第4話 作戦準備

 作戦は実行できそうだけど、ヒューリたちにはどう説明を――って今更か。ヒューリたちには正体も言ったわけだし。でも、あまり油断していると、どこからか不意打ちを食らいそうだな。気を付けよう。まあ、俺もそこまで馬鹿じゃない。いや、俺は馬鹿じゃない。うん。

 そう自分に言い聞かせて、ヒューリたちに要件を話す。


「という感じで行こうと思うんだが、どうだ?」


 その話を聞いて、パシーとリリエラは少し顔を引きつっているが、何かヒューリだけはわくわくとした表情でこちらを見てきた。


「普通はこんな事出来ないし、ゴリ押しすぎると思うけど、案自体は良いと思うよ」


「現実的じゃないけど、私も賛成ね」


「海斗、君最高だよ!」

「最初は状況が呑み込めなかったけど、今となっては楽しくてたまらない!」

「あ、まだ質問に答えていなかったね。答えは賛成だよ。本当に君といるとたくさん良いものが見れそうだ」


「お、おう……」


 ヒューリがあまりにも積極的なので、少し引いてしまう。

 でも、ヒューリもパシーもリリエラも意味合いは違えども、この作戦に賛成してくれたようだ。3人の賛同も得たところでそろそろ始めるか。


「よし。じゃあ早速始めようか」

「やるぞ、リカ」


「了解」

「【物質創造ぶっしつそうぞう】」


 そう言うとリカは、すぐに能力を使用する。

 そして、あっという間に白い豪華な馬車が組みあがっていく。


「さすがだな、リカ」


 っと、リカばかり見てちゃダメだ。俺もそろそろ働かないとな。


「よし、俺もやるか!」


 そう言うと俺は目をつむり、最初にこの王国の地図をイメージする。そして、その地図の人がいる場所に常時発動の【気配感知けはいかんち】を利用して、マークをする。さらに、そのマークに自分に流れるを流し込んでいくと、途中、何かが繋がったような感覚におちいる。そのタイミングで、【精神支配スピリットコントロール】を使う。


「【精神支配】!」


 そうしたら、さっき繋げた人たちを俺の精神世界スピリットワールドへ招待する。



 ―海斗の精神世界―



 この世界は、例えるなら図書館だ。

 あ、もちろん俺の場合はっていうことだけど………

 俺が過ごした時間。つまり、1000。そして、その図書館の中央にソルティア王国の国民10万人が、まるでお化けのように半透明の状態で集まっていた。そこに、俺は大きな声で言った。


「俺はソルティア王国の公爵、スズミネ・カイトだ!俺は魔法と武術の天才として知られている!」


 それを聞いた国民は、あっちこっちで呟きだした。


「俺はソルティア王国の公爵、スズミネ・カイト………」


「魔法と武術の天才……」


「公爵……」


 どうやら、効果があったようだ。でも、これは【精神支配】と言うより、洗脳に近いな……………


「よし成功だ」

「さて、そろそろこの国民を返すか」


 帰し方は簡単だ。元の体とは俺の気と魔素で繋がっている。そこに、その人の精神を乗せてやるだけだ。そこの近くに運んでいくだけで、自ら戻っていくから2分程度で済む。



 ―二分後―



「よし、これで終わった!そろそろ戻るとしよう」

「【精神支配】、能力解除キャンセル


 能力を解除した俺は意識が遠のいていく。



 ―ソルティア王国 王都 東門前―



「――っ」


 ん?戻ってきたのか?何か後頭部辺りが柔らかく、気持ちいい……………

 ん!?柔らかい!?

 俺は慌てて目を開ける。

 視界がおっぱいで広がっている!って、リカ!?

 っと、ここでリカが俺が起きたことに気づき、話しかけてきた。


「お、気づいた?どうやら、成功したみたいだね」


「リカ?これは………」


 俺がそう言うと、リカは照れ臭そうに言った。


「ひ、膝枕だよ///……」


「そう、だよな///…」


 こんな感じでリカとイチャイチャしていると――

 ――って、イチャイチャしてねえし!ここ大事!

 そうやって心の中でノリツッコミしていると、パシーがいやらしい笑顔で絡んできた。


「さっきまで化け物じみた事していた人たちとは到底思えないねぇ」


「うるせぇ!」


 落ち着け俺。まずは冷静になって、今の状況を整理しろ。

 俺は頭を起こし、辺りを見渡した。

 そして、近くには豪華な馬車、白い馬、さらにリカをよく見ると、高級そうなドレス姿になっていた。


「リカの方も準備は終わったみたいだな」


「そうだね。あとはこれ」


 リカはそう言って、高級そうな貴族衣装を渡してきた。

 おお、本当にすごいな!最高神は伊達だてじゃないってことか……

 俺がこう言ったのには理由がある。それは、【物質創造】はその物質の構造、原子や分子単位まで理解していないといけない。だから、俺の中でもかなり使いにくい能力の部類に入る。それをあんな細かい装飾まで完璧に仕上げているし、触ってみたところ、肌触りが特に良い。俺も、あの馬車なら3分で作れるだろう。でも、この衣装の方は無理だ。2時間くらいかかってしまう……

 こんなものを造ってもらったんだ。礼を言わなきゃな。


「ありがとう、リカ」


「どういたしまして」

「あと、海斗。そろそろ行こ」


 忘れてはいないが、さすがに向かった方が良いか。

 海斗はリカとヒューリたち4人に視線を向ける。


「さてと、出発するか」

「作戦の開始だ!」


「「「「オー!」」」」


 俺が言うと、4人は揃って言った。

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