第5章 絆

ローブパースの絶望

 嫌だ……嫌だ……死にたくない……


 肩口から流れ出る血が腕を伝う生温い感触に、焦燥が全身を駆け巡る。


 血って、こんなに流れるものなのか……


 必死に動かしていた足もぴたりと止まり、ローブパースはその場に座り込んでしまう。


 痛い、熱い、だるい……寒い……


 嫌だ……なんでだよ……

 感覚がなくなってきてる……


 焼けるように熱かった左肩の痛みすら薄れてきていた。

 それがただただ怖かった。にじり寄る死の感覚が、薄れ行く意識が、恐怖を刻みつける。


 背後には、凶悪な巨体が揺れる。その鋭利な爪には、先刻切り裂いたローブパースの血が滴る。

 振り返ると霞み始めた視界に、ゆっくりと近づいてくる真っ黒な塊が映り込んだ。


 絶望が瞼に重くのしかかる。






 瞳を閉じる直前、誰かの声が聞こえた気がした――

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