卒業式

バレンタイン

正月に私は舞依、元信そして御家族とともに過ごしてまた練習に励まなくては感じていた。

次の日、私は部活に行くと沢山の報道陣がいてインタビューを受けると世界大会を境に取り巻く環境は変わったなと感じていたが年明け最初の練習も注目されて走るというのは正直やりずらいと思っていた。

私は遥華、美穂、友美、咲歩、福本君に新年最初の練習として意気込みを述べた。遥華は相変わらず恵凛那の注目度は凄いね。

私は遥華や美穂、友美、咲歩そして福本君と実力のある選手がいるのに報道陣たちは私ばかりに声をかけて他の子たちには見向きもしないっていうのが私はずっと腑に落ちないと思ってるの。

私はムダ話してゴメンね、練習しようか。12時まで練習を終えると正門には報道陣がいるから裏門から帰った方がいいよ。私はこれだけ注目されると周りの人にも迷惑がかかる。少し距離を置いた方がいいのかなと考えるようになった。

その日の夜知らない番号から電話がかかってきた。バレンタインの日に行われる全国陸上競技大会に出場して欲しいと連盟からで世界大会やこれまでの実績を考慮して東京選抜に選出したから是非出場して欲しいと連絡があった。私は少し時間を欲しいと伝えると参加するしない関係なく2日後までに連絡して欲しい。

私は出場するかどうするか思い悩んでいた。このことを知ったら皆はどう思うのかな?私が話を受ければ別の所に行けるし気にせずのびのび陸上に集中出来るしその方がいいに決まってる。午後11時、夜遅いと分かっていながらも遥華に電話をかけた。

もしもし遥華?夜遅くにゴメンね。遥華は恵凛那から電話なんて珍しいね。どうしたの?

私はさっき全国陸上競技大会の連盟の人から電話がかかってきて東京選抜に選ばれたから出ないかって。遥華はあの大会って選抜された人しか出られない名誉ある大会だからもちろん話を受けたんでしょ?

私は話を受けるか悩んでて……。遥華はどうして?どんな理由であれ恵凛那は選ばれたんでしょ?私だったら即答で引き受けるよ。何か引っかかることがあるなら私に言って。

私は涙を流しながら選抜に選ばれたことは素直に嬉しいけど報道陣が陸上部の部員として私のことを聞こうと話が来るんじゃないか、これが1番の理由かな。

遥華は優しい口調でホント恵凛那はいつも自分のことよりも他人を優先するよね。私たちのことは気にしないでいいから自分の気持ちに正直になりな。

私はじゃあこの大会引き受けるよ。もし皆に報道陣やスポーツ雑誌の記者の人に何か聞かれたら本人に聞くようにとお願いをした。

そして元信、舞依、望海、多英にも全国陸上競技大会出場が決まり何か聞かれたら本人に聞くように伝えた。


選抜

私は学校が始まっても授業後すぐに学校に出て北本陸上競技場に行き、東京選抜に選ばれた人たちとともに練習をしていた。

話を引き受けたはいいが何の種目に出場するのかは聞かされていなかった。全員集められて今から適性を見て出場する種目を決めたいと思います。私は短距離の他に長距離、走高跳から走幅跳とあらゆる種目を一通り行った。こんな時に誰か知ってる人がいれば話かけられるのに、周りは敵ばかりでまさに四面楚歌といった感じだ。

私は自分のいつも走っている個人100mに選ばれて安堵の思いだった。全国から選抜メンバーたちと戦うのだから無断せずに頑張ろうと思った。

私も世界大会で3位になったプライドがあり勝って自分の知名度、北本学園高校陸上部の知名度を上げて他の部員たちにも目を向けてもらえるように走ろうと考えていた。

ある日学校に行くと桃華は私に話しかけた。学校に行く途中にスポーツ雑誌買ったんだけど恵凛那ちゃんって今度全国陸上競技大会っていうのに出るんだね。私はうん、でも報道陣やスポーツ雑誌の記者の人に私のことを聞かれたら本人に聞くようにって伝えて。周りの人たちになるべく迷惑かけれないからさ。

桃華は恵凛那ちゃんがそういうならそうするけど自分のこと犠牲にしすぎたらダメだよ。何かあれば私でも部活の子たち、彼氏や先輩等頼れる人に頼ってね。私はそうだね、ありがとう。

私は周りの応援もあり自分のことに集中していいんだ、いつもは周りの人の為にもと考えて走っているが今回は自分の為に走ることだけを考えて走ろう。

授業後、私は遥華に部活に顔を出せないけど宜しくねと声をかけると遥華は恵凛那が帰ってきて落胆されないように私たちも負けないように頑張るね。

私は学校を後にして競技場に向かった。

周りは大学生、社会人ばかりでまずここにいる人たちに勝たなければ試合には勝てない。東京中のスプリンターが集まるまたとない機会だと考えて他の選手に練習方法や食事法等様々なことを聞くことにした。

小生意気な高校生だとはね飛ばされると思っていたが実際は大学生も社会人も私で教えられることがあれば。恵凛那ちゃんと同じ時期は走ることで食事法とか考えてなかったから凄いね。私は常に大学ノートを持ち歩き箇条書きで他の人の走り等吸収出来ることはなんでもという気持ちだった。

休みは4日しかなく心身的にも大変なだったがお風呂に入る時間を長くするなど少しでも疲れを残さないようにしようと思い、試合を翌日に迎えた。

試合当日、バレンタインデーだが元信にはまた今度の機会に渡すことにしよう。いつもより早めに起きて東京都代表のメンバーの人数分のクッキーを焼いて会場に向かった。

私は100m予選に出場する為に準備をして予選が行われ23人中5位で予選突破をして午後に行われる決勝までスタンドで他の東京都代表を応援していた。

お昼御飯を軽く食べて決勝に向けて準備をして100m決勝に臨んだ。私は12秒57で自己タイムを記録したが惜しくも2位で優勝することは出来なかった。そして全国陸上競技大会の全日程が終わり東京都は走高跳や走幅跳をタイム化して東京都は総合優勝を果たした。

東京都の監督は皆さんのおかげで優勝することが出来ましたと述べた後に私は今日バレンタインデーということでクッキー焼いてきたので皆さん食べてくださいと1枚ずつ配布した。

監督は優勝を祝して任意で飲み会を行うので是非参加してくださいと言うと私はお酒が飲めないが競技場の近くにある居酒屋に参加した。

後日、私はクッキーを焼いて時間を調整して元信の家に行き遅くなりましたがバレンタインデーですとクッキーを渡すことが出来、元信はいつもありがとうと私の頭を撫でて軽くキスをした。その時、元信は私のこと好きなんだと認識した。


新入生勧誘

春休みが過ぎて満開の桜に迎えられ私は3年生になった。この制服を着れるのも残り1年、部活も青春も謳歌しようと考えていた。クラス発表で今年は誰と同じだろう。

今年は咲歩、遥華が同じクラスで友美と美穂、桃華ちゃんとは別のクラスで最後6人同じクラスだったらよかったのになと呟いていた。

私はクラスに行くと咲歩と遥華は恵凛那おはよう。遥華は来て早速悪いんだけど去年新入生勧誘が上手くいかなかったから今年は早めに手を打とうと咲歩と話してたんだよね。

私はそうだね、今年1年生でも2年生でも入ってくれなかったら福本君1人残る形になるもんね。それで何か手立てはあるの?

咲歩は恵凛那のことを話すのはどうかなって思うんだけど……。世界大会出場、この前の全国陸上競技大会の選抜に選ばれましたとか。私はそれ自分で言ったら自画自賛にならない?遥華は恵凛那が言いたくないっていうのであれば代わりに私たちが言おうか?私は咲歩の提案にいいとは思うけど他に何かあればいいな。2人とも絵を描くのは得意?

咲歩は嫌いじゃないし好きでもないよ。画力は人並みかな。遥華は何か閃いた顔してるけど。

私は皆の似顔絵を描いて入部したくなるようなことを書けば少しは目に止まって見学だけでもしてくるかなって思ったけどどう?

遥華はいいと思うけど私たちで話を勝手に進めるんじゃなくてちゃんと美穂や友美にも聞いてからじゃないとダメじゃない?

私はそうだね、今日の部活は放課後に教室を借りて新入生勧誘の作戦会議にしよう。咲歩はじゃあ俊輔、友美、咲歩に伝えてくるね。

授業後、私は教室に部員を集結させた。友美は練習の鬼の恵凛那が私たちを集めるなんて珍しいね。美穂はここに呼ばれたのはきっと理由があるんだよ。

私は1週間後に行われる新入生歓迎会に向けて色々と意見を出して欲しいと思って。

私としては部員全員の似顔絵とメッセージを書いてチラシを配布するのはどうかなと思うけどどうかな?咲歩はそれはいいけどメッセージってどんなこと書くの?新入生に響くことってなんだろう……?

私もそこを考えてるんだよね。去年は2年生だったからまだ猶予あったけど今年は私たち3年生が抜けたら福本君1人になるからそれは是が非でも避けたい。だからアイデアを出して。

福本は手を挙げた。僕としては女の子だけでなく男の子にも来て欲しいと思います。私はそうだよね、女の子にも男の子にも入ってきて欲しいよね。

話し合いから2時間、この日は結論が出ず私は家で新入生歓迎会ていうセリフを考えていた。練習も大事だがそれ以上に部員を増やすことに去年以上に時間を費やそうと考えた。

新入生歓迎会まで残り3日、私たちはいつも通り練習をして練習後に私は書いた文章を読み上げた。こんな感じでいいかな?福本はいいと思います。僕がいうセリフは自分で考えても宜しいですか?

私はそうだね、男の子を勧誘するには男の子が言うのは1番だよね、私ももう少し練り直してみるよ。


今年こそは

新入生歓迎会当日、私たち部員全員で体育館に向かい昨年同様どんな練習をしているのかを実践した。

練習を終えて1年生に訴えかけた。

「陸上部主将の中田恵凛那です。私たち陸上部は3年生5人、2年生1人で活動しています。陸上競技は短距離、長距離、走幅跳、走高跳等色んな種目があります。経験者、初心者問いません。是非私たちと一緒に走りましょう」

「2年生の福本俊輔です、今男子部員は僕1人だけで個人種目には出られても人数不足でリレーには出場することが出来ませんでした。是非僕とリレーメンバーとして走ってください」

教室に戻る途中、今年は誰がビラ配りする?咲歩は私と俊輔でやってもいいかな?2人とも同じ種目だし男の子と女の子1人ずついた方がいいかなって思うんだよね。

咲歩がそういうなら今年は2人に任せようか。咲歩と福本君は30分間ビラ配りして終わったら練習に参加してね。くれぐれもそのままデート行こうなんて考えないようにと私は一言添えた。

咲歩はもちろんだよ、じゃあビラを職員室でコピーして配ってくるから恵凛那たちは先に部活に行ってて。私と俊輔は後で合流するから。

今年も新入生が入ってきますようにと祈る気持ちでいっぱいだった。

私は練習していて中々見学に来てくれる人いないな。しばらくして咲歩と福本君がグラウンドに来て咲歩は私に尋ねた。恵凛那、誰か来た?私は来てないよ、咲歩は寂しい表情をしていてビラを貰ってくれる子はいるんだけどあまりいなくてね……。明日からも宜しくね、今日はとりあえず練習しよう。

練習後、咲歩は今日ビラを貰ってくれる子は全然いなかったから恵凛那にもビラ配り手伝って欲しいんだけどいいかな?

私はいいよ、咲歩そんな寂しい顔しないで。咲歩はだって……。去年、恵凛那や遥華とこんな思いをしてたのかなってビラ配りをしながら思ったよ。

次の日から授業後に咲歩、福本君、私の3人でビラ配りをするようになった。私は昨日よりも枚数を増やし1人でも多く渡るように心がけた。この日の分のビラを配り終えてグラウンドに向かった。

咲歩は必死に何かを堪える様子で練習をしており、私は咲歩に何かあったんだと感じて部活が終わったら2人で話そうかなと考えた。

ダウンをして部室に戻ろうとする咲歩に私は声をかけた。咲歩何かあった?私でよければ話聞くよ。すると咲歩はここではちょっと。恵凛那この後時間ある?一緒にカフェに行こう、私が奢るからさ。

私はうん、いいよ。裏門出たところに最近カフェ出来たみたいだからそこに行こうかと笑顔で伝えた。部室を閉めて私は咲歩と話があるから裏門から帰るねとじゃあまた明日ねと分かれた。

カフェに着くと咲歩はキャラメルラテとドーナツ、私は抹茶ラテとワッフルとそれぞれ注文した。私は咲歩に今日ずっと何かを堪える感じがしたけど何かあった?咲歩は堪えていた涙を流した。

咲歩はビラ配りの時、私や俊輔よりも恵凛那の方がビラを貰ってくれる人が多くて男の子も女の子もどうせなら可愛い女の子から貰いたいんだなって見せつけられた感じがして涙が出てきそうになって。

私はそんなことないよ、単純に刷った枚数増やしたっていうのもあると思うよ。明日も一緒にビラ配りしよう。

咲歩は感情を露(あらわ)にして可愛くてスタイルのいい恵凛那には私の気持ちなんて分かるわけないでしょ。

私なんて可愛くないしスタイルもよくないし挙句の果てに友達の恵凛那に八つ当たりまでする終(しま)いだし。もう自分でもよく分からないよ。

私は咲歩をギュッと抱きしめ、咲歩の気持ち分かるよ。いつもは明るく振舞っているけどホントは嫉妬深くて彼氏が違う女の子といるだけで浮気なんじゃないかと疑うことあるよ。

咲歩は微笑み恵凛那でもそんなことあるんだ。恵凛那って顔だけじゃなくて性格まで可愛いんだね。お菓子作りも出来るし女の子の鑑(かがみ)だね。それに比べると……。私はそんな落ち込まないの。咲歩のいいところ知ってるよ。また一緒にお菓子作りしようね。

咲歩は恵凛那はホント優しいね。彼氏さんが恵凛那が好きな理由が分かるな。こんな彼女いたら幸せだと思うもん。

私はありがとう。とりあえず食べよう。今日のことは水に流して明日からもビラ配り頑張ろうね。

それから1ヶ月間私と咲歩、福本君の3人は根気よくビラ配りをして貰ってくれる人はいるものの中々グラウンドに来てくれる人は現れず、もしかしたら私自身が世界大会や全国陸上競技大会に出場したから誰か来るだろうと過信していたのかも知れない。


吉報

私は今日こそは誰か見学に来ると部活をしているが一向に来る気配がない。2日後、3日後。そして1ヶ月が経とうとしているが新入生が来ない。何か入りたくなるような要素があればいいんだけど中々見当たらない。

すると舞依から電話がかかってきた。突然で悪いんだけど今週の金曜日夕方空けておいてもらえないかな?同じ系列校として親睦を深めようと対抗リレーを考えてるんだけどどうかな?

私はこの姿を新入生が見れば興味が湧くかも知れないと思いこちらこそ宜しくお願いします、たまにはこちらにもいらしてくださいと舞依に伝えた。舞依はみんな集まったらそっちに行くね。

返事をしたはいいものの誰を走らせるか。また1つ悩みが増えた。

次の日の練習で私は部員に突然だけど金曜日の夕方に系列校でもある北本学園大学と親睦会を称したリレーを行うことになった。改めて1回100mを走って決めるからね。私はストップウォッチを福本君に渡し1人ずつタイムを計るように伝えた。

1人目よ咲歩13秒25、2人目の私は13秒00、3人目の友美の13秒52、4人目の美穂13秒52、5人目の遥華は13秒45で友美と美穂のタイムが同じか、どうしよう。すると美穂はゴールした時に足を捻ったから休養してもいい?私は分かった、無理せず安静にしてね。

今回のリレーは私、咲歩、友美、遥華の4人で行くことにします。そして残り4日間練習時間を全てリレー練習に捧げた。

そして金曜日の夕方、私たちは北本学園高校のグラウンドに初めて来てもらった。下校帰りの新入生は足を止めて名門北本学園大学と対等に戦ってると興味津々でこちらを眺めていた。私はこの戦いを受け入れたのも新たな戦力を入れるため。

結果は高校生48秒25、大学生48秒00で惜敗したもののそんなことよりも私は足を止めて新入生に感謝でしかなかった。よしこれで何人かは入ると期待していた。

だが次の日、グラウンドにはいつものメンバーで新入生らしき人は見当たらない。いつものように練習をして帰ろうとしていた。

私は昨日来てた子に声をかけようと探していた。あ、昨日見かけた女の子だ。

あなた新入生だよね?私は陸上部キャプテンの中田恵凛那です。昨日は大学生との対抗戦見に来てくれてありがとう。よかったら見学だけでもしていかない?すると女の子は先輩たちの走りを見てとてもじゃないが私にはマネ出来ない。すみません。

そりゃあいきなり勝とうとするからだよ。私も含めてほぼ全員が陸上初心者で練習や大会を通して速くなったんだよ。見学だけでも来てね。

私は入って欲しい思いがあったが本人の意志を無視して入部させることだけはしたくなかった。遥華は私に声をかけた。恵凛那、さっき誰かと話してたけど何話してたの?

私は昨日のリレー見てた子に声をかけたよ。もしよかったら見学だけでも来てねって伝えた。美穂は見学だけでもってそのまま連れてこなかったの?私はうん、連れてこなかったよ。だってたまたま走ってる姿見ただけかもしれないでしょ?咲歩はその子はなんて?

とてもじゃないが先輩たちのようには走れませんってさ。だから私もここにいるのは初心者ばかりで練習や試合を通して速くなったよって伝えたよ。

友美は恵凛那らしいね。私だったら無理にでも連れて来るのにそこで本人の意思を尊重させるのは凄いよ。遥華は恵凛那は私たちに陸上部誘ってくれたけどあの時意地でも入部させようって感じなかったよね。私はじゃあ聞くけど無理強いしたら入ってた?

4人は黙り込んだ。私はそういう事だよ、いくら勧誘してもその子が本意じゃなかったら途中で辞めちゃうと思うしそれだったらその子がホントにやりたい部活をした方がお互いの為じゃない?

その言葉を聞いて咲歩は私たちが何故恵凛那について行こうと思ったか。きっと恵凛那になら全てを受け止めてくれる、ワガママを言っても大丈夫。

遥華は恵凛那の言う通り新入生が入りたいと思うような部活にして来た人には優しく接してあげ迷う。

私たちは新入生の為、最後の夏の為に前を向こうとしていた。


打診

6月のある日、私のスマホに知らない番号から電話がかかってきた。誰だろうと疑いつつも電話に出ると中田恵凛那さんでお間違いですか?

中田恵凛那は私ですが。日本陸上協議会のものですが今回お電話させてもらったのは今度台湾で行われるアジア大会に是非恵凛那さんにも出場して欲しいと思いお電話しました。私は大会はいつですか?

協議会の人はアジア大会は7月の第3週で日程は1週間になります。

私は予定表を確認すると地区大会、都大会と被っていて選んでもらえたことは嬉しいですが今回は辞退します。その時期は最後の夏の大会で仲間と共に走りたいので。

協議会は分かりました、恵凛那さんの意向を尊重する為代替の選手はこちらで決めますと電話を切った。夜のニュースである記事に目が止まった。

「陸上競技アジア大会、北本学園高校中田恵凛那選手出場辞退。代替選手として北本学園大学佐藤舞依選手内定とテレビ、ラジオ、ネットニュース等に載っていた」

私は代替選手は舞依か。頑張って欲しいな。

次の日、きっと遥華と咲歩驚くだろうなと思っていた。教室を入るとやはり遥華と咲歩は私のもとにやって来た。

遥華はネットニュースで見たけど何でアジア大会を辞退したの?私はなんでって夏の大会と時期が被ってたからじゃあダメかなと笑いながら答えた。

咲歩はどこに世界と戦えるのにそれを蹴って夏の大会に出ようとするなんてどういうことなの。私は時期が被ってなかったら出てなかったかも知れない。でもね、陸上を続けていればまた世界に出られる可能性があるけど夏の大会を蹴ったら遥華、咲歩、友美、美穂、福本君と試合出られずに終わるのは嫌だから断って夏の大会に出ようって思うよ。

遥華はなんか恵凛那らしいね。私だったら世界を優先するかな。咲歩は私もそうかな。恵凛那が代表を捨ててまで私たちと一緒にって思ってくれたからこそ個人としてもリレーとしても期待に応えたいって思うな。

次の授業後、3年間話したこともないのに同じクラスメイトから声をかけられたり他のクラス、他の学年からも野次馬のように私の姿を見ようと集まった。私は嬉しさとともに頑張ろうと思った。

放課後、この日は大雨で外の練習は出来ず室内練習をしていた。美穂、友美、福本からあの質問をされた。私は世界よりも皆と走りたい、それだけだよ。

美穂は残り1ヶ月、短い間だけど頑張ろうと改めてチーム一丸となることが出来る気がした。


救世主、夏の大会

私は1つ気になることがあった。それは毎日夜に元信と自主練をしているがデートらしいデートはここ数ヶ月していない。私は陸上、元信は野球でお互いに試合や大会が近くなるとどうしても練習を優先しなきゃいけないのは分かっているがそれでも私は1人の女の子として好きな子とデートしたい。

私は元信に電話をかけた。

もしもし元信今って時間ある?元信はいいよ、どうした?野球部の練習休みの日ある?最近メールや電話ばかりでデートしてなかったからさ。元信は恵凛那ゴメンな、練習や授業の調べ物が大変で中々デート誘えなくてさ。恵凛那は七夕の日空いてる?

私は7月7日空いてるよ。元信はじゃあその日にデートしよう、とりあえず高校の校門で待ち合わせで。この日は平日で学校帰りにデートすることに決まった。

私はよし久しぶりのデートだ。1回家に帰って私服で行くかそれともそのまま制服でデートするかと舞い上がっていた。

そして七夕の日、午後から小雨が降る予報で私は折り畳み傘をカバンに入れて学校に向かった。1時間目から6時間目の授業を受けたがデートのことばかり考えて頭の中に何も入ってこない。板書をノートに書いたしテストが近くなったらまた復習しよう。

授業後に咲歩に出かけようと誘われたが今日はデートだからゴメンねと伝えて校門で元信を待っていた。私は校門で30分、1時間と待っても元信が来ずデートの約束忘れちゃったのかなと心配になっていた。すると他校の生徒が私に声をかけてきた。

お姉ちゃん可愛いね、俺たちと遊ぼうよ。私は今人を待っているので。はぁ、舐めてるのか。大人しく付いてこいと私は連れ去られようとなっていた。

そこに元信が現れた。おいコラ、人の彼女に何で出してんだと殴りかかろうとすると他校の生徒たちは去って行った。

私は元信に抱きつき怖かった、助けてくれてありがとう。元信は来るの遅くなったせいで怖い思いさせてゴメンな。私はううん大丈夫だよと手を差し出すと2人で相合傘をしながら手を繋いだ。

久しぶりデートで好きな人と手を繋いで何故だか凄いドキドキする。まるで初めてのデートのように。

元信は雨だけど神社行こうと北本神社に向かった。私たちはお参りをして恋愛成就のお守りを購入した。私はねぇ、元信は何をお願いしたの?

俺はいつまでも恵凛那と一緒に居られますように。恵凛那は何をお願いしたの?私はナイショだよ。

元信はなんだよそれ。言いたくないならいいけどさ。私は元信の頬にキスをした。元信は不意にキスをしないで、する時は言ってよ。

私はこうやって笑い合える人がいるっていいな。

梅雨が明けて7月に入り最後の夏が近づいていた。私は練習前に部員を集めてメンバー発表をした。

個人100m中田恵凛那、岡谷友美。200m吉田遥華、川上咲歩、福本俊輔。400m荒牧美穂。走幅跳川上咲歩、福本俊輔。

リレーメンバーは中田恵凛那、岡谷友美、荒牧美穂、吉田遥華のこの4人で行きます。残り2週間、練習時間の半分を個人種目、残りの半分はリレーに時間を割くことにした。

2週間という短い時間で成績を残すことも大事だがこの時期私はどうしても部員のことを考えないと。

大会当日はお馴染みの北本競技場にやって来た。

午前中に行われた個人種目、私と友美は100mに出場し友美は14秒59、私は12秒50で私は予選通過して友美は惜しくも予選通過とはならなかった。

次に行われた200m咲歩は26秒12、遥華は25秒58、福本は24秒28で予選通過とはならなかった。400mに出場する美穂は69秒33で予選通過とはならなかった。残りは走幅跳の咲歩と福本君だけか、予選通過して欲しいと私は祈っていた。

走幅跳咲歩は4m28cm、福本君は6m44と記録したものの予選通過とはならず個人種目が終わりリレーを残すだけとなった。

私さえミスをしなければリレーの予選通過は見込めると考えていた。友美、咲歩、遥華と集まり予選通過しようと円陣を組んだ。そして行われたリレー45秒00で予選通過すると思っていた。だが他のチームは私たちの記録を上回る成績を残し45秒を記録しながらも予選通過とはならなかった。

今年予選を通過したのは100mの私だけか。なんか寂しい思いがあるが決勝で個人種目、リレーに出られなかった皆の分まで結果を出して都大会、全国大会と進出する気持ちでいた。

お昼ご飯を皆で食べている時、遥華は恵凛那決勝でも頑張ってねと声をかけてくれた。咲歩はそうだよ私たちの分まで都大会に出てね。美穂は恵凛那なら出来る頑張って。友美は私のおにぎり1つあげる。福本は中田先輩ならいけますよ。

私にはこんな素晴らしい仲間がいるんだ、絶対に都大会に出場すると強い思いで決勝に臨んだ。

決勝の時間となり、タイムは13秒44と予選の記録には届かなかったものの私は都大会出場を決めた。試合後、皆で集まり競技場の近くの焼肉に向かった。

美穂は恵凛那、県大会出場おめでとう。私たちはユニフォームを着て試合に出ることはないけど制服でスタンドで応援するからね。私は1人ずつハグをして県大会も勝つと高らかに宣言した。

忙しいと思いつつも私は元信、舞依、望海、多英に県大会出場することをメールした。私は全国大会に出られればテレビ中継もあるし今回来れなくても全国ならテレビでも応援してもらえる。よし、頑張ろうと自分を鼓舞した。

1週間後に行われた都大会でスタンドには遥華、咲歩、美穂、友美、福本君が恵凛那頑張れと声をかけてくれた。私は予選を1位通過で決勝進出を決めて決勝でも12秒11の自己記録で全国大会出場を決めた。

8月に神奈川で行われる全国大会に私は向かった。全国大会はというと危なげなく予選を通過して決勝進出を決めた。私は泣いても笑ってもこれが高校生活最後の試合、結果よりも悔いの残らない走りが出来ればそれでいいと自分に言い聞かせた。スタンドには陸上部のメンバー、そしてテレビで元信や舞依、望海、多英がきっと応援してくれてる。私は皆の思いを一身に背負いフィールドに立ち、その時を待っていた。号砲が鳴り、ラストランをゴールした。結果は11秒59の大会新記録のおまけ付きの優勝を果たした。

私は制服に着替えて競技場を後にすると陸上部のメンバーが集まっていた。皆の顔を見たら気持ちが溢れてきて涙が出てきた。友美は3年間お疲れ様でした。これで3年生全員引退だねと陸上部のメンバーで焼肉に行きお疲れ様パーティが行われた。


引退のはずが

夏は連日の大会で元信とデートは出来ずにいたが引退したことにより一段落着くと思っていた。担任の先生から職員室に来るように言われた。2学期早々私は何をやらかしたんだの思い職員室に入った。すると私宛の電話だと電話に出た。

全国高校陸上競技連盟のひとからの電話で中田恵凛那さん全国優勝おめでとうございます。今回恵凛那さんに電話したのは9月末に行われる岩手国体に特別枠として出場して欲しく電話させてもらいました。是非ともお願いしますとの内容だった。

私は夏にアジア大会を辞退した前科もあるしそのおかげで全国優勝出来かなと思った。はい、分かりました。国体に出場しますと電話を切った。

クラスに戻ると遥華は私に声をかけた。遥華は恵凛那、職員室に呼ばれてたけどなんだったの?

私は高校陸上競技連盟の人から岩手国体の特別枠として出場して欲しいっていう電話だったよ。遥華はまた辞退したの?私はアジア大会辞退して全国優勝出来たから今回は話を引き受けたよ。遥華と2人で話していると咲歩がやって来た。恵凛那岩手国体に出るみたいだね、ネット中継もやるみたいだよ。

9月末、私は前乗りで学校を休み国体の会場の岩手へ向かった。

当日、競技場で予選が行われ私は特別枠として予選落ちする訳にはいかない。下馬評でも中田恵凛那は優勝すると周りの目は私に向けられていた。私は今度こそ最後の大会だと思い予選は危なげなく100m予選を通過した。午後に行われた決勝は私よりも速いタイムを記録する選手がズラリと並んでいた。

迎えた決勝、私はゴールに向かって走った。12秒00で見事優勝を果たした。

優勝インタビューを受けるとスポーツ雑誌の記者はすみません、今から東京で撮影があるのでと車に乗り東京へ向かった。緊張から解かれた私は車の中で寝ていた。スタジオに着きウェアに着替えて撮影をしてここでもまたインタビューに答えた。

国体が終わり陸上の強豪校や実業団チームから是非来て欲しいと連絡があった。舞依はどうするのか電話で尋ねた。

もしもし恵凛那だけど舞依は進路北本食品が有力視されてるって前に見たけど進路は変わらずかな?

舞依は北本食品に行くよ。恵凛那はどうするの?

また舞依と走りたいから私も北本食品に行く。

私は進路を北本食品に決めてパパとママに話をして翌日、担任の先生に意向を伝えると中田は忙しいと思うから断りの電話はこっちでしておくね。


注目度アップ

秋になりそして季節は冬に移っていた。特別枠で国体にも出ることが出来、陸上をやって来てよかったなと思う。成績を残し、雑誌にも載るような選手になるとは陸上を始めた時は思いもしなかった。

そして今私はラジオのスタジオに来ている。陸上を始めた経緯、趣味等を話しているとあっという間に時間となった。別の日にはテレビの全国放送にも出演させてもらいまるで芸能人になったような感じがした。

しかし1つ気がかりなことがある。それは大会に読んでもらいメディアに出演ととてもありありがたい話で引き受けていたがふとした時、私は好きな人と一緒に居られないことが辛かった。どんなに忙しくても時間を割いて会ったり連絡したりする。なのに最近は疲れて私から連絡することも減ってきた。

イブとクリスマスは時間を作って元信と会いたいと思って元信にメールで2日間空けてほしいと送信した。

私のもとにあるオファーが届いた。イブにラジオ、クリスマスに雑誌の取材が入り今年のデートは泣く泣くキャンセルすることにした。

元信から予定が入ったのなら仕方ないね、空いてる日にデートしよう。元信は私に会いたくないのかな?なんだか寂しいな。

冬休みに入りイブにラジオ、クリスマスにテレビの出演をして競技場を借りて芸能人との100m1本勝負、スタジオで走る時に心がけていることやプライベートのことまで答えられる範囲で答えた。

仕事が終わり家に帰るとママから恵凛那宛の荷物が届いてるから部屋の前に置いてあるよ。

私宛?誰からだろうと自分の部屋に向かった。荷物を取って部屋に入った。宛先は元信からでダンボールを開けるとオレンジのパーカーと手紙が入っていた。

手紙には恵凛那に似合うかなと思って買いました。俺は会えなくても恵凛那のことが大好きだよ。

私は元信に電話して今から会おう。北本神社に来て欲しい。夜10時、こんな時間に呼び出すのは申し訳ないと思いつつも会いたい気持ちを抑えられなかった。早速もらったオレンジのパーカーを着て家を出た。

神社に行くと元信が待っていて私は元信の胸に飛び込んだ。元信は優しく抱きしめて寂しかった、涙を流しつつ元信大好き。俺も恵凛那のことが大好きだよとキスをした。元信は私を家に送ってくれた。


卒業式、ラスト女子高生

冬休みが終わり3学期を迎えた。といっても3年生の3学期は数日出てまた休みとなり、卒業式の練習と卒業式をするというのが北本学園高校の昔からの習わしとなっている。始業式が終わり、私は担任の先生の所に向かった。

私は卒業式ですが最後仲間や友だちとお別れを伝えたいので関係各所のメディアには取材等をお断りして欲しいと申し出た。担任の先生は中田がそれを望むならそうしよう。今年1年色々あって大変だったけどお疲れ様でした。

数日学校に行き2月14日を迎えた。この日は卒業式で私の誕生日で黒板には卒業おめでとうございますと在校生からのメッセージに感動した。そして卒業式が行われ担任の先生が卒業生に向けて1人ずつ言葉をかけた。これで高校生活が終わりと思っていた。先生は最後に川上さんから話があるそうです。

咲歩は席を立ち教壇のほうに向かって歩いた。

咲歩は教卓に忍ばせておいたクラッカーを取り出しせーのと声かけをした。「恵凛那お誕生日おめでとう」私は何が起きたか分からず先生に尋ねた。

何でクラスメイトが私の誕生日を知ってるんですか?休みの日に川上さんと吉田さんがクラスメイトになかたさんが卒業式の日に誕生日だから何か出来ないかなって企画してくれたんだよ。

私は咲歩と遥華に抱きつきありがとうと涙を流した。遥華はこれクラスメイト全員でお金集めて買った誕生日プレゼントだよ、恵凛那に似合うの探すの大変だったよ。

私は袋を開けると水色のハンドタオルでこんな可愛い物を……。こんな私の為にありがとうございます。

私は咲歩と遥華に卒業アルバムを渡して寄書きを求め、私も2人の卒業アルバムに寄書きを書いた。この制服とも最後の時を迎える。私は他のクラスの友美、美穂、桃華ちゃんを呼び6人で桜の木の下で撮影した。

私は明日からこの制服がコスプレになるのか、なんか寂しいね。友美はじゃあこの後6人でどこか行かない?桃華は野球部の集まりがあるからバスする。

じゃあ5人でどこか行こうよ。

美穂は私たちも福本君呼んで陸上部で何かしよう。咲歩がよければの話だけど。咲歩は最後だしいいよ、卒業式終わったら北本駅近くのカフェ集合にしよう。咲歩は俊輔にメールを送った。

私は4人にもうこの制服で学校に来ることはないけど思い残すことはない?4人は私を見て頷き北本駅に向かって歩き出した。

私たちがカフェに行くと福本は待っていた。咲歩は遅くなってゴメンね。6人でお店に入った。

福本は先輩方が卒業されると思うと寂しい気持ちになります。周りは女の子ばかりなのに僕1人男を受け入れてもらいホントありがとうございます。

私と友美はカフェラテ、遥華と友美は抹茶オレ、咲歩と福本はオレンジジュースをそれぞれ注文した。

私たちが話していると福本はカバンを探り出した。これでお別れだと思うと寂しくお手紙書いてきました。私たちは一斉に咲歩の方を見てこの幸せ者と揶揄(からか)っていた。

まず咲歩からと手紙を渡すと続いて遥華、友美、美穂そして最後に私に渡した。福本君、ありがとう。手紙は家に帰って読ませてもらうね。遥華は制服で6人会うの最後だから写真取ろうと私の自撮り棒で撮影した。

美穂は忙しくても年に1回はこのメンバーで会いたいねって話して北本学園高校の制服に別れを告げた。

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