第7話 これがファンタジーなのか?
点を突く剣のようにそびえたつ山々に囲まれ、灰色の針葉樹が茂る森。そこには、赤い川が流れ、大地は腐りきっていた。一家6人、魔王西村を倒すべく宿命づけられたはいいものの、相手の姿がわからない。ただ、何者かの笑い声だけがケタケタと、気味悪く響いていた。
「お姉ちゃん、西村って役者に突っ込んだの?」
「向こうもかなり飛ばしてたよ。わたしの方がつらいって絶対! そもそも、ボールが転がってくるから、誰か飛び出すかと思いきや、思いきやだよ。人命救ってるんだから、私の方が偉くない?フツー。不可抗力だった。そうだよ、謝ればいいじゃん、悪かった分はさ。話せばわかる。」
「お姉ちゃんがそういうなら、それで行こっ。みんな無事で、フォークダンスでも踊れば、ハッピーエンドに見えるよ。」
「それ、ま? ウケる」
「あ、何かいるぞ!」
「ハイエナじゃな。お母さん、ここでご飯にしよう。奴らはおこぼれがあれば襲ってまでは来まいて。」
「お義父さん、この環境でよく食欲がわきますね。」
と、テーブルに出されたのは、いつものBBQと違う、ドブのようなスープだ。どうやら召喚に失敗したらしい。
「まさか、この世界では、前の世界のようなイメージでは、召喚できないというのか?」
イメージが明らかに、別の法則で動いているようだ。
「どうする?父さん。」
「お前、やる気か?」
「この人数でなら、なんとかなるんじゃないかと思うんだ。」
「戦闘経験はないからなぁ。それに腹が減ってしまうと、うちらも危険だ。」
「よし、やってみるか!」
「ただ、物理攻撃じゃなきゃ無理だ。魔法の類は、弱らせてから試そう。」
男たちは、武器を手にする覚悟を決めた。
「待って!まだ、距離がある。私たちの遠隔攻撃がどの程度のものか試してみたい!」
「肝が据わっているなら、やって見せろ。ただ、前の世界と同じに行くかはわからないぞ!」
「はいっ。変身、マジカルななちゃんのセブンスヘブン。」
「成功したら、相手ははるか彼方に飛ばされちゃうの。」
「かわいそうだから、あの山の口みたいなところに放り込んでやろう。ていっ!」
にわかに空が轟音をなし黒い雲が集まりだした。そして、次の瞬間、光と槍のような雨が森に隠れた他の獣も巻き込んで、雷鳴とともに雨が大地に突き刺さる。
「これは、私が押さえきれなかった闇の力が解放されたというの?」
「姉ちゃん、そんなわけないじゃん。パルプンテだよ。」
「じゃあ、もう一発、同じの行くわよ。はいっ。変身、マジカルななちゃんのセブンズヘブン。」
今度は、大地の一部が重力反転をなし、その加速度から自己崩壊を起こし、さらにその岩石の石片は、重力反転により2倍の加速度で、獣たちを襲う!
「ほらぁ、パルプンテだろ。」
「違うよ、ななちゃんのがこっちの世界に来て変わっただけだもん。全体攻撃ではあったわけだし。」
「ななちゃんって、どんなだよ。」
俺にとっては、改造制服とさほど変わらない容姿より、なぜこんな全体攻撃なのかがどんななのだ。世界観はあっているのか。すこし、イラっときた。
「いろいろ、食べてみたけど、こりゃ無理だわ。いいもの食べてない。」
母は、強しである。味見に茂みに行ってたなんて。
「じゃあ、3度目の正直だかんね。お母さんもこっちに戻って。…じゃあ、いくよ。はいっ。変身、マジカルななちゃんのセブンズヘブン。」
地割れが起こったかと思うと、古代兵器風のレーザーガンが現れ森を焼き払った。
「もういい。ななちゃんはやめる。私が先頭を歩くわ。私が悪いんだから。」
運命のいたずらか長女の業か、長女は先頭を歩く。
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