ふっふーは集まった
どこからどう見ても、ふっふーにしか見えない生物が目の前に五体もいる。
……五つ子なのか?
「君たち、名前は」
吾輩は、順番に名乗り出てもらうように指示した。
「ふっふーやあ」
「ふっふーやい」
「ふっふーやう」
「ふっふーやえ」
「ふっふーやお」
「わーお」
最後の「わーお」は、吾輩の「わーお」だ。
……名前まで、全員ふっふーでいやがる……。
「君たち、何で同じ名前なの」
「さあ、ふっふーは、ふっふーやあ」
やけに私を敵視したように見つめながら答えるふっふー。
「気付いたら、ふっふーだったやい」
怪我した足に、包帯をグルングルンに巻かれながら答えるふっふー。
「ふっふーって、呼ばれたのがきっかけかやう?」
包帯をグルングルンに巻かれているふっふーを眺めながら、変なコップに変な液体をグビグビ注ぐふっふー。
「誰が、呼んだんだっけやえ……」
ふっふーの足に、グルングルンに包帯を巻くふっふー。
「さあ、どうだったっけやお……」
グルングルンに巻かれる包帯の巻かれ方が気になるのか、巻かれた足を凝視するふっふー。
……うん、もうよくわかんない!
このふっふーたちを区別するとしたら、まずは気になる語尾だ。やあ、やい、やう、やえ、やおと、語尾にしてはなかなか使いづらいようなものを使ってるやつもいるが、これで何とか区別できる。
もう一つは、やあふっふーの敵視。あれは、確実に吾輩が悪い。殺すとか言ったら、そりゃあああなる。区別するためにも、もう他のふっふーには過激なことは言わないでおこう。
最後は、やいふっふーの包帯。怪我の状態はわからないが、しばらくは包帯が足にグルングルンだろう。……てか、こんなに巻くものか? 千歳あめみたいに頼りなかった足が、バームクーヘンぐらいの太さになっている。うっ血しそう。
現状、これくらいしか区別する材料がないのだが、まあ、仕方ない。
……あ、そういえば。
このふっふーたちは、文字が書けるのだろうか。
何となく目が合った、やうふっふーに声を掛けた。
「君、文字は書けるかい?」
「文字やう?」
変なコップに注がれた液体を、まずそうに飲むやうふっふー。
……何で、飲んでいる。
「そう、実は、この文字を書いたふっふーを、探しているんだ」
山のように来ている編集長のLINEから、例の予告状のような厚紙を撮ったものが送られてきていたので、それをやうふっふーに見せた。
「やう……ちょっと待ってくれやう」
やうふっふーは、お腹をさすりながら何かを取りに行った。
そして戻ってきたやうふっふーの手には、紙とペンが握られていた。
「書いてみるやう」
やうふっふーは、その場で文字を書き始めた。
「おおおお……」
……汚え。読めねえ。文字がヨレヨレ。
文字を書き慣れていないのか、ペンの持ち方が変なのと、ペン先が震えているのがわかった。これは、やうふっふーではなさそうだ。
「ちょっと、撮らせてくださいねー」
吾輩は、この文字を証拠として撮っておいた。
「他のふっふーは、文字が書けるのか?」
やうふっふーは、首を横に振った。
「そうか、ありがとう……」
これでは、予告状を書いたのはこの五体ではなさそうだということになってしまう。
……うーん。
「あ、そうだ、君の写真を撮らせてくれ」
「……やう?」
不審がりながらも、やうふっふーは快く被写体となってくれた。助かる。
「さて、あとはロールケーキか……」
ふっふーたちは、ロールケーキの存在を知っているだろうか。
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