第6話 元の世界


 ―地球 日本 静岡県 自宅の寝室―



「ほとんど何にも、覚えてないな」

「誰か、別の人の家って感じがする」


 俺がそう言うと、リカノールは呆れた顔でこちらを見てくる。


「もう、言うことさえめんどくさくなった?ひどくない?さすがに泣くよ?」


 まあ、もうこれで呆れられたのは3回目だしな………

 と、感情に浸っていたいところだが、それよりも今はこっち日本の方が気になるしな。久しぶりに見て回ろうかな。

 一応、リカノールも誘ってみるか。


「ねぇ、リカさん?」


 と、俺がやや茶化して言うと、彼女も合わせて言った。


「なぁに、海斗さん?」


「ちょっと、日本を観光しにいかないか?」


 今度は真面目な口調で言う。その答えに彼女は冗談を含めて返す。


「遠回しにデートに誘ってるのかな~?」


 で、でで、ででーと!?

 リカの奴………!……………いや?落ち着け………逆にこれを利用して、いつもの仕返しをしてやろう。


 すると、海斗は満面の笑みで返した。


「そうだけど、嫌だったかな?」


 海斗にそう言われて、気恥ずかしそうに言う。


「っ///いや………じゃないけど……」


 彼女の表情を見て、こっそりと握り拳をつくる海斗。


「それじゃあ行こうか」


 嬉しさが声に出ている海斗とは真逆に、リカノールは少し静かな声で答えた。


「うん…」


 これからどこにどうやって行くかだが、東京に【転移テレポート】で行こうと思う。

【転移】は時の監獄にいたときに、使えたら便利だと思って造った能力だ。【転移】の使い方は、行き先をイメージして能力名を言うだけだ。だが、これがすごく難しい。なぜなら、あやふやなイメージだと、そこのどこに行くかわからないからピンポイントに行くには、より高度な技術が必要となる。

 でも大丈夫!なんせ、1000兆年も時の監獄に籠っていたからな!持っている能力はすべて、支配マスターしてある。

 まあ、自慢することでもないか………

 このことを、誰に言っても軽蔑される気がする……………

 まあ説明はここまでにして、早速行くか。


「【転移テレポート】!」


 足元に魔法陣が現れ、そのまま魔法陣の外側が光に包まれた。


 ここで、さっきのリカの反応についてのことだが、大抵の人は分かるかもしれないが、一応、説明しておこう。

 それは、1000兆年の間に仲良くなったのもそうだけど、俺がリカを超えたことによって、距離がすごく縮まったのだ。

 それに、もう一つ理由がある。それは、能力【最高神さいこうしん】の影響だ。時の監獄で能力を極めるときに、【最高神】についても、もちろん調べた。そこで分かったのは、【最高神】は最高神を宿らせ、宿る際に『仮の人格』や『仮の姿』をそのマスターの好みに合わせて作成していき、接し方もAIのように、学習していくらしい。だから、リカと居て楽しいと思うのは当たり前なのだ。

 と、説明が終わったところで、ちょうど東京に着きそうだ。



 ―東京 秋葉原 12時15分 細路地―



「っと、着いたみたいだな」


「そうみたいだね………」


 何か、リカが若干落ち込んでいる気がする。

 さっきのこと根に持っているのか?まあ、この観光でリカを楽しませられれば良いか。


「リカ、【擬態ぎたい】を使って人に姿を変えてくれるか?」


「分かってる」


 俺が、こう言ったのには理由がある。

 ただ、その姿のまま行かせる訳にいかないってだけなんだけどね。

 あと、擬態についてなんだが、その能力の詳細は名前のとうり仮の姿に変わるということだ。使い方は、【転移テレポート】と同じだ。ていうか、能力は破綻度同じだ。ちなみに、一度見たことのあるものなら、簡単になんにでもなれるよ。


「【擬態】」


 彼女が言った瞬間、周りが煙に包まれた。

 煙がどんどん薄くなり、リカの姿が鮮明になっていく――

 煙が完全に無くなり、リカの姿があらわになった。そこにいたのは、超S級の美少女だった。


「いつ見ても可愛いな」


 と、自然に口から零れてしまった。

 やっちまった………言ってからあとが、すごく恥ずかしい。

 何でこんなこと言ったんだ!と、俺が心の中で嘆いていると、リカが口を開けた。

 ヤバい!罵られる!馬鹿にされて、一生いじられる!

 しかし、彼女から出た言葉は、この予想から大きく外れる。


「ありがと///………」


「!?」

「お、おう///」


 二人とも顔が真っ赤だ。

 気まずい………………………


 しかし、この空気は5分ほど続いた。


 俺はやっとの思いで声をかけた。


「じゃあ、行こうか…」


「うん………」


 二人はゆっくりと、人通りの多いところに出る。


「おお!」


「すごいね…」


 海斗は記憶が蘇ってきてテンションがどんどん上がり、リカノールはこの空気に圧倒され、ただ呆然と立っていた。


「ここが秋葉だ!」

「僕が案内するからほら、行こう!」


「うん、そうだね…」|

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