第2話 王都へ

「あと、勘違いしてほしくないが、俺は人間だがリカよりも、何もかも上だからな」


「「「「!?」」」」


 俺がそう言うと、ヒューリが苦笑いをしながら言ってくる。


「………ははっ、冗談はよしてくれよ」


「冗談じゃないぞ」


 俺はそう言って、リカの方を見る。それに気づいたリカは頷く。


「あはは、パーラダイス……」


 そう言ったのは、カートだった。カートはそのまま苦笑いをしながら、倒れていった。


「「「カート⁉」」」


 他の冒険者たちは、カートが倒れたことに驚き、すぐさま駆けつける。もちろん俺もゆっくりだが、近づいた。というより、忍び寄ったと言った方が良いだろう。


「大丈夫か?」


 俺がヒューリに尋ねると、ヒューリは一瞬、悩むそぶりを見せるが、すぐに答えてくれた。


「……これじゃあもう、魔物モンスターを狩れそうにない。僕たちは拠点としている宿があるから、そこに向かうよ」


「答えたくないなら良いけど、その宿はどこにあるんだ?」


「王都だけど、そんなの聞いてどうするんだい?」


 普通なら、ここから大体7時間ってところか。

 俺も王都には行ってみたかったし、俺らがちょうど行くついでっていうのを口実に【転移テレポート】で送っていくか。【思念テレパシー】を使ってリカにも合わせてもらうか。


〖リカ〗


〖何?海斗〗


〖俺らが王都に行くついでっていうのを口実に、ヒューリたちを【転移】で送っていこうと思うんだが、良いか?〗


〖了解。別に良いよ。あと、王都に行くなら、また【擬態】を使った方が良いよね〗


〖ああ。俺もそう思う〗

〖じゃあ、上手く合わせてくれよ〗


〖オッケー〗


【思念】を解く。

 この世界の人間とは、仲良くして損はない。


「【擬態】」


 そして、リカが【擬態】を唱え、再び人間の姿へと変化していく。


「ヒューリ。じゃあ僕たちが送っていくよ。俺らも丁度、行こうと思っていたからな」


「いや、悪いよ」


「……そうか。じゃあ、ヒューリたちはどれぐらいで着くんだ?」


「4時間だよ」


 って!?嘘だろ……

 ヒューリのパーティって本当にすごいな。3時間短縮って普通にすごいぞ。

 

 そう、【転移】を使えば、すぐに行ける。

 この世界の【転移】は空想上のもので、使える人間はいないとされている。ここで【転移】を使ったら、普通は何かを疑われる。

 でも、俺は正体をすべて話した。ヒューリたち次第で、納得してくれるだろう。

 さあどう出るか、ヒューリ、パシー、リリエラ。


「それなら、僕たちの方が早い。数秒で着くからな」


 …………………………………

 …………………………

 …………ゴクリ。


「そうか、じゃあお言葉に甘えさせてもらうよ。その方が良いだろう?パシー、リリエラ」


 ヒューリがそう尋ねると、2人は軽く頷いた。


「そうか、じゃあ早速行こうか」


 俺はそう言って目を閉じるが、それを中断した。

 ヒューリに話しかけられたのだ。


「待ってくれ。何で行くつもりだい?そういえば、そんな短時間で、王都に行く方法なんて無いはず――」


 と、話を止めた。どうやら、何かに気づいたらしい。

 そしてヒューリは、また口を開く。


「――まさか、【転移】を使うなんて言わないよね?」


「おお!ヒューリって本当にすごいな。空想上の能力を言うなんて。この世界には、魔法ぐらいしか無いはずなのに」

「でも、正解だ。俺は【転移】があるから、送っていくと言ったんだ」

「無くても同じだろうけど………」


「So fantasticファンタスティック!」


「「嘘よね(でしょ)……」」


 パシーとリリエラはもう、完全にドン引きしている。でも、何かヒューリだけ感動しているようにも見えるのは、気のせいだろうか。


「あはは……じゃあ、とりあえず近くに来てくれるか?」


【転移】は近くにいないと、能力発動者の効果を受けないというのが欠点だ。また籠って改良するか。

 そして能力を発動させるために、俺は目を閉じて集中する。

 コツは、今いる位置と目的の場所を線で繋ぐイメージ。これが一番いい方法ということは、時の監獄で検証済みだ。


「【転移】!」


 俺が能力を使用すると、足元に魔法陣が現れ、その周りが光に包まれていく。


「「「っ!」」」


 ヒューリ、パシー、リリエラは勿論初めてなので驚きを見せるが、失神しているカートは当たり前だが無反応だ。反応を見せたら逆に怖い。


 ここで【気配感知けはいかんち】、【魔眼まがん】、【インベントリー】、【剣の支配者ソードマスター】、【思念テレパシー】の能力の詳細について説明しよう。

 一つ目は【気配感知】。この能力は主に、五感を鋭くするものであり、そして、通常時の何百倍にも膨れ上がる。そして、生き物などのいる方角や距離を知ることができる能力。常時発動をすることもできる。

 二つ目は【魔眼】。この能力は千里眼と魔素の可視化を掛け合わせたもので、1万㎞まで先を見ることができ、大気中の魔素を見たり生き物に存在する魔力を見たりできる目の強化能力。目として常時発動することもできる。

 三つ目は【インベントリー】。この能力は収納空間を造り、そこに持ち物を出し入れすることができる能力。ホログラム化をして、使いやすくすることもできる。

 四つ目は【剣の支配者】。この能力は剣を自在に操ることができる能力。そして、この能力は剣術を極限まで極めないと、手に入れられない。

 五つ目は【思念】。この能力は相手の考えていることを聞いたり、相手に問いかけたりできる能力。相手も【思念】を持っている場合は、念話をすることもできる。


 っと、能力の説明はここまでにしておこう。理由は、王都に着くからだ。



 ―ソルティア王国 王都 東門前―



 徐々に光りが薄れていき、周りの景色が鮮明になっていく。

 一応、確かめるためにヒューリたちに尋ねる。


「ここで合ってるか?」


 すると、ヒューリ、パシー、リリエラは驚きながら、落ち着きのない様子で答えた。


「そうだね。で、これどうやってやったんだい?」


「嘘でしょ……」

「でも、何かワクワクしてきた!」


「あわわわわわ…」

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