Step1-2

 私は、大人しく自室に戻った。


「はぁ~」


 上本くんのお陰で、ペアダンも決まったし、助かった~!


 全く話したこと無い人に誘われるのが一番恐怖だったから。


 まぁ、無いとは思ってたけど……。


 上本くんは、どうして私を誘ってくれたのだろう?


 う~ん? さっぱり心辺りが無い。


 去年も、同じクラスだったけど、別に接点無かったし……。


 あっ! あった。

 調理実習の班が一緒だった。

 でも、それだけだけどなぁ~。

 他に関わりあったっけ?


 ピロン


 再び、軽やかな音を立てた、スマホ。

 メッセージの受信を示している。

 誰だ? 不審に思い確認すると、またもや上本くん。


 すぐに開くと既読がつくから、少し間を置いて確認する。



『やったー! ありがとう!! 僕もダンス下手だから、一緒に頑張ろー』



 なんと言うことでしょう~。

 私は、どう返信するべきなのでしょうか。

 『やったー』って何? 怖いっ!


 私の足は再びカナの部屋に向いた。



 カナは、さっきとは違う少女漫画を読んでいた。目をキラキラと輝かせ、漫画を注視ちゅうししている。


「カナ~。またメッセージきたのだけど……」


 なんだか申し訳ないな、と思っていると、カナはくるりと、椅子をこちらに回転させた。そして、面倒くさそうにスマホを奪い取った。荒いなぁ~……。


 しかし、スマホの画面を見ると、再び目に輝きが戻った。


「すごいね、優しい! この人の名前は?」


「上本くん……去年、同じクラスだった……」


「へぇ~。優しい人だね~。お姉ちゃんには、もったいない!」


 カナの目が完全に恋する乙女の目になっている。やばい。これは、カナが好きなシチュエーションではないか……。


「お姉ちゃん、これは上本くんをゲットしたきゃ!」


「ゲットって、ポケットに入るモンスターじゃないんだから……」


 そう嘆いてみせるが、もう、カナの耳に私の声は届かない。


 私のスマホにポチポチと文字を入力している。



『こちらこそ、ありがとっ! 一緒に頑張ろうね! 上本くんは優しいねっ☆』



「何を勝手に打ってんだ!」


 メッセージを送信される前にスマホを取り上げた。こんな文章を送信されたら、恥ずかしすぎて学校に行けない……。

 カナは「えぇー。おもしろく無いっ!」と叫んでいる。


 カナが打ち込んだメッセージを消し去ると、私らしいメッセージを打ち込んだ。



『お上手ですね。こちらこそ、ありがとうございます』



 中流家庭のご婦人感でたかな?

 堅い言葉を使うことで、自分の芯の部分を隠す。

 絶対に知られてはいけない。

 私のカッコ悪いとこ。世間しらずなこと。

 嫌われたくないから。

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