第7話
……その日、聖都ラーヌは上へ下への大騒ぎだった。聖都を守護する魔導騎士団指示の元、魔王率いる魔王軍それに対抗すべく大がかりな召喚術式が組み上げられ、異世界から勇者が召喚された。…その筈だったのだが……。
「…早く薬を持ってこい!!何もたもたしてる!!」
「空きのベッドはないのか!?何処か空き室に運び込め!!」
「……ダメです!!意識が戻りません!!」
「……よりにもよって、強力な回復魔法の使えるルーナ様の一団が事故に遭ってしまわれるなんて………。」
召喚の儀式は見事に失敗した。
それにより魔導騎士団で後方支援を担っていた、魔導騎士団副団長のルーナを始めとする魔導騎士20名、そして儀式の視察に来ていた王族の一人が、魔力の暴走により瀕死の重症を負ってしまう事態となり、今聖都中の名うての医師達がここ魔導騎士団の広間で必死の治療を施していた。
「……まだ女神の涙は届かないのか!?」
女神の涙とは、マジックアイテムの一つで、地母神イリアの加護を受けた北の地にある大きな古木から、数年に一度のみ収穫される死者をも生き返らせることのできる万能薬のことだ。
「…もう少しで届く、という事なんですが………。」
「……くそっ!!これでは一体何人救えることか!!薬は足りない、回復魔法の使い手も足らない、俺達はどうすればいいって言うんだ!!しかも、現国王の弟君がもう亡くなってしまわれる寸前だなんて!!もし、ラリー様を救うことができないなんて事になったら………。」
医師は思わずブルッと身を震わせた。
今の国王は歴代の王たちの中でも、特に厳格な事で広く知られている。
必死の治療を施した医師達全員が下手すると打ち首、等という馬鹿な事態にもなりかねない。医師は頭を抱えて蹲(うずくま)った。
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