第5話 王宮での出来事

「ふ~。やっと、着替え終わった」


 案外、この服着替えにくいな。

 今、俺は馬車で1人着替えている。俺だけ準備ができていなかったから、先に入って着替ているということだ。

 っと、着替えも終わったし、そろそろみんなを呼ばないとな。

 俺は馬車の扉に手を掛けてそのまま押し、外に向かって少し大きな声で言った。


「待たせて悪い。このまま向かうから、みんな馬車に入って!」


 俺がそう言うと、みんなは声を揃えて言った。


「「「「はーい!」」」」



 ★リカ★



(今の海斗カッコ良かったなあ……)


 やっぱり海斗には、高級そうな服が似合うんだよね。何か清楚系とか、紳士系って言うのかな?まあ、そんな感じのものがすごく似合う。

 あと顔もイケメンだし、海斗は普通だって言っていたけど、それは嘘。


 何で私が知っているのかと言うと、これは能力なんかではない。海斗には言ってないけど、私は最高神として色んな世界の神々の王として、沢山、素質のある人間を見てきた。主な例として、イエス・ヤマトタケル・エジソン・バッハ・豊臣秀吉など。その中でも、海斗。鈴峰海斗はズバ抜けていた。特に学問での才能やひらめき力は、まさに天才だった。

 テストでは必ずという程満点を取っていて(海外の有名大学の過去の入試テストなどを14歳で)、そしてその才能が認められ、海外で有名携帯会社ap*leの新商品の設計を担当したりした。

 そして、彼が凄いのはこれだけじゃない。その天才的な才能を持っていても、彼はどんどん成長し続けた。それが出来たのは何と言っても、努力し続ける精神力だ。それがあったからこそ彼は、時間さえあれば私を超える存在になると目を付けていたのだ。

 さて、ここまで説明してもまだ、海斗が普通だと言える人はいないと思う。


 ふ~~~~

 でもまさか、海斗があんな能力手にしているなんてね………

 会えただけでも驚いているのに、あんな【能力創造】とかいう能力を持っているなんて、もうあんなの最強に決まっているじゃん!

 海斗が生活していく中で、これから会う奴らと戦ったら海斗は余裕で勝てるだろうね――

 ――………


 まあ、今は目の前のことに向き合わなきゃだね。



 ★海斗★



「みんな乗ったな」


 そう言って、この馬車に乗ってい居る俺以外の5人を見た。

 全員いることを確認した俺は、能力を使う。


「【影分身かげぶんしん】!」


 俺自身の体の魔素の一部が切り離され、目の前に海斗の形となって具現化されていく。それを確認した俺は、続けてもう一つ能力を使った。


「【擬態ぎたい】!」


【擬態】を使った瞬間、目の前の分身体ぶんしんたいがまるで30代後半のおっさんのように変化していく。さらに、服装も庶民服になっていく。

 そして、何かを悟ったような顔をしたあと御者台へと移動して、そのまま馬を走らせた。


 今、俺が行ったのは、能力【影分身】と【擬態】を掛け合わせたものだ。

 まず、【影分身】というのは、自分の魔素を利用して自分の分身体を造り、その分身体と意識を共有することができる能力だ。そして、姿を変化させる【擬態】。これを組み合わせることによって、全くの別人の姿でありながら、意識を共有できる人間ができる。

 そして、今回分身体を生みだしたのは、御者ぎょしゃが欲しかったからだ。ヒューリのパーティーの中に馬車を引ける人がいれば良かったのだが、尋ねてみたところいないらしい。


 あと、ここでヒューリたちはどういった立場にするかだが、それは、傭兵ということにした。冒険者に傭兵の依頼をするのは別におかしいことでもないし、そうした方が何があっても対処出来るからな。

 っと、もうすぐで検問所に着きそうだ。


「いいか?作戦通り行くぞ」


 そう4人に向かって尋ねると、4人は顔を合わせて頷いた。


 馬車が門へと近づいていき、10秒もしない間に着いた。

 ここで、時間が短縮できてラッキーという感じになるはずだったんだが………


「貴族の方ですね?」

「身元確認のため、貴族の方本人の顔を確認させていただきます」


 そう言って憲兵は検問をするために、馬車を開ける。


「あなた様は――」

「――公爵様!よかった~」


 憲兵はほっとしたような声を出した。そして、すぐに真顔になった。


「王が呼ばれております。今すぐ王宮にお向かいください」


 えええええええ!?



 ―現在―



 そして、今に至る。

 何が起きてる?俺、何もしてないよな?

 っと、心の中ではこんな感じに戸惑っている。だが、海斗は切り替えが上手にできる男だった。


「何の御様ですか?ニール王」


 彼の名前は、ニール=フォン=ソルティア。この国の王だ。


「すまない。急に呼び出して」


「いえ。ですが、私を急ぎで呼ぶほどのことが起きたとなれば見過ごせませんね」


 なぜなら、俺は一応魔法と武術の天才という設定だ。確か、【精神支配せいしんしはい】をしたときに、そう伝えたはずだ。

 更に、この国は貴族社会で、貴族は実績や信頼などを基準に王族から爵位が与えられる。上から公爵こうしゃく侯爵こうしゃく伯爵はくしゃく子爵ししゃく男爵だんしゃくという順に与えられる権力や領地などの大きさが異なる。

 そして、俺はその一番上の公爵だ。その俺を、ちょっとしたことで呼び出すはずがない。つまり、公爵を呼び出す程のことが今起きているということだ。


「ああ、そうなんだよ。少し、厄介なことが起きてしまってね」


「厄介なこととは?」


 王の疲れっぷりに疑問を抱いた俺は、少しせかした口調で言う。


「……………誰かが魔王軍の四天王のうちの三体を倒したみたいで、魔王が怒り狂っているらしいんだ」


「………え?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

史上最強の能力を手にした俺は、頂点者になる。 中野 莉斗 @kaito_rito

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ