第13話

「…本当にありがとうございました!魔導騎士団の皆様方!!」

怪魚を倒し(シンが)、早速デルの家に戻ってその旨を報告すると、開口一番デルの口からは感謝の言葉が飛び出してきた。


「これで舟を貸してもらえるかのう?」

リルが言うと、

「もっちろんですとも!!早速若い者達に舟と舟を橋のたもとまで運ぶための人足を用意させましょう!!」

デルが力強く請け負った。


その後、俺達はデルが手配した宿屋に一泊させてもらえることとなった。


    ◆  ◆  ◆  ◆


宿屋に一泊して朝が訪れた。

宿屋から出た俺達がデルから舟と人足を借り受け、さてそろそろ街を出発しようか、等と言っていたその時、

「おぉ~~~い!!!まってくれぇぇっっ~~~!!!」

と、後方からウェンディがすごい勢いで走ってこちらを追いかけてくる。 


追い付くまで待っていてやると、

「……ハァハァハァ………。あーーーっ!!つっかれた~~~!!」と、しばらく息を整えた後で、


「お前達、トーリスまで行くんだろ?俺様も一緒に連れてってくれないか?どうやら橋が壊れてるみたいだし。」

と、上目遣いで目をウルウルさせて、両手を胸の前で組みながら懇願するウェンディ。


「……しかしのう。舟に果たして主まで乗るかのう……?」

と、あからさまに嫌そうにするリル。

その横から舟を運んでいる人夫の一人が、

「その子位なら全然大丈夫だと思いますよ!」

と口を挟む。


「……た~の~む~よ~!!俺様だってお前達を助けてやったじゃないか~~~!!」とウェンディ。


「……しょうがないのう…。」

と、ついに渋々といった様子でリルの方が折れた。


……こうして6人(+ラウ)になった俺達は、トーリスへと渡る橋までの道を黙々と歩き続けた。


    ◆  ◆  ◆  ◆


「……ふーーーっ、とうちゃ~~~く!!」

ウェンディが赤く上気させた顔で膝に手をついて一息入れる。


「やっとっすね~~~。」

のんびりとマックスが漏らす。


「……やれやれ、ようやく、か……。」

ボソボソっとその横でマリスが呟いた。


「この辺りでいいですか~~?」

ここまで小舟を運んできてくれた人夫たちがリルに尋ねる。

「ああ、ご苦労。」と、何だか偉そうに労(ねぎら)うリル。

「それじゃあ、あっし達はここで。」

と言って人夫達はテヘへと帰っていった。


「よし!それではようやくじゃな!これよりトーリスへと向かうぞ!」

リルが一同の顔を見回し、言った。


……舟はトーリスまでのおおよそ1kmの距離をゆっくりと進んでいく。

オールを漕いでいるのは俺、マックス、シンの3人だ。俺はなるべく水面を見ないようにしながら淡々とオールを動かす。


……30分位経った頃、ようやく向こう岸に到着した。


「はーーーっ!怖かったーー!!」

と、思わず素直な感想を漏らすと、リルが、

「主は追々水に慣れていく必要がありそうじゃなあ?」と、不吉な笑みを浮かべた。


「…その時は私もお手伝いします……。」

と、マリスも続けて不気味に微笑んだ。


「お、おいおいおい!お手柔らかに頼むぜ……?」


「……まあ、今はよい。さっさとトーリスまで行くぞ!」

リルの声で俺達はぞろぞろとトーリスまで歩き始めた。







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