7 帝都ギルドにて
◇◇
テツが帝都を出て、調査へ向かっているとき。
帝都ギルドのフロアにはアニム王国の人だけでなく、いろんな人たちも行き交うようになっていた。
その中でもどうやら日本人は、異世界人やその文化と親和性が高いらしい。
抵抗なく異世界の文明を受け入れている。
むしろ積極的に適応している感じがある。
ラノベなどの影響か?
「シン、ここが帝都って呼ばれてるところだよな」
男の子が話かけていた。
「ああ、そうだ。 俺たちのギルドで聞いてきたんだ。 間違いない」
シンと呼ばれる男の子が答える。
「シン君って、適応早いわね。 私なんてまだ変な感じだよぉ」
茶色い髪をした女の子が言う。
「マリも立派な魔法使いだよ」
シンが微笑みながら話している。
「そうかなぁ・・・ドラ〇エやF〇みたいにはいかないんだね」
「何言ってるんだよマリちゃん。 十分RPGの世界だよ。 魔法も使えるし剣術なんてイメージで強くなるんだよ。 俺なんてまだまだレベル18だけど、それでも考えられないくらいの身体能力だよ」
「ハカセ・・レベルは人前では言うなって・・・」
シンが注意をした。
「ああ、ごめんシン」
「ハカセは頭いい癖に、ちょっと抜けてるからな」
「おい、ヨシヒコ! それはないだろう・・・」
アハハ・・・。 学生達の笑い声がしていた。
シン、ヨシヒコ、マリ、ケン(はかせと呼ばれている)、ヨウコ、ユミの6人の高校生仲間だ。
シン:♂(レベル18):ロードファイター
ヨシヒコ:♂(レベル18):グラディエーター
マリ:♀(レベル18):魔術師
ケン:♂(はかせと呼ばれている)(レベル18):魔導士
ヨウコ:♀(レベル18):ヒーラー
ユミ:♀(レベル18):忍者
アニム王が帝都を作り、ギルドネットワークを確立しつつ小さな街が作られていく。
小さな街に人が集まり、街を拡大していく。
そうやって世界中を調査団が駆け巡っていた。
うまく定着できるところもあれば、できないところもある。
地球人とうまく行かないようなら、街だけを残し退去する感じでネットワークを作っている。
日本はほとんど
街が作られ、ダンジョンが出来上がると魔素も安定して街の外の魔物の脅威も低下していた。
それぞれの街には大体20階層くらいのダンジョンが出来上がっている。
街が大きくなってくると、ルナなどのダンジョンクリエーターに依頼して、30階層くらい調整したりしていた。
日本の人たち、特に若者はすぐに順応した。
みんなの共通認識はレベルアップだ。
そして、他の奴等よりも俺tueee.したい、だ。
男の子に
自分達の住んでいる街のダンジョンでレベルアップし、レベル15程度になると欲が出てくるようだ。
基本魔法は使えるし格闘、剣術なども漫画みたいな感じで行なえる。 特にイメージの豊かなものはなおさらだった。
今までの感覚では、本当にゲームの主人公になったような感じだろう。
また、街の外へ出ても高レベルの魔物との遭遇もなかなかない。
それに危険もある。 日本では聞かないが、人間狩りだ。
レベルの高い人間を狩る。
隣国などでは頻発しているなど、まことしやかにうわさが独り歩きしていた。
そのうちに帝都には60階層もあるダンジョンがあるという情報を得る。
上昇志向のある者なら誰でも帝都を目指す。
そういった中でシン達の仲間も帝都に来た次第だ。
誰よりも早くレベルアップしたい。
「シン。 この昇降装置を降りたら帝都ギルド・・総本山だよな」
「どうしたんだハカセ、ビビってるのか?」
「いや、これから俺たちの大冒険が始まるんだなって思うと、ワクワクするんだ」
ハカセことケンは未来ばかりを見る青年のようだ。
「・・ハカセ、なんか危ないわね・・」
マリが不安そうに見ていた。
シン達はギルドのフロアに降り、まずは掲示板を見ようとなった。
掲示板を見ながら思っていた。
これまでは、日本の社会システムで大人・・いや老人が社会ルールを作っていた。
だが、いきなり魔物が現れてたくさんの人が亡くなった。
俺達のいた学校でも、校長や副校長が魔物が迫っているのに、助けが来るまで学校で待機していようなんて言っていた。
俺はそんな指示に従っていては死ぬと思った。
だから俺の責任で帰りますと、念書まで書いて学校を後にした。
学校を出るときに同じように外へ出ようとしていたのが今の仲間だ。
みんな今の状況を自分の頭で判断した連中だ。
後でわかったことだが、学校は大破していた。
原型をとどめるどころか、校舎がどこに建っていたかもわからなかった。
俺達の判断は正しいと感じた。
だが、家に帰るにも危険がいっぱいだった。
とにかく仲間と、魔物の少ない方少ない方へと移動していていく。
少しの携帯食料と、よくないことだが店などから拝借しながら逃げていた。
どれくらいの時間が経過したのかわからない。
変な城壁が見えてくる。
不思議とその城壁の近くには魔物も現れない。
城壁の入口が見え、近づいていくと門にいた人と会話ができる。
聞いてみると、信じられないが異世界人が建てた街だという。
言葉も通じているので、何かの撮影かと思いつつも、俺たちを街へ入れてくれた。
街の中は天国だった。
人間の営みがあった。
俺達はそこで異世界人が本当に転移してきて、レベルや魔法がある世界になったということを実感。
それからはまさに水を得た魚だった。
援助をしてもらいつつも、すぐにみんなレベルを自分のものにして本当にRPGの世界の住人になってしまった。
普通に生きるのなら、問題ないように感じてきていた。
落ち着いてくると、自分の家族のことなどが心に引っかかるようになっていた。
でも、まだ街の外へ出るにはレベルが足りないし、情報もない。
レベルを上げないことにはどうしようもない。
仲間といろいろと話していると、どうやらこの街の本拠地である帝都というところがあるらしいとわかった。
そこへ行けば、この街にあるダンジョンなんか目じゃない60階層もあるダンジョンがあるという。
レベルも上がるしお金も手に入る。 いろんな情報もあるだろう。
そんなことを考えて、帝都に来ていた。
・・・・・・
・・・
「・・シン!!」
シンはハッとして声の方を見た。 ヨウコが声をかけていた。
「あ、あぁ・・少し考えごとをしていたんだ」
「そうなの? 疲れてるんじゃない、大丈夫?」
「うん、ありがとう。 問題ないよ」
シンはにっこりと微笑んで返事をした。
「シン、ここの掲示板はいろいろあるねぇ」
ヨシヒコが掲示板を見ながら言う。
「・・ああ、そうだな」
「ヨシヒコ、今日を忘れるなよ」
ハカセが言う。
「? 何をだ、ハカセ」
「ふふふ・・・。 俺たちが英雄パーティになる最初の日だからだ」
ケンが腰に手を当ててうなずきながら語っていた。
「ハカセ・・中二病は卒業してくれよ」
シンが笑いながら言う。
女の子たちもクスクスと笑っていた。
時間は15時前だ。
ケンは複雑な表情をしながら、顔を横に向けた瞬間、身体が固まってしまった。
その動きをみたシンがケンに声をかける。
「ハカセ、どうしたんだ?」
ケンはゆっくりと手を出して無言で指さした。
ケンの指先をみんなで見つめた。
!!!
「うわぁ、すげー美人!!」
「きれ~・・・」
・・・ゴックン。 ケンは生唾を飲み込んでいた。
その指先の美人の声が聞こえてくる。
「ねぇ優、お姉ちゃんのカフェに行こうよ」
レイアが優の服を引っ張りながら甘えていた。
「いや、俺はおっさんを追い越すんだ」
・・・・・
そんな会話が聞こえてきた。
「ハカセ・・あれって、人間だよな?」
ヨシヒコとシンが見つめていた。
女子たちも見とれている。
「私もあんな美人、初めて見た・・。 なんか光ってる感じがするよ」
「あの男の子、私たちと同じくらいか年下じゃない?」
みんながそれぞれ勝手なことを言っている。
「まぁ、帝都で冒険すれば、高ランク冒険者も夢じゃないし俺たちもハーレムだぜ」
ケンがうなずきながら言う。
「「・・ハカセ・・」」
女子たちには白い目で見られる。
「人は人、俺たちは俺たちだ。 さ、受付に行っていろいろ聞いてみよう」
シンがそういうとみんなで受付に向かって行こうとしていた。
「ケンちゃん!」
ヨウコの声が聞こえた。
ケンことハカセはレイアに近づいて行っていた。
「あのバカ!」
シンが急いでケンの後を追う。
レイアが近づいてくる男の子に気が付いた。
動きが妙な感じがする。
優も気づいて警戒していた。
二人ともが無言で、ゆっくりと近づいてきたケンを見た。
ケンが立ち止まり、レイアに向かって話始める。 明らかに挙動不審だ。
「す、す、すみません。 あなたたちはパーティなのでしょうか?」
レイアには質問の意図がわからない。
ただ、怪しい雰囲気だけはわかった。
すぐにケンの横にシンが駆け寄って来て、急いで謝っている。
「すみません。 こいつがいきなり・・申し訳ない」
そういって何度か頭を下げていた。
その仕草を見て、レイアがクスッと笑う。
シンもレイアの笑う顔を見て少しホッとしたようだ。
シンに続き、後の仲間もゾロゾロとやってきた。
「実は、こいつケンっていうんですが、あなたがとてもきれいなので驚いたようです」
シンがレイアに言葉をかけていた。
レイアと優が顔を合わせて笑っている。
「ありがとう」
レイアが微笑みながら言葉を返す。
ケンが震えている。
「あ、あ、あの、あなたたちはパーティ・・」
ヨシヒコがケンの口を塞ぐ。
「シン、ケンがおかしいぞ」
その様子を見ながらレイアと優が笑っている。
「私たちがパーティなのかっていう質問なのですね」
レイアがそう言った。
きれいな声だとマリは思う。
ケンが、うんうんと、力強く首を縦に振っている。
「私たちはパーティですよ」
レイアがそう言って、その続きを聞いた瞬間にケンが少し放心状態となった。
「パーティでなおかつ夫婦です」
シン達全員驚いていた。
女の子はともかく、男の子は俺達と同じくらいか、もしかしたら年下かもしれない。
「ふ、夫婦・・・」
ケンがわなわなと震えながら、自分の杖にガンガンと頭を打ち付け始めていた。
「お、おい! ハカセ!!」
「ちょっと、ケンちゃん!」
ヨシヒコが急いでケンを抑える。
額から出血していた。
ヨウコが治癒魔法をかける。
「ごめんなさいね。 変なところを見せてしまって・・」
マリが言う。
「いえいえ、それよりもその方大丈夫ですか?」
レイアが覗き込むようにケンを見た。
髪が少し邪魔になりそうなので、片手で髪をかきあげる。
!!!!
シン達のヨシヒコとユミ以外が気づいた。
耳が長い!
当然ケンも気づいている。
「・・耳が・・・」
「・・長いな・・」
「もしかして・・・」
ザワザワしていた。
レイアもその雰囲気に気づき、
「あ、私の耳ですか? 私エルフなんですよ」
そういってにっこりと満面の笑みを浮かべる。
「エ、エルフ・・・」
ケンが口をパクパクさせながら膝をつく。
少しすると、ガンガンと地面に頭を打ち付け始めていた。
「お、おい! ハカセ!!」
シンが急いでケンを取り押さえる。
「ごめんなさいね。 ほんっとにもう・・・」
マリはレイアたちに謝りつつも、ケンを見た。
またもヨウコが回復魔法をかけている。
・・・・
どうやら落ち着いてきたようだ。
シン達と優とレイアはソファに移動していた。
「僕たちは、今帝都に着いたところなんですよ。 そこでこのケンがあなたたちを見つけて・・・驚かせてしまったみたいです。 本当に申し訳ない」
シンとケンが頭を下げていた。
「いえいえ、何も謝るようなことでもありませんよ」
レイアが微笑みながら答える。
改めて見ても、透き通るようなきれいな人だと思う。
ケンでなくても、女からの目線でもそう感じる。
マリはそう思ってみていた。
「僕たち・・というか、地球人はみんなエルフなんて見るのは初めてじゃないのかな? それが驚きで・・・」
シンがチラチラとレイアを見ながら話している。
「そうなんですか? でも、エルフは個体数が少ないから、なかなか会えないかもしれませんね」
レイアが答えている。
シンがうなずきながら話す。
「なるほど、わかりました。 それよりも、あなた方は・・・いえ、これはうっかりしてました。 まだ、僕たちの名前を言ってませんでしたね。 私はシンといいます」
そうやって自己紹介をした。
ケン、ヨシヒコ、マリ、ヨウコ、ユミと紹介して、それぞれ高校生だったという。
自分達のところの街も、魔物によって破壊され何とか生きている街にたどり着き、魔法やレベルの存在を知り、今に至っているという。
優たちも自己紹介だけはした。
・・・・
・・・
「そうですか。 で、優君は失礼だけど、僕たちよりも若く見えるんだが・・・年齢を聞いてもいいかな?」
シンが気を使いながら聞いてきた。
それは優にもわかった。 どうやら悪い連中ではなさそうだと・・・。
「はい、ボクは14歳、もうすぐ15歳になりますが、中学生でした」
優がそう答えると、ケンがまた震えながら、
「ちゅ、ちゅ、中学生・・・・」
口を震わせながらつぶやいていた。
・・・またも頭をテーブルにガンガンと打ち付け始める。
「ハカセ!!」
シンがそういうと、ヨシヒコが取り押さえる。
「もう、ケンちゃんたら・・・」
「す、すまん。 つい取り乱してしまった」
ケンはみんなに謝っていた。
「ところで優君たちはこの帝都に住んでいるの?」
ヨウコが聞いてくる。
「はい」
「そうなんだ。 いいなぁ」
「あ、そうだ。 優君、聞きたいんだが、この帝都にダンジョンがあるでしょ? 確か60階層あるって聞いて来たんだけど」
シンが聞いてくる。
「はい、あります。 僕たちも今から行くところでした」
優がそう答えると、レイアが急いで言う。
「えぇ? 何言ってるのよ優。 お姉ちゃんのカフェに行ってスイーツ食べなきゃ」
レイアのお姉ちゃんの言葉にみんなの耳がピンッとなった。
「「「お姉さん?」」」
当然エルフのお姉さんだろう。
男たちの想像は膨れ上がっている。
目の前のエルフがこれだけ美人なんだ。
そのお姉さんと言えば、間違いない!!
ケンたちはうなずき合った。
ユミとヨウコが「スイーツ」の言葉に反応していた。
マリもうなずいている。
「もしレイアさんが嫌でなければ、俺たちをお姉さんのカフェに案内してもらってもいいですか?」
ケンが力強く聞いてきた。
レイアがチラっと優を見ると、
「レイア、案内してあげたら? 俺はダンジョンへ行って来るよ」
「う~ん・・・でもぉ・・」
レイアは人目もはばからずに甘えた声で、優の袖を引っ張ったりしていた。
ケンは目線をゆっくりとテーブルに落とす。
シンも例外ではなく、うらやましそうな目線を送った。
「レイア、無理はしないからさ。 明日学校でダンジョン行くけど、それじゃ意味ないから・・」
優はそういうと、レイアが上目遣いで優を見る。
「うん、わかった。 優、気を付けてね」
そういうと、優をクイッと引き寄せて頬にキスをした。
シンはやるなぁという感じで見ている。
ヨシヒコは無表情。 ヨウコとマリはにっこりとして見ている。
ユミは両手で目を伏せていた。
ケンはガンとそのまま頭をテーブルに押し付けたまま動かない。
優は気にすることもなく、みんなに挨拶してギルドを出て行った。
レイアがみんなの方を振り返り、
「それでは、ご案内します」
そういうと、席を立った。
レイアたちがギルドの外へ出ようとすると、受付のところがザワザワし出していた。
ギルドマスターが受付の奥から出てきて、何やら指示をしている。
レイアと視線が合った。
ギルマスは目を大きくして、レイアのところに駆け足で近寄って来た。
「レイア君か、ちょうど良かったよ。 フレイアのところへ行こうかとしていたところだ。 またダンジョンで負傷者が出たようだ。 お姉さんに救出依頼を出したい」
ギルマスが早口でレイアに告げていた。
レイアもうなずくと、シン達を見て申し訳さなそうな顔をする。
「ごめんなさい。 せっかくお姉ちゃんのカフェにご招待しようと思ったのに・・・」
そういうと、シンたちは首を横に振って、
「いえいえ、緊急事態なのはわかります。 どうぞ急いでください」
そう答えた。
「ありがとう」
レイアはそういうと、素早くギルドを出て行った。
ギルマスもレイアを見送って、シンたちに軽く会釈すると、受付へと帰っていった。
受付ではロディーネがいた。
「ギルドマスター・・・」
「あぁ、全く困ったものだよ。 最近はやたら多いな。 あまり口に出して言えないが、地球人のパーティが特に事故に合っている。 きちんとダンジョンに入る前に講習はしているはずなんだが・・・それでも救出できるだけまだマシだな・・」
ギルマスは頭を
シンたち、特にケンがまたも硬直していた。
「・・・び、美人だ」
ロディーネを見たのだろう。
「「「はぁ・・ハ・カ・セ!」」」
女子たちから白い目で見られていた。
◇◇
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