしい。融合炉は喜びで満ち溢れ、ブラックホールから、ホワイトホール、そして、ホワイトボールとなり、新たな天使の経験値となった。次は、天界からスタートしますよ! エリスでした。

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