初冬の朝

@LCY_Kuro

初冬の朝

そろそろ年末のムードがしてくる頃、丁度季節の間のような時期。カーテンの隙間から見える曇った窓越しからでもコトコトと雨音が聞こえる。だいぶ前には目覚めていたような気がするけど、ずっと毛布に包まったままでいる。目を閉じてゆっくりと呼吸をすれば体中の力が抜けて、ほら手足を動かそうとしてももう動かない。糸を切られた操り人形のように意思を失った手足は重さだけを感じるようになる。別に金縛りって訳じゃないんだけど、何ていうか瞑想みたいなものなのかもしれない。意識がだんだん目と鼻の間あたりに集まってきて、とても落ち着いた気分になる。こうなってくると色んな思考が風が吹くように聞こえてくる。

「こんな状況すぐに抜け出せる、そら手を動かせ!体に力を入れて起き上がるのだ!」

でも体は動かない。

「んー、これは瞑想状態だ。いや、瞑想じゃなくて催眠?催眠って一人でできるのかな。なんだか迷走してるな。あーオヤジギャグだめだこりゃ。」

「お腹が空いたら起きればいいや。眠くないけど、寒いし布団から出たくないし。別に起きてすることもないし。」

目まぐるしく思考は喋り続ける。でもふとした時に思考が黙るときがある。

「お、黙った?」

でも、意識を向ければすぐに喋りだしてしまう。それに、ちょっと前に考えてたことがザルですくった水のようにどんどん抜けていく。モグラ叩きのようにひっきりなしにヒョコヒョコと飛び出してくるような感覚だ。

「モグラ痛くないのかな。」

そんなことを半分モゴモゴしながら口に出してしまった。誰もいないけど少し恥ずかしくなって、左腕を瞼の上に乗せる。部屋の冷たい空気が左腕を襲い、私に左腕を知覚させた。

「あれ?動いた。」

またモゴモゴと口に出した。ちゃんと喋ろうとした、と思ってたんだけどな。そんな気がしてただけで、寝ぼけてるのかな。これ傍から見たら寝言なんだろうな。ここで寝たら本当に寝言になっちゃうよね。

「起きてるよ、私…起きてる。」

よし、寒いからこそ一気に毛布を退けるんだ。そのまま内側のヌクヌクを外側に出して戻れないようにするぞ。よし、よし。…あと1分だけ。



そうして私は二度寝ならぬ、1.5度寝へと突入するのです。

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