第5話 経緯:ペテン

 ジャーナリストたちはいくつかの要因を検討した結果、この発見は「ペテンである」との結論を導き出した。


 また、何人かの者たちは、「Great Lakes Dive Company」とスポークスマンのアダム・ヒメネスに関する更なる情報を入手すべく努めた。


 すべての調査は「Great Lakes Dive Company」なる会社は明らかに存在しないという結論にたどりつくことになった。それはアダム・ヒメネスについても同様であった。


 ヒメネスと接触したすべての者は、その接触手段がeメールか電話であり、誰も直接コンタクトした者はいなかった。


 機体発見話の3週間後、突然「Great Lakes Dive Company」のウェブサイトが何の説明もなくネット上から消去され、アダム・ヒメネスからのコメントも一切なくなってしまった。


 同時期におこなわれたジェームス・キャリソンによる調査及び、アメリカの非営利団体MUFON(UFO相互ネットワーク)の調査により、以下のことが明らかにされた。


■ 「プレストン・ミラー」なる人物が提出したAP通信の「新たなる記事」については、その記事そのものの存在を示す証拠がない。


■ 「Great Lakes Dive Company」なる会社がネット以外に存在する記録がない。


■ アダム・ヒメネスは会社に関する基本情報や、スペリオル湖での調査に際してどのような種類の船を用いたのか等、更なる情報提出を拒否していた。


 ジェームス・キャリソンの調査結果には、カナダ政府は自国領内(スペリオル湖のカナダ側)での探索活動に許可を与えておらず、そもそもそのような申請すらなかった事実も含まれており、これらはF-89戦闘機に関するアダム・ヒメネスの声明が本当ではないことを示していた。


「Association for Great Lakes Maritime History」の役員にして、難破船サルベージ及び海事歴史の活動家であるブレンドン・ベイロッドは、アダム・ヒメネスとそのグループについては一度も耳にしたことがないと発言した。


 そしてベイロッドによれば、問題のスキャン画像はたしかにそれらしく見える…しかし(ヒメネスが主張するところの)魚群探知機を通じた水深約500mからの画像というのは、船体に装着されている変換装置では不可能であり、曳航器であれば可能性がありえるかもしれない、とコメントした。


 2009年の時点において、ジャーナリストとUFO研究家の間では、F-89戦闘機の「発見」と称される噂については「ペテンである」との認識が一般的になっている。


 失踪したF-89スコーピオン戦闘機とフェリックス・モンクラ中尉は現在も発見されていない。

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