第3話 無いよりマシとは言うけれど

「じゃあ、呼ぶから少し離れていろ」


 そう言って低く構え、ライオンもとい『』という名の動物は高らかに叫んだ。


『主人の使い魔になって欲しい』


 その時の俺は少なからず驚いた。すでにこんな大物を従えた人間が俺を必要とする理由が考えられなかった。もしや、俺最強だったりとか淡い期待はすぐに否定された。そこで終わればそれでよかったのだが、この後の事実が問題だった。


 


 神様、俺が何をしたというのでしょう。ドラゴンが良かったとかは高望みだとしても、せめてそこそこの体格のある魔物か人間に生まれ変わりたかったよ。だれも魔力がアリ程度のカラスに生まれ変わりたくないでしょう。


 ヴン、これ以上は脱線しそうなのでやめようか。虚しくなる。


 俺が使いものにならない前提でなぜ必要とするのか。いよいよあいつの考えが分からなくなってきた。詳しく聞こうとしても言わず仕舞いのまま。

 そして夜が明けた。今に至るわけである。


「まぁ、あと数刻くらいあれば来るだろ。」


 どこからその自信がくるのかは、触れないでおこう。実際にドタドタとこちらに走ってくる音が聞こえるから。


「カ〜ラ〜!」


 草の影から飛び出して来たのは、地毛には見えない金髪の髪をした少女だった。髪はボサボサ、ワンピースと顔の至る所に泥と傷痕があった。カラ、お前こんな可愛い子になんて苦労させてんだ。


 カラに抱きついていた女の子はこっちの存在に気づくと、キラキラとした目でこちらに近づいて来た。


「カラ?この子カラスのヒナでしょ。どこで拾って来たの」


「道端で見つけた」


「道端!?お母さんは!?」


 ん?話通じるのか?もともと俺と話できるから人並みの知能を持ち合わせていると考えていいのだろうか。一応聞いておこうか。


「カラ?聞きたいことがあるのですけど」


 その瞬間の動作は一瞬だった。ドスンっと一瞬土埃が立ち、少女は後ろに倒れ込んだ。な、何かやばいこと言った?!さして普通な内容のつもりだけど……


「あのー?」


「今ま、し喋って!」


 んン?今さっきカラとの会話はできてたよな。喋ること自体何もおかしなことは……


「カラ」


「何だ」


「魔物は人間の言葉を話せると思っていましたけど」


「あ?できるわけないだろ」






 そういうの、ほんとに


「先に言えやおまeゴフゥゥゥ!!」


 情けないうめき声が上がった。はい俺の声です。頭わしづかみにされました。なんなん。マジでなんなん。理不尽すぎひん。見てみろよお前のご主人。未だにこの世のものとは思えない顔でこっち見ているぞ。


「話は終わったんだ。そろそろ行くぞ」


 オマエ、イッショウシンジネェ。


「待って待って、カラ、その子も連れて行くの!?」


「ああ、だが」


「もちろん、お母様に何を言われるかわからないけど……あんまり期待はできないよ?」


「わかっている」


 なーんでカラとは疑問もないまま会話が続くのかな?というか俺歓迎されない感じ?

 泣くよ、そろそろ泣くよ?みんなで俺を除け者扱いして楽しいか?


「ンーーー、わかった。一緒に連れて行こう。言葉を話せるのも気になるし」


 めちゃくちゃ悩まれたけどそれ俺のせいじゃないよね!ア!笑顔が眩しい!








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