第14話

川を渡ってから歩くこと数時間。

俺達は周囲を5m程の高い壁に囲まれた、漁港都市トーリスへと辿り着いた。


「安いよ、安いよ!さあ、買った!買った!!」


通りは活気に満ちており、道行く人々に声をかける商人達の声が響いている。軽く、潮の香りが漂ってくる。


俺達はぞろぞろと連れ立ってメインストリートを歩いてゆく。


「……なあ、確かここから北上してまた橋を渡るって言ってたよな?ここから船に乗ってその聖剣があるっていう、バヌーだっけか?まで行けないの?」


と、リルに尋ねると、リルは渋い顔をして、


「うーむ。それがじゃのう……。ここから北の海に行くと魔王軍四天王が一匹、鋼鉄のドルーグ率いる水生のモンスター共が幅を利かせておるのじゃよ。」と答える。


鋼鉄のドルーグ。魔王軍四天王の内の一匹で、水生モンスター達のボスであり、その硬い鱗(うろこ)は魔法も鋼鉄の剣も通さない。最近では海や川に近い大きな街を襲ったりしているらしい。


「……あーっ……。そういうことか……。」


「我ら魔導騎士団も何度か討伐隊を派遣しておるのじゃが、何しろ魔法も剣技も歯が立たぬ。いずれはなんとかできる方策が立つ、とは思うが……。

……今の所は正直お手上げじゃ……。」


心の底から悔しそうにリルが続ける。


「……まあ、いずれは魔術研究所の連中が何かしら対策を考え出すことでしょう。」


苦々しい顔でシンも横から口を挟む。


魔導騎士団ようする魔術研究所。

聖都ラングーンの魔導騎士団の本拠地とは別の場所にそれは存在している。


魔王軍のモンスター達に有効な魔法や魔法剣を日々研究しているらしいが、その実態は今一つ解りづらい。


その命令系統は魔導騎士団にありながら、魔導騎士団ではなく、ラングーンの王族・貴族達が握っており、魔導騎士団の中でも特に秘密主義で通っている。


それ故、魔導騎士団本隊とはあまり仲が良くないようだ。


「……さてと、ここから北上してクリガ、ヘネン、ヘルズ山脈、そしてバヌーへと向かうわけじゃが、クリガへと渡る橋の前には最近、何かと物騒なベネディの森がある。そこで、ここトーリスでしっかりと準備をして行くぞ!!良いな!!」


沈んだ空気を振り払うように元気良くリルが言った。


それから俺達は破損した甲冑を新しく取り替えたり(俺だけ)、

リルとマリスは何やら魔法を使う際に使ったりするマジックアイテム(何かの鉱石やら植物の葉やら)とか、保存食(おそらく魚の薫製やらドライフルーツやら)とかを買い込んではマックスに持たせたり(マックスは体の何倍もあるバカデカいリュックを担がされていた。可哀想な奴。)、


ウェンディとラウは果物を使ったお菓子を一目散に買いに行ったり(トーリスまでの道中すっかり仲良くなったらしい)、シンはマイペースに剣を研ぎに出しに行ったり、何だかんだですっかり日が暮れてしまったので、取り敢えずその日の宿を求めて市場から市街地へと俺達は移動した。





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