12 優目線 1/2 



この現実世界が、いきなりゲームのような世界になったって言ったって、誰も信じれないだろう。

でも、事実だ。


おっさん、俺の父さんだが、いきなり朝起きてきたらそんなことを言っていた。

早くもボケたのか? なんて思った瞬間、「ステータスオープン」って言ってみろなんて言う。

実際に口にすると、目の前に半透明のパネルが見えるじゃないか!!

驚いた。


それからはおっさんに支援してもらいながら、レベルを上げて行った。

まるでゲームのようだった。

おっさんは、どうやらこの世界システムが変わった原因の一人の王様と知り合いになったようだ。

それで、ものすごくレベルが上がったと言う。

自分だけチートじゃねぇかよ。


その恩恵を俺も受けることができ、普通ではなかなか到達できないレベルになっているという。

おっさんはハイエルフの超絶美人と友達になってるようだが、どうも愛人くさい。

俺はその妹さん、レイアを嫁さんにもらってしまった。

勢いで告白もどき発言をしてみたところ、すんなりと一緒になってしまった。

これって、超ラッキーなんだろうと思う。


風吹に話したら刺されるよな。

まだ言えてない。


今は、住む場所も帝都に引っ越して、学校へ通っているのだが、これがまた面倒なことになっている。

俺のレベルが高すぎて、基礎が学べない。

レイアに相談したら、ハイエルフのお姉さんに聞いてみて、レベルを抑える腕輪をドワーフに作ってもらったらしい。

後で取りに行くことになっている。


また、ギルドで変な高校生だった人たちにも絡まれた。

でも、結構いい人たちみたいだ。

何でも帝都ダンジョンで俺tueee.をやろうとしてるようだ。

ダンジョン・・結構しんどいけどな。

顔を覚えているから、あっさりと死んでほしくない。

俺も学校の授業以外でダンジョンに潜ったりしている。

完全にソロで潜る。

前に危ないときがあった。

誰にも言えていない。

俺の職種はレーンジャーという職でハンターの上位種らしい。

おっさんの忍者のように隠蔽スキルがある。

それに何より、相手の急所が何となくわかる。

レベル差もないようだ。

ただ、いくらレベル差がないといっても、相手が高レベルだと与えるダメージが少ない。

それで調子に乗っていたら、危なかったわけだ。


さて、俺はレイアと一緒に暮らしている。

とてもいい子だ。

エルフだが、人と全然変わらない。

俺にはもったいないくらいだと本当に思う。

大事にしなきゃ。

おっさんに聞くと、どうやら転移してきたときに酷い扱いを地球人に受けたらしいが、俺と一緒になってくれたということは、地球人を許してくれたのだろうか。

とにかく、俺は無茶苦茶幸せだと思う。


ただ、もっともっと身体も心も強くなりたい。

おっさんを追い越してやりたい。

それが今の俺の目標だ。


さて、リビングへ行こう。

レイアが俺より先に起きていたようだ。


服を着て、リビングへ行く。

レイアが俺に気づき、

「優、おはよう」

先に挨拶してきた。

「おはよう」

俺も挨拶を返す。

レイアが近寄って来て、いつものようにキスしてくれる。

初めは照れくさかったが、慣れてしまえばどうってことはない。

握手みたいなものだ。


「優、卵焼きとスーパーエイトで買ってきたこのパンでいいんだっけ?」

レイアがそういうと、パンを焼いてくれていた。

「うん。 ありがとう」

俺はそう答え、飲み物をレイアと俺の分を入れた。

パンはフライパンにバターを塗って焼く。

バターのいい匂いがたまらない。

焼けたパンに卵焼きを乗せて、レイアと一緒にいただいた。

・・・・

・・

「「ごちそうさま」」

生活魔法でお皿をきれいにする。


時間は7時を少し過ぎている。


「優、学校へ行く前に、腕輪取って行くんでしょ?」

レイアが聞いてくる。

俺もうなずく。

「そ、じゃ一緒に取りにいきましょ!」

俺もうなずいて一緒に外へ出た。

腕輪はレイアのお姉さん、俺のお姉さんにもなるのだろうか?

フレイアさんのところにあるはずだ。

俺達は一緒にフレイアさんのカフェに行った。


カフェの入口を開けて、

「お姉ちゃん、おはよう!」

レイアが元気に挨拶していた。

フレイアさんが奥から出てきて、

「おはよう! 優君、取りに来たのね」

「はい」

俺が返事をすると、すぐに持ってきてくれた。

「まだ最終調整が終わっていないらしいんだけど・・今から一緒に行く?」

フレイアさんがそういうと、俺たちもうなずく。


フレイアさんに連れられて、ドワーフのおやじの店に来た。

まだ開店前だが、入り口は開いている。

フレイアさんがドアを開け、

「おはようおじさん、いる?」

カウンターのところからのっしのっしと歩いて来る、威圧感のあるおやじだ。

「おはよう、ハイエルフ・・」

ドワーフのおやじがそう言いながら、声をかけてくる。

「それで、誰がこんな腕輪を使うんだ?」

ドワーフのおやじが難しそうな顔をして言う。

俺は勇気をふり絞って一歩前へ出た。

「お、俺です」

この一言を言うだけで、こんなにドキドキするなんて・・俺もまだまだだな。

そんなことを思いながら、ガチガチに固まっていたと思う。


ドワーフのおやじが俺に近づいてきてジロッと見て言う。

「こんなひよっこのレベルを抑えてどうするんだ。 もっと伸び伸びやればいいだろうに・・」

それを聞きながら、フレイアさんが言った一言で、このおやじが変わった。

「おやじさん、優君はテツの息子よ」

この難しそうなおやじの顔がにっこりと微笑む。

「そうかい、テツさんの子供さんかい! 遠慮なく持って行ってくれ、お代は要らないよ」

ドワーフのおやじはそう言いながら、俺の腕に腕輪とつけてくれた。

俺驚きつつも、複雑な気持ちになっていた。

まだまだおっさんの壁は高いなと感じさせられる。


金色のきれいな腕輪だ。

「優君が、これを腕にはめるとレベルを抑えれるはずよ。 でも、本当にいいの? まぁ、取り外しは自由だしね」

フレイアさんはそう言いながら、ドワーフのおやじさんと話をしていた。


腕輪は俺の腕のところにはまると、シュッと腕輪の大きさが変わった。

!!

俺の腕にフィットする。

違和感はない。

「問題ないわね」

フレイアさんがそういうと、ドワーフのおやじもうなずく。

俺もお礼を言った。

「ありがとうございます・・えっと・・」

「ガルムだ」

ドワーフのおやじが言う。

「ありがとうございます、ガルムさん」

ドワーフのおやじが、ごつごつした大きな手で俺の頭を撫でてくれた。

不思議と安心感を感じる。


そしてフレイアさんにもお礼を言った。

「何言ってるのよ。 別にお礼なんていいわよ。 私の弟になるんだしね」

フレイアさんはそういうと、俺にウインクしてくる。

ギュン! と、俺の胸に刺さる。

美人だよなぁ。

「優、お姉ちゃんなんだからね!」

レイアが俺をジッと見て言う。

「うん、わかってるよ」

「ほんとに~・・でもまぁ、お姉ちゃんはテツさんに一途だからね」

レイアがそういうと、フレイアさんの顔が真っ赤になっていた。

「レ、レイア。 な、何言ってるのよ! テツは奥さんいるでしょ!!」

明らかに焦っているよな。

俺は笑いながら見ている。

「え~、お姉ちゃん、愛人でも2号さんでもいいじゃない!」

レイアって結構いい加減なことを言うよな。

俺の心の声です。


さて、腕輪ももらったことだし、学校へ行こうかな。

俺とレイアはドワーフのおやじの店を後にして学校へ向かう。

フレイアさんはカフェの準備があるとかで、帰っていった。


「優、腕輪は違和感はない?」

レイアが聞いてくる。

「うん。 ぴったりだよ。 これでレベルが20くらいになっているんだね。 やっと基本を学べるよ」

「うふふ・・優は変わっているわね。 強いのが嫌なんだから」

レイアが言う。

「いや、強いのは好きなんだ。 ただ、基本が学びたいんだ。 レベルに頼っていたらダメなんじゃないかと思う。 結局は自分の身体を動かして強くならなきゃいけないと思うんだ」

俺はそうつぶやくように言った。

「ふぅん・・やっぱり優はテツさんの息子ね。 テツさんもそんなことを言ってたような気がする」

レイアが言う。

「え? マジかよ~。 はぁ・・」

俺は少しショックだった。

ここでもおっさんが俺の前にいるじゃないか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る