第23話 身悶えるバニーガールお嬢様
「お、おい見ろよ!」
「な、なんて刺激的な格好なんだ!?」
シェリルを加え、さっそく迷宮にて冒険者活動をするべく、通りを歩くクロノたち――正確に言えばアリアフィーネとシェリルに男たちの視線が注がれる。
昨日は忙しさのあまり、アリアフィーネは外套を買うことができなかった。
なので、今日も露出がこれでもかと多いビキニアーマーのままである。
だが、彼女は男たちの視線に慣れてきたようだ。
少し余裕のある笑みを浮かべると、周りに見せつけるかのように、クロノの腕に自分の腕を絡ませ、そのまま豊満なメロンバストを、むにゅん! と押し付ける。
「クソ! クソ! あんな美少女エルフ侍らせるなんて!」
「もげればいいのに!」
その光景を見た男たちは、嫉妬のあまり悲痛な叫びを上げている。
「で、でもよ……」
「ああ、ビキニアーマーのエルフちゃんもいいけど……」
「もう一人のエルフもたまらねーぜ!」
アリアフィーネに視線を注ぐ中、彼女とは別にシルバーブロンドのエルフ――シェリルに視線を注ぐ男たち。
「うぅ……なんだか恥ずかしいですわ……っ」
顔を真っ赤にして、大きな胸を隠すように腕を組むシェリル。
彼女の格好もなかなかに刺激的であった。
ツヤのある白の……胸元が大きく開いた、そしてハイレグカットの水着のような防具。
綺麗に伸びた両脚は網タイツに包まれており、お尻には丸くて白い玉のようなものが……。
そして極め付けに、頭の上にウサギの耳を模したカチューシャが乗っている。
そう、今シェリルが着ているのは、いわゆる〝バーニーガール〟と呼ばれる衣装である。
それも極上の美少女エルフー――綺麗な縦ロールのシルバーブロンドをした、お嬢様バニーガールである。
(むぅ……どうして《レプリコンバート》でできあがる防具は、このようなデザインばかりなのだろうか……)
シェリルの方をチラリと見ながら、クロノは思う。
どうやらシェリルのバニー衣装は、アリアフィーネのビキニアーマー同様に、特殊な繊維でできているようで、防御面に関しては文句なしだ。
しかし、毎回煽情的なデザインになる理由は不明である。
(おい、カレン。まさかお前が関係しているのではなかろうな?)
【…………】
まさかと思い、クロノが脳内で質問するも、カレンからの返事はなかった。
(あ、こいつ、多分やっておるな)
クロノはなんとなく察するのだが、それ以上の追求は無駄と判断するのだった。
◆
迷宮一層目――
「さて、シェリル、まずはどれほどの力があるのか、吾輩たちに見せてくれ」
「はいですの! クロノ様!」
先頭を歩きながら、クロノが指示を出すとシェリルは、やる気満々! といった感じで返事をする。
歩くこと少し――
さっそく『グギャッ!』という耳障りな声とともに、一体の異形が現れた。
声を聞いてもらえば分かるだろう。……そう、Eランクモンスターのゴブリンである。
どうやら雄だったようだ。
アリアフィーネとシェリルを見ると、目を血走らせて勢いよく駆けてくる。
彼女たちを自分の苗床にすることで頭がいっぱい……といった様子だ。
「ふん! ゴブリン風情がわたくしに近づこうなど、不愉快ですわ! 喰らいなさい……《ライトニングボール》ッ!」
シェリルの詠唱とともに、彼女のバニー衣装と装飾杖がわずかに白い光を帯びる。
そして次の瞬間には、装飾杖から大きな光球が飛び出した。
バチバチと紫電を走らせながら、ゴブリンに襲いかかる。
『グギャァァァァァ――ッッ!?』
光球に飲み込まれたゴブリンは、体をガクガクと震わせながら叫び声を上げ――そのまま地面に崩れ落ちた。
「え、ちょっ、は…………?」
呆然とした様子で声を漏らしたのはシェリルだ。
そしてそのまま、クロノから授けられた装飾杖、そして自分の着ているバニー衣装を交互に見つめながら――
「ど、どういうことですの……《ライトニングボール》は、敵を麻痺させる程度の威力しかないのに……。それに、このバニー衣装と杖が光ったかと思ったら、普段の倍……いえ、三倍以上の速度で魔法スキルが発動しましたわ……!」
――と、興奮した様子で言葉を紡ぐ。
「なるほど。どうやら、その杖だけでなく、バニー衣装も魔制具の役割を果たしているようですね」
シェリルの言葉を聞き、アリアフィーネはそのことに気づいた。
「そ、そのようですわね……。それにしても魔法スキルの威力をアップさせるなんて、まさか、これは〝アーティファクト〟ですの……?」
装飾杖を目を見開いて見つめるシェリル。
彼女の口にしたアーティファクトという単語だが……。
この世界にはそのように呼ばれる、特殊な鉱石でできた武具が存在する。
アーティファクトの作成は、〝アーティファクトスミス〟と呼ばれる、この世に数人しかいない、特殊な鍛冶スキルを持った者たちしかできない。
そしてそのアーティファクトの中には、スキルの威力を増加させる、という効果を持つ武具が存在する。
クロノに授けられた装飾杖は、アーティファクトに等しい効果を持つ武具になる……というわけだ。
「シェリル、何度も言うが、コレを吾輩が創り出したというのは、くれぐれも他言無用で頼むぞ?」
「も、もちろんですの! クロノ様!」
クロノに返事をしながら、大事そう装飾杖を胸に抱えるシェリル。
「ふふっ、よかったですね、シェリルさん。……でも、ご主人様に、一番最初に武具を創ってもらったのは、わたしですっ♡」
そう言いながら、アリアフィーネはクロノを熱い抱擁で包み込む。
アリアフィーネの柔らかな感触、そして甘い匂いに、クロノは思わず「ふぁ……」と、蕩けた声を漏らす。
「や、やんっ! わ、わたくしの前でイチャイチャするのは、ダメですの! んっ! んっ……っ♡」
甘えた表情を見せるクロノ、そして挑発的なアリアフィーネの視線に、バニーガールお嬢様は恍惚とした表情で身悶えるのだった……。
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