Step1-3

 物語の中では選ばれるのには理由がある。

 だから、私は何事にも理由を欲しがった。


 県内高校生小説部門第3位。


 それを受賞した時もそうだった。

 手放しで喜べなかった。

 どうして? なぜ私?


 選ばれることの嬉しさよりも、困惑を感じる。自分に自信が無いから。きっと、裏がある、そう思ってしまう。

 そんな性格のせいで、人の優しさや情けを真っ直ぐに受け取れない。損な性格だと思う。分かってるけど、直せない。治らない。


 理由を欲しがる。

 勘繰りをする。

 素直に信じられない。


 でも、選ばれる理由なんて、基本的に無いと思う。

 ただ、その時に一番都合の良い相手を選ぶだけ。そこに何の意味も理由もない。



「そーかな?」


 私の数少ない友人である小野ゆうが首を傾げて答えた。


「その場合もあると思うけど、単純にその人が良いと思って選ぶときもあるよ。例えば、結婚とか」


「それこそ、その時、都合の良い相手を選ぶじゃない。だから、晩年離婚とかがあるのよ」


 夕に駅でに出会った、ある時そう愚痴を溢してみたことがあった。

 彼女は私と違って明るく快活であるため、何かしらの自分と異なる考えを聞けるかと思ったからだ。


「まぁ、そういうケースもあるけど、美月が受賞したのは単純に作品が良かったからだと思うよ」


「そっ、そんな訳ないわっ。だって、私よりも面白い作品があったもの」


 そうなのだ。

 私と同じ高校の文芸部員の作品を読んでも、私よりも先輩の方が素敵な作品を書いている。

 私のは只の妄想の塊だ。

 全然、高校生っぽくないし、児童書みたいなのだもの。


「でも、審査した人は美月を選んだ。それなら美月の作品はそんなに卑下するようなものじゃないってことだよ。実際、私は美月の作品大好きだし」


「それは夕が贔屓目ひいきめに見てくれるからだよ」


「そんなことない。美月のが1番、読みやすい」


 夕は「これは譲れない」と、大きく首を振った。

 友人がここまで肯定してくれているのに、これ以上駄々をこねるのは申し訳ない。

 だから、心に少しモヤッとした感情を抱いたまま、話をそらした。


「ありがとう……。そっ、そう言えば、明日の小テスト、勉強した?」


「モチロン! 勉強してない!」


「してないのかい! 今日、帰ったらしなよ」


 夕は私が無理矢理、話題を変えても気にせずに話を合わせてくれる。

 こういう優しさに救われているんだ。

 だから、夕には嫌われたくない。大切に思っているから。

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