フリーの僧侶

体力が最近なくて鬱々としていて動けない。

買い物に行けないからコメに塩かけて食べているような生活なのだ。

タンパク質は牛乳と卵。

そんな生活をしているのでますます体力が消えていった。

「僧侶に頼もう」

ゲームだと体力回復は僧侶がやることになっている。美女のヒーラーでもいいんだが非モテ弱者男性ランキング444位の僕としてはまず知り合えない。いや知り合えたとしても申し込んだ時点で加害だと思われて通報されてしまうだろう。そんなの嫌だ。

 

僕はフリーの僧侶を探した。

体力がないのに無理やり出かけて日光を浴びたとたん体の水分が蒸発して湯気になって出て行った。僕は少ししなびた。でも気を取り直して公園に行くとベンチに僧侶らしい人がいたので話しかけてみた。

「もしもし、あなたはお坊様ですか」

「なにを言うか。わしはただの頭髪に見放された高齢男性だ」

「それは失礼しました」

そういうと僕はけつまづいて転んだ。いててて、頭にやった手のひらを見ると赤い。

回復魔法が余計必要になってしまった。

頭から血を流しながら、暇そうな僧侶を探してみたんだけど、ちびっこ僧侶ばかりだった。いや、ただの坊主頭の子供だった。でも子供とは言え外見は僧侶、一つ聞いてみるか。

「ぼうやぼうや、回復の呪文を唱えておくれ」

「こんちきもーあぱかやび」

僕はそれを聞いて少し元気になった。

よし、自力回復ができるように子の呪文をメモに書いておこう。

しかし残念なことにメモ帳がない。

だから地べたに書いた。呪文は何だったかな?

「彼女の名前はプタ子」

なんかたぶん違うような気がするがまあいいか。一仕事終えた満足感から僕は猛烈な睡魔に襲われて寝た。しばらくして高校時代の恩師と浜辺でキャッキャウフフしている夢を見ていたらパトカーのサイレンの音が聞こえて……。


「ここはどこだ」

「人騒がせにも程がある。事件ごっこは家でやれよ」

警察官にコンコンと説教をされて僕はすっかりしょげ返って、帰路に就いた。結局体力は回復させてもらえず。頭は血まみれだし、腹は減るしろくなことがない。

またコンビニでパックご飯と牛乳を買うとレジに進んだ。

「待ちかねたぞ。回復呪文を唱えようとさっきからずっとレジにいたのだ」

「あ、あなたはフリーのお坊様」

「いかにも。わしがフリーの僧侶である」

「では回復させていただけるんですね」

「おう、もちろんじゃ。ではいくぞ。瓜」

呪文は終わった。短っ!

そこで僕は回復したのもつかの間、お金を払ったのでダメージを食らい元に戻ってしまったのでした。


新しい一日が始まる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る