第2話 これって転生?
「おいっ!!大丈夫か!起きろー!」
「……んんん…っへぇっ!?」
目を覚ますと、そこには屈強そうな男がいる。辺りを見渡し、自分が今、どこにいるのか分からなくなった。そこには大きな広場が広がっている。ヨーロッパ風の建築物しか建ってないので確実に日本ではない。
あ、あれ?僕は何をしているんだ?確か、ゲームをしようとして、それから、スタートボタンを押したんだよな?
夢……?!
まさか、これは… 異世界ですか?
で、でも、異世界召喚ものって、ほら!女神様にチート貰ったりしてから召喚されるんじゃないの!?
「おい…?大丈夫か…?見ない顔だが?」
屈強そうな男が心配そうな顔で僕の顔を覗き込む。どうやら僕のことを心配してくれたようだ。
「す、すみません。」
と、頭を下げる。
「お、おう…無事ならいいんだが…。お前さん、街の中心部の噴水広場で寝るなんて、度胸あるなっ!ハハハハハッ!!」
「あの…ここはどこでしょう?」
とりあえず、悪い人ではないようなので、質問してみる。
「ここがわからないのか?ここはダマルカット王国のアテム区の噴水広場だが?」
「は、はぁ…」
というか、夢にしても、何故僕が召喚されたんだ?そんなきっかけは無かった気がするんだが…
「まあ…泊まるところがねぇんだったら俺ん家の宿来るか?宿を経営してるんだが?お前、その様子じゃあ無一文だろ?」
ポケットにはお金も無いようだし、これから泊まるところなんてわからない。だったら少しお世話になろうかな…
「すみません…お願いしてもいいですか?」
「妙に畏まってるなぁ…そんなに畏まらんでいいぞ?俺の名前はグラス。グラスと呼んでくれればいい」
「僕はコバヤカワカルマです。カルマが名前で、コバヤカワが苗字です。」
「苗字??どこかの貴族だったのか?」
「ええっ!?ああ…いや、ちがうんですけど…その…」
「まあ、言いたくないなら言わなくてもいい。というか俺は敬語を使わなくちゃいけねえな!」
「いいいや!?そのままで結構です!」
僕とグラスは噴水広場をあとにして、広い大通りに出る。歩く時に、自分の体ではないような感じがした。ふらっとしてしまう。
周りにはこれぞ異世界っ!これぞ中世ヨーロッパっ!というような感じの建築物やら何やらが並んでいる。しかし、建築物だけではない。
なんと、人間の他に、エルフや獣人みたいな人達がいるのだ。そして、やたら美人が多い。エルフは日本でライトノベルを読んだ時と同じような感じだ。獣人みたいな人達は、普通の人間に耳と尻尾を付けただけみたいな感じ。ただのコスプレだ…。耳と尻尾といっても、猫や、犬、狐、牛、コアラ…などなど、他にも色んな種類の獣人が居るみたい。とても可愛い。コスプレだけど…
「どうした姉ちゃん?なにか珍しいものでもあったか?」
グラスは僕を見ながら言う。何故僕を見ているんだろう。僕は男だけど?
「姉ちゃん?」
「あの…僕男だけど?」
「なんだと………」
僕とグラスとの間に、沈黙が走る。女と勘違いされるほどか弱く見えるのか?
「男です。」
グラスは未だに驚きを隠せないでいる。そんなに!?
「そっっそうか…すまない!!」
本当に勘違いしていたようだ。悪気は無さそうなので大丈夫だけど。
「だとしたら、お前さん、相当なイケメンだな。俺は見た事ないくらいだぞ…」
はぁ…?僕は日本にいた時そんなことを言われたことは一度もなかったが…?凡人代表という顔をしていたはず。
「なんだ?自分の顔わからないのか?まあ、いいけどよ?」
自分の顔くらい知ってるけど、イケメンではないでしょ…
そんなこんなで大通りから抜け出して少しすると、宿屋に着いたようだ。木製の宿屋でとても質素な感じがあり、落ち着く。
「帰ったぞーーー!!」
玄関に入ったらグラスは目一杯の大声で叫ぶ。
「おかえりなさーーい!!」
すると、中から女の人が出てきた。いや、女の子が出てきた。年は10代後半くらい。水色のショートカットの美少女だ。
「あれっ?お客さん?」
美少女がこちらを向いて、僕をじっと見つめている。そんなに見つめられると恥ずかしい!
「………」
美少女が俺の顔を見て顔を赤くしている。ええ…?何…?
「あの…?」
長い間見つめられたのでこちらから切り出してみる。
「あっ!!すみませんっ!とてもカッコいい方だったので…つい……」
え…?本当に?やったあ?
「マルムも遂に…親離れかぁ…」
「おっお父さん馬鹿なこと言わないの!」
どうやら美少女の名前はマルムというらしい。グラスはマルムに、僕が無一文なことを話し、少しの間ここに泊めてあげようということを話したらしい。マルムは一生泊まってくれと言っていたが…
2階の泊まる部屋に案内されると、マルムにお湯とタオルを渡され、一人になる。1階には洗面所があるのでこれを持って洗え、だそうだ。日本のようにお風呂はないらしい。
トイレにも行きたいのでさっそく洗面所に向かう。しかし、洗面所には黒髪黒目のイケメンがいた。いや、正確には、黒髪黒目のイケメンだった。僕が。
「嘘だろ…?」
この顔は見覚えがある。逆に見覚えしかない。なんと、僕の顔は僕がゲームでつくったキャラだったのだ。
僕は思い切ってこのイケメンの頬を引っ張る。ちゃんと痛い。どうやら夢ではないようだ。夢だとしたら痛すぎる。最初は異世界召喚なんて思ってたけど、八割は夢だと思っていた。だけど、これは現実だと、信じるしかなさそうだ。
ゲームの中に飛び込んだということは、スキルとかもそのままということか?
僕は思わず叫ぶ。
「ステータスっっ!!!」
すると、僕の前にはタブレット端末くらいの大きさのパネルが宙に浮かんで現れた。
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【名前】 カルマ-コバヤカワ
【性別】 男性
【種族】 ヒューマン
【年齢】 15歳
【魔力】 999
【速力】 999
【筋力】 999
【スキル】 火属性魔法適性
水属性魔法適性
土属性魔法適性
無属性魔法適性
治癒魔法適性
身体能力強化(極)
【異能】 創造
【職業】 ー
【称号】 転生者
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「………」
僕はこの最強能力を引き継いで転生したってことか…。
やったああああ!!!これならやっていける!異世界転生なのか召喚なのかどっちかわかんないけど勝ち組ってことだよね!?
……そうかっ!多分特典が最強のまま異世界転生だったってことだよね!?そういうことだきっと!!
「あ、あのー!大丈夫ですか?」
洗面所の外からマルムが僕のことを覗いていたらしい。思わずガッツポーズをしていたのでそこを見られていたらしい。恥ずかしい。
「あ!ごめん!あのさー…マルムさんのステータスってどんな感じか教えてもらってもいいかな?」
僕は自分のステータスと他人のステータスがどのくらい違うのか知りたかったため気安く質問してしまった…
「ええっ!!?ステータスですか!?あ、あの…ステータスを他人に見せるということは互いの信用があって見せ合うものであって、簡単に見せていいものではないですよ…?」
「あっそうだったの?ごめんねっ!」
確かにステータスを見せるということは自分の弱点はココですよと、相手に教えているようなものだ。これからは気をつけよう。
「あっ…でも、カルマさんにだったら見せても……」
「ん?」
「やっぱり何でもないです…」
マルムが小さい声で何かを言っているが聞き取れなかった。とにかく今は比較対象がほしい。
「ねえマルムさん、ステータスの能力値の平均ってどのくらいかわかる?」
「平均は大体、農民がそれぞれの能力値が1〜10くらいで、冒険者や兵士などは大体50くらいですかね…、あと、私のことはマルムでいいですよ!」
なるほど、やはり僕は最強らしい。これで無双し放題ってことだよね?いいんだよね?
「ありがとう、マルム!」
満面の笑みでマルムに感謝を伝える。マルムは顔を赤らめて洗面所を出ていってしまった。
このあと、グラスとマルムと共に楽しく談笑しながら食事を取り、自分の部屋に戻った。
(はあああ…転生1日目はなんとか終わったなあ…。タダ飯喰らいになるわけにはいかないから宿の手伝いすることになったけど、凄く優しい2人に会えて運が良かったな。これから自分の能力を活かしてお金を稼ごうかな…)
ベッドに横たわりながらそう考えていたが、すぐに眠りに落ちた。
「どうだ?カルマのことどう思う?」
「うん。悪い人ではなさそう。むしろとっても優しい。」
「そうかそうか!あんな整った顔立ちの男はこの世界どこ探してもいねえだろうな!マルムもきになってんだろ!!?」
「はっ!はああああ!!?別に好きじゃないって!優しいって言っただけでしょ!」
「おいおい…それ好きって言ってるようなもんだろ…」
カルマが居ない間に父親と娘の恋バナに花が咲くのであった。
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