1話 昼休みにて

「まーた、ねてる」


 頭上から声を掛けられて、私は目覚めた。伏せていた机から頭を上げると見慣れた顔があった。


「お昼食べちゃったからねむっくて」


 私はぼんやりとした口調で言う。


「どーせ、前の授業休みで食べちゃったんでしょ?」


 幼なじみのリコは呆れた様子で言う。


「ご名答。頭使うと腹減るじゃん?」


「で、おなかいっぱいで眠くなるんでしょ」


「たりめーよ。さっきの授業何回叩かれたことか」


「自業自得じゃん」


 幼なじみは近くにあった椅子をもってきて、私の正面に座った。


「じゃあ、弁当は全部食べちゃった?」


 私は机の脇に掛けてあるバックの中から弁当箱を取り出して振った。中に入れた箸が揺れてカラカラと音をたてる。


「もー、ちょっとは残しときなよ。ほら、スイの分。どうせまだおなか減ってるんでしょ」


 リコは机の上に大小二つの弁当箱を置き、そのうち小さい方を私に差し出してきた。


「さんきゅ。リコは心の友だよ」


「ゲンキンだねぇ」


 リコは自分で昼の弁当を作っており、最近は私の分も作ってくれる。私は弁当を受け取り早速開く。そこには私の好物が詰まっていた。唐揚げ、卵焼き、明太パスタ。


「でもスイ最近食べる量すごいふえたよね。前は弁当昼に半分は残してたじゃん」


「確かに。なんかすぐ腹減るんだよね」


「でも私よりやせてるから意味わかんない」


「そう?あ、胸は確かにやせてるな」


 私の胸は見た目は男子といっても通るぐらい平らだった。リコがふざけて揉んだところ「やわらかさはある」とは言っていた。


「たぶん、毎日部活でひたすら泳いでるからその分カロリーが必要なんだよね」


 私、月詠スイは水泳部に所属していた。肌は屋外プールのせいで日焼けして褐色肌。髪は少し脱色してしまい少し茶髪になってしまっていた。最近肩まで伸びてきたので後ろを束ねてポニーテイルにしている。「結構遊んでそうにみえる」はリコの感想だ。 


 幼なじみの星見リコは帰宅部だ。日焼けはしていない。私と並んで歩いてたりすると、「お似合いの二人だね」や「すごい仲良しそうにみえる」と言われる、リコはそんな容姿だった。


 ふと黒板の上にある時計に目をやる。昼休みの時間を半分ほど回っている。


「あれ?今日リコ来るの遅くなかった?」


「うん? ああちょっとね……嫌なものをみちゃってね」

 リコは表情を曇らせる。


「なにをみたのさ」


「あれはたぶん……いじめなんだけど」


 そう前置きをしてリコは語り始めた。

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