第6.5話 短編 秋葉巡り

「俺が案内するからほら、行こう」


「うん、そうだね…」


 俺は今、久しぶりの秋葉に興奮している。控えめに言って最高。何か、リカが引いているような気がしたんだけど、気のせいか?

 こんなことを思いながらで、ぶらぶらと秋葉をまわっている。ただ、一つ悩んでいることがあった。


 案内するからとは言ったものの、どこから行こうか。

 ん~~~~。

 まあ、そこの辺りを踏まえて、最初は喫茶店にでも行こうかな。もう昼だし、丁度いいな。


「じゃあ、とりあえず喫茶店にでも行こうか」


「そうだね。もう、お腹空いてきたよ~。」


 と、リカが言ったのは【擬態】のせいだろう。

 今、リカが擬態しているのは、一応人間だ。お腹が空いたのは、さすがに嘘だと思うが、一応は味覚も人間とほとんど変わりないだろう。

 ここで補足しておくが、神には味覚がない。理由は、必要ないからだ。

 そして、さっきの発言は人間の料理は美味しいと分かってのことだろう。



 ―喫茶店―



 そんなこんなで着いた訳だが、


「うわっ」


 つい、声に出てしまった。

 だが、それも無理はないだろう。なぜならこの喫茶店、カップルばかりだからだ。

 それに、リカはかなりの美少女だからすごく目立つ。


『ねえ、あの子すごく可愛くない?』

『そうだな。芸能人じゃね』

『隣の人、彼氏かな?』


 案の定、すごく注目されている。

 と、戸惑っていると、店員さんが話しかけてきた。


「二名様ですか?」


「あ、はい」


 と言うと、店員さんが近づいてきて、俺に聞こえるくらいの声で言った。


「彼女さん可愛いですね」

「こんな可愛い子、他にいませんから逃げられないように気を付けてくださいね」


 と、いやらしい顔で見てきた。

 俺はその店員さんに、笑顔を作って見せた。しかし、心の中では違った。

(何なんだ、この人!てか、彼女じゃないし!付き合ってないし!)と、心の中でこの店員さんを罵っていた俺だが、あることに気づいた。

 何か、リカ静かじゃね?

 そう思った俺は、周りを見渡す。すると、リカは予想の斜め上をいったところにいた。

 すでに、席に座ってメニューを見ていた。


「マジかよ………」


 これは、大変になりそうだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る