学舎の人気者[前編](1)

 魔女の気まぐれにより生き長らえたオーバーベル=クラウディアはその家名に相応しく立派に成長していた。


 クラウディア家は元々、国が抱えるほどの名家だった。それは先代が築き上げた功績によるものであった。

 かつてこの国にはルカニックの三騎士と呼ばれる3人がいた。その一角をクラウディア家が担っていたのだ。剣術に秀でた彼らは、王に忠誠を誓い、多くの伝説をこの国に残した。国は栄え、国土は着実に広がっていった。しかし、そんな状況もすぐに幕引きを迎える。ここで剣に取って代わる技術が発達したのだ。

 魔法である。


 現在この国には三騎士のように特別な扱いを受ける騎士はいない。代わりに、王国は三賢者として、腕の立つ魔法使いを抱えていた。その一人がパスカルブランチ=トワールである――。



 月日は流れ、オーバーベルは、チークムーンと同じ学校に進学していた。この学校には、3つの科が存在する。国内外から優秀な生徒が集うこの学校に学術的なことを学ぶ科は存在しない。戦闘技術向上のための学校であり、魔法科、剣術科、体術科の3つが存在する。生徒の割合は 5 : 3 : 1 といった具合だ。魔法科が最も人気であり、体術を学ぼうとする人はほとんどいない。結果としてこの学校は魔法学校として名を広めていた。それは優秀な魔法使いがこの学校からたくさん出ているからでもある。

 そんな中、オーバーベルは名家としての復権のため、自身の剣術を磨くべくこの学校に入学した。

 けして誰かと馴れ合うためではない。明確な目的を持つ彼女には、その血が証明するように才能があり、努力も惜しむことはなかった。だからこそ、向上心の欠片も持たない周りの人間を侮蔑していた。

 それは、他コースで主席の座につく2人にも同じことだ。クラスメイトと馴れ合う時間は無駄でしかない。そんなことがなぜわからないんだと、友人と談笑する2人を見るたびに苛立っていた。


 オーバーベルは才能があるというのにクラスメイトと馴れ合う2人を、自分とは正反対で人気者な2人を、認めることがどうしてもできなかったのである。

 それが、羨望や嫉妬であることを気付けずにいた。プライドの高いオーバーベルは、まだ理解することが出来なかったのである。仲間の大切さや、互いに高め合い築く絆の意味と強さを。


[つづく]


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