掘るしかない
シャベル片手に庭を掘ってみる。ところでまてよ、今手に持ってるのはシャベルなんだろうか。もしかしたらスコップかもしれない。そこで記述をスコップに変えてみた。手首のスナップを利かせて、土をすくいとる。でもまてよ、スコップってもしかすると足を使って穴を掘る道具だったかもしれないな。そこでスコップの肩の部分に足を乗せて体重を連続的に欠けるとスコップは土の中にめり込んでいった。
そもそもなんで穴を掘っているかと言うと、今は無職だから暇なのだ。何か労働をするふりでもしないとやってられない。でも才能は何もない。絵は少し描けるけど絵師になるほどでもないし、ためしになんちゃらというサイトで絵を一枚100円で売ってやろうと思ってたら、最低金額が2000円だったので全く売れなかった。やっぱり才能はない。そこで文章を売ろうと思ったが、文章もそこそこ書けるけど三文小説しかかけないので需要がない。嫁姑対決動画の台本なんてとても書けやしない。そもそも俺には嫁がいない。だから女性関係のあれやこれやがまったくわからない。女性というのは母親みたいに優しくて、妻のように貞節で、娼婦のようにややこしい事をしてくれるイメージしかない。あとは占いぐらいか。占いもプロが出せるような占断というのかまったくやれないでいる。素人丸出しの結果しか書けない。「男性は50年経てば爺さんになります。膝は曲がり腹が突き出てくるでしょう」だれがそんな予見を有難がるものか。まったく。
で、何の才能もない俺は、ただひたすら穴を掘る事にした。
「うっしゃしゃしゃー」
喜んでいるのではない。ミミズが出てきたのだ。俺が三度の飯よりも嫌いなミミズが。いや間違えた。三度の飯はだいたい好きだ。
「うひょひょひょひょー」
喜んでいるのではない。オケラが出てきたのだ。俺が電車の中で出くわした女子高生しかもギャル系の集団よりも苦手なオケラが。そりゃ外見がチー牛だからな。ほっといてくれ。
「うっくんかっくんしゃっくん」
喜んでいるのではない。十年前にお亡くなりになったらんちうの花子の遺骨が出てきた。金魚の墓なのに気負って深さ30センチの場所に埋めたのが災いして今日のこの日にご対面だ。っていってももう骨なのか土なのかわからなくなっているがな。
「松男いいかげんにおし。とっととハロワ行ってきなさい」
と御母堂様に言われて、ハロワに行くことにした。特技は穴掘りにでもしておくか。果たして穴掘りしかできない中年男性にいい仕事はあるのだろうか。
それは神様だけが知っている。そう経営者という名の神様が。
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