第20話 すれ違い②

次の日は、父が病院診察日。

送り迎えする予定だったから、つらいけど、またこの病院にきた。

今日は来たくなかった。もう彼女には会えない。


売店に父のミネラルウォーターを買いにきたら、仲良くなった小児科病棟の看護師さんとばったり会った。

「今日はクロキさんに会いに?」

「いや。父の診察の付き添いです。」

「昨日も貴方の友達?がクロキさんのお見舞いに。そのあと、まだ調子悪いのに急に帰国することにしたんだよね。」

「え。それってもしかして。」

不可侵のメンバーの写真をみせた。

ソウの写真を指差した。

「まだ、彼女調子悪い?」

「そうなのよ。昨日の朝目覚めたばかりで本当は1週間滞在するはずだったのを早めたの。さっきタクシーに乗って。」

こんなことになるなんて、ソウが⁈信じられない。

すぐソウに公衆電話から電話した。

かからない。留守電になった。


父に用事ができたことをつたえて、空港に向かった。空港で座っている彼女をみつけた。

「どうしてそんな無理してまで。」

ビックリしてこっちをみる。顔色が悪い。

「とりあえず行こう。飛行機に乗れる体ではないだろう。」

荷物を持って車に乗せた。助手席を少し倒して彼女を座らせた。

車を少し走らせたら、彼女は眠ってしまった。


自分の家に連れていこうかと思ったが、やめた。

病院はソウが知っている。連れて行けない。

誰にも言ってないとこが一ヶ所ある。

そこにしようと思って車を走らせた。

途中食料や飲み物を買い込んだ。

クルマから眠ったままの彼女を運んで寝室へ

しばらくして目が覚めた彼女は見知らぬ場所だから、あたりを見渡している。

「ここは?」

「僕の家?みたいなとこ」

「え!今、でます。迷惑かけてすみません。」

「そんな顔色わるし、体調よくなるまでいて。」

「それはできません。」

「ソウに何言われたんだ。

今でていくなら、不可侵なんてやめる。

だから、このままお願いだから、体調よくなるまでいて。

そんな君はみたくない。」

「わかりました。ありがとう」

しばらくしたら、規則正しい寝息がきこえた。

小さく丸くまって寝ている姿をしばらくぼぉっとみていた。

真っ白のシーツの上にいる彼女を組み敷いて、優しく起こさないように彼女の頬にキスをした。

腕の中におさめておける幸せをかみしめた。

そのまま彼女を見つめていたら、初めてバラードができた。彼女といると曲と詞が一緒にできる

忘れないようにレコーダーにとっておく。

「おやすみ。」


リビングのソファーで今日は寝ることにした。


彼女はしばらく寝たり起きたりを繰り返した。

ちょっと目がさめたら、ミネラルウォーターを飲む。またすぐ寝るを繰り返した。

2日たった朝、キッチンで音がして目が覚めた。

「起こしてしまったようです。」

アイランドキッチンの上には朝食がならんでいた。

目玉焼き、ウインナー、パン、牛乳。

彼女に食べさせようと冷蔵庫に入れておいたものが調理されていた。 

「いただきます。」

2人で並んで座って食べた。

「美味しい。朝ごはん久々にたべた。」

「そうなんですか?仕事時間に不規則だから?」

「自分1人だと作ってまで食べるの面倒だしね。食べることが疎かになってしまう。」

「ここは?どこですか?別荘?」

「ううん、ここは僕の母方の祖母の家だったとこ。

誰にも言ってない。

綺麗にリホームしたんだ。周りに家ないし、ピアノひいたり、海みたり」

「家の後ろに海岸があるなんて、プライベートビーチみたい。」


それから2人で朝ごはんの片付けした。

リビングにはソファーとアップライトピアノ。

母親が小さい時にこの家で使用していたアップライトピアノを調律しておいてある。

彼女は1日ソファーで過ごす。

彼女は僕がピアノで作曲しているのをみたり、聞きながらうたた寝したり、お互いそれぞれ本読んだり、まったり過ごした。

朝ごはんだけでなく、お昼ご飯や夕飯も彼女は手料理を作ってくれた。

それから2、3日したら夕飯前に散歩にいけるくらい彼女が元気になった。









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