Step4-4

 文化祭2日目。


 午前中に、夕の所属している美術部の展示を見に行った。

 生憎、夕は不在だったため、作品のみ鑑賞してその場を去った。恐らく、生徒会の仕事に走り回っているのだろう。


 その後は昨日と同様に人気ひとけの無い文芸部の展示教室で時間を潰した。

 何人か見に来てくれたが、作品をじっくり眺めてくれる人はいなかった。

 文芸部の知名度とヒエラルキーの低さを実感した。


 午後になると、上本くんの発表を見るために、体育館へ移動した。

 廊下には、昨日程の賑わいは無く、体育館の方からざわめきと歓声が聞こえる。

 体育館に踏み入ると、その非日常な空間に足がすくんだ。

 照明を落とされ、ステージのみがライトアップされている。

 多くの生徒がステージ前に群がっているようだ。


「初めまして! リケイ・ボーイズでっす!」


「僕たちは、2年1組理系クラス!」


「キャッチフレーズはぁーー」


「「「理系だけどー、数学苦手です~!」」」


 上本くんらの発表が始まったようだ。

 ステージには上本くんを含む、1組男子3人がいるようだ。

 小柄な男子がギター、体格の良い男子がドラム、そして、上本くんはマイクらしきものを握っているから、歌い手なのだろうか?


「あ~、あの時ー、始まったー俺らの青春っ!」


 流行りの歌を歌い出したのは、上本くん……ではなく、その隣の小柄な男子がギターを引きながら歌っている。

 上本くんが握っていたのは、マイクではなくマラカスだったのだ。

 シャカシャカと左右にマラカスを振っている。

 何ともシュールな上本くんに、体育館は笑いが渦巻く。

 ステージ上の上本くんと、目があった気がする。遠目だから分からないけど、ニコッと笑いかけてくれたようだ。

 体育館には上本くんの友人たちもいるようで、野次が飛ばされる。


「お前、歌わないのかよー!」


「シュールっ!!」


 上本くんは、その掛け声に反応し、コミカルな動きで会場を沸かせていた。

 私自身は、こういう騒がしい雰囲気は苦手であるが、上本くんのお誘いであるため、逃げ出すこともできない。

 こういう場は自分がどの様に振る舞えば良いのか分からない。ノリに乗るべきなのだろうが、乗り方が分からない。


 今は場の雰囲気に飲み込まれて、圧倒されていた。

 それでも、周囲の観客の楽しそうな叫びや掛け声に、こういう雰囲気も悪くないなって思った。

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