Step4-2

 学園祭、初日。

 2日間に渡って、開催される文化祭。

 その次の週に体育祭が2日間開催される。


 私は特にすることも、したいことも無いので、所属している文芸部の展示をしている教室で時間を潰していた。


 一歩、廊下に出ると、文化祭らしい活気に溢れている。

 体育館ではライブが、3年生の教室では模擬店が、1年生の教室では展示が行われている。

 2年生は劇をするのだが、それも午前中に終わってしまうため、やることがない。


 先週に印刷した部誌を手に取る。

 カラーの表紙は学園祭特別仕様だ。

 窓際の椅子に座って、みんなの小説を読む。今回の部誌のテーマは恋。

 正直、かなり苦戦した。

 だから、小細工を用いて、それっぽく仕上げた。

 みんなの作品の世界に沈む。


***


「来たよっ!」


 パタパタと走って教室に現れたのは小野夕。

 高いところで結ばれたポニーテールが揺れた。


「生徒会、忙しいんじゃないの?」


「えぇー、折角、来たのに開口一番それ!?」


 夕は不満そうに頬を膨らませた。

 仕方が無い。だって、生徒会は行事の度に忙しそうに駆け回っていることを知っているから。昨年の学園祭も、ほとんど生徒会の用事で走り回っていた。


「大丈夫だよ。後輩に任せてきたから」


 そう言って、展示のイラストや短歌を丁寧に鑑賞する。

 夕は美術部と生徒会を兼部していて、絵がとても上手い。

 今回の学園祭号にも絵を描いて、ゲスト出演してくれた。

 黒板の前に立ち、短歌を眺める夕に部誌を手渡す。


「いつも、忙しいのに、ありがとうね」


「いんや、自分が好きなことをしてるだけだからさ」


 いつも、夕はそう言う。

 自分の芯をしっかり持っていて強い。

 心のままに行動できる夕が羨ましい。

 私はいつも、相手の行動を深読みして、勝手に傷ついたり、諦めたりする。


 窓にもたれ掛かって、部誌を読んでいると、夕が「そろそろ行くね」と、声を掛けて、教室を出て行った。

 再び、教室には沈黙が訪れる。

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