ズレてる人
皆がお雑煮を食べている時に俺はクリスマスケーキを目の前にしてシャンパンを開けて鳥の丸焼きにかぶりつこうとしている。
「メリークリスマス!」
クラッカーの乾いた音が響き渡る。恥ずかしいだろって? そりゃそうだよ。でも仕方ないんだ。なぜか俺の周りだけ時間がズレているんだ。
自分にとってはいつもの事なので、平気だが。こんなズレたやつの所にはサンタクロースだって来てくれやしない。世界でひとりぼっちのクリスマス。俺は自分用のクリスパスプレゼントを開ける。ジェンガの木材が箱からこぼれ落ちた。
おそらく成人式の頃に正月を祝う事になるだろう。知ってる。いつもズレていた。それで損ばかりしていた。すべての学校に入学したのはゴールデンウィークの頃だった。そして6月の何もない時期に一週間かってに休んで先生や上司から怒られる日々。でも仕方がない。わざとじゃないんだ。なぜか俺の周りだけ時間がズレて流れていく。
近所のお菓子屋さんが俺のためだけに特注のクリスマスケーキを作ってくれる。それを紅白歌合戦を見ながら食べる。皆は年末、俺だけクリスマス。
バレンタインデーの日は無風のまま過ぎてホワイトデーに一人だけチョコを貰う気分がお前らに分かるか。クラゲだらけの海で海水浴をする俺の痛さは誰にも伝わらない。運動会を10月の涼しいさなかにやるのは少し得かな。とにかく全部ズレる。夏休みも冬休みもズレる。
これは俺の祖父がよくわからない時計台みたいな塚を壊したせいだと言われている。本当だろうか。
ひな祭りの頃に豆をまき端午の節句にひなあられを食べる。近所のお菓子屋さんには無理を言って作ってもらう。お金もかかる。
うるう年も当然ズレるからカレンダーが意味がない。この俺の周りだけ起きる時間のズレはいつか科学が進歩したら解明される日が、嫌来ないな。俺だけのために科学者が頭を使うだろうか。
周囲からはただのわがままだって言われるのが悲しいぜ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます