第21話 別れ
沢山話しして、何気ない日常がすぎた。音楽が次から次へと溢れてきて沢山曲ができてピアノを弾いた。
彼女は最初に起きた日から少しずつピラティスを始め、今では朝ごはん前に軽いランニングをする。
いつどこにいても彼女は努力を惜しまない。
夕方、海岸を2人で毎日歩いた。ふと彼女が、
「ここにいると普通の恋人同士みたいね。」
「じゃ普通恋人同士みたいに波打際ではしゃいでみる?」
「そうね」
って言い終わるか否か、彼女は靴を脱いで走っていく。
追いかけて、彼女の腕をつかまえる。
「いつも、僕が追いかける側だな。でも、はなさないよ。もう、逃げるの諦めたら。」
「幸せすぎて不安になるのよ。」
「君がおもっているより君のことが好きだけど。自信もったら。」
彼女は、僕の目をまっすぐみた。
「でも、もうかえらなければいけません。」
「そうだね。まるであなたはシンデレラだね。
もう0時がくるみたいだ。」
「そうですね。
でも、それは貴方も不可侵のユウに戻らないといけないから一緒です。
貴方も私もシンデレラみたい。」
彼女の手をとって向き合った。彼女のおでこと自分のおでこをくっつけた。彼女のブラウンの大きな瞳の中には僕だけが写っている。
「でも、忘れないで欲しい。本当の僕は目の前にいる貴方のことが好きな1人の男だ。君のことが好きです。」
「どちらの貴方であっても私は貴方が好きですよ。」
と見つめあって笑った。
その夜、初めて一緒にベッドで眠った。
朝起きたら腕の中に彼女はいなかった。
急いで探そうと起きてリビングへ、彼女は荷物を整理し終えて、朝ごはんの準備をしていた。
「おはよう。」
と声をかけて、朝ご飯を準備している彼女を後ろから抱きすくめた。彼女の右肩に顔をうずめた。
「目玉焼き焼いてます。あぶない。やけどしますよ。」
「いなくなったかと思った。」
朝ごはん食べる習慣は彼女と過ごすようになってからできた。
彼女から今日夜の便で帰ることを聞いた。
ちょうど僕の休みも今日まで。
彼女は黙々とシーツや毛布を洗濯し、布団は外に干し、台所は綺麗に磨き上げられた。
すべてがおわり、片付けが完了するころ、夕方になろうとしていた。
空港までおくっていく。
「空港のロータリーで降ろしてください。」
「荷物もあるし、おくるよ」
「離れ難くなるからそこでいいです。」
と少し無言になる。
信号が赤になって、車のギアをすかさずPに入れる。彼女に軽くキスする。
「運転に集中して下さい。」
と言いつつ真っ赤に照れる彼女は可愛い。離れがたいのは僕の方だ。
あっという間に空港に着き、彼女を降ろした。
彼女は車が見えなくなるまで見送ってくれる。
バックミラーでしばらく見ていた。
見えなくなった瞬間、車を引き返した。
まだ一緒にいたい。
車はパーキングに停めた。走って、出国ゲートにむかう。彼女の後姿を見つけて、声かける寸前に見慣れた人がさきに声掛けた。
ソウだった。
急いで彼女の腕をとった。自分の背中に彼女を隠す。彼女はいるはずがない僕にびっくりしている。
ソウが
「ここでは話できないから、ラウンジで」
「彼女は関係ない。さきに飛行機へ出国準備に。」
「大丈夫。ラウンジですべて手続きができるようにしてある。」
彼女は難しく早いS国が理解できないから心配そうにみている。彼女に心配しないように微笑んだ。
「彼女が飛行機に乗るまで話は待って欲しい。
彼女は悪くない。僕が無理やり連れ回したんだ。
せめるなら僕をせめればいいだろ。
ソウとこれ以上喧嘩したいわけじゃない。」
「わかった。」
ラウンジから直接出国することは有名な彼女のためにソウがよかれと思ってしてくれたことだった。
彼女に説明したら安心した顔になり、ソウに向かってお礼の言葉と頭を下げて感謝してくれた。
飛行機に向かっていく彼女を今度は自分が見えなくなるまで見送った。
帰りはソウを車に乗せて帰った。
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