第6章 あたしにできること

夜が明けた。


「おはよぉ、みんなぁ…」

「エクステラさん!どうしたんですか?!」

「お姉ちゃん…大丈夫なの?」

ラウラとレイは驚いた。2人の前には目下にくっきりとくまが出来たエクステラがいた。

「あはは…いめーじとれーにんぐしてたらこーなっちゃった…はは」

ドサッ

エクステラは倒れてしまった。



「ん…ここは…」

目の前には真っ白な空間が広がっていた。それは前にもこの世界に来た時に見たことがあった。

「アハ、おつかれ!度重なる疲労で倒れちゃったみたいだね。」

「クロステラちゃん…もしかして心配させちゃった。」

「あたしは一緒なんだから心配はしないよ。でも、仲間の2人は心配してるみたい。」

「なら、行かなきゃ」

「待って」

クロステラはエクステラの腕を掴んだ。

「会わせたい人がいるの。」



「それはね、あたしの話し相手みたいな人。こんな真っ白なつまらない世界、でもね、あの人と話してるのが楽しみで仕方ないの。」

「そんな人が…」

「いるの!あたしだって話し相手くらい欲しい。その人はエクステラも会った事があるよ。」



クロステラに連れられ、着いた場所にはエクスバースがいた。いや、エクスバースじゃない、あの人は私の中にあった楽の感情。

「ふっ、久しぶりだな。私も会えることを随分待った。」

「あなたは前に消えたはずじゃ…」

「私がここにいられる理由…それはエクステラ、お前が1つの感情に囚われない存在になったからだ。つまり私はお前の中に眠る楽しさの本心。喜びと楽しさは近しい存在だからな。1つくらい意志を持ってもいいだろ?」

「ふふっ、悪い癖もエクスバースちゃんと同じだ。」

「私は外の私を知らないからな。そんなにこの話し方が悪いのか?」

「大丈夫、エクスバースちゃんは自分で悪い癖って言ってるだけだから。」

「そうか、時間があれば聞かせて欲しいものだがな。それよりもだ!」

楽の存在はエクステラの前に立ちはだかり言った。

「その力はいわば無限の可能性。私の好奇心をお前に組み込めば、さらに強い力に変わると思われる。どうだ?」

確かに楽の感情にあるのは好奇心、可能性から可能性を見出していく無限の楽しみを快楽とする。エクスバースちゃんだってそうだった。

「別に…いいかな。私がそうなればもっと皆の力になれると思う。でも、それは私じゃないから。私の在り方は私が創っていかないといけないから。」

「そうか…。ふっ、ははっ!それもそうだな。私がお前の可能性自体を潰してしまうところだった。お前の成長は私の1番の楽しみだからな。期待させてもらうよ。」

「エクステラ!あたしが力になるよ!元は同じ感情、それならいいでしょ?」

「うん、その時が来たら…ね。それに【クロスバース】ちゃん!」

「私のことか…なんだ?」

「用事まだ終わってないでしょ?」

「ああ、そうだな。これを受け取って欲しい。私は存在が微弱で外へ出られないからな。お前が渡してやれ、運命を紡ぐピースだ。」

クロスバースは1枚の紙を渡した。

「これって…まさか!」

「お前の言葉で言うとハッピーエンドへの鍵だ。きっと役に立つ。」

「私はすでに持ってたのに…どうしてだろ?」

「ん?それなら、あたしも持ってるよ。いつの間にか持ってた。これ読むとね心が落ち着くんだ。ねぇ、これって…」

「クロスバースちゃんみたいに言うなら、私達の存在意義だったもの…そのもの。」

「そっか、ならあたしにはもう要らないね。エクステラだけじゃない、あたしだって大きく変わった。もう必要ないもんね。」

「そろそろ行かなきゃ、皆を心配させたままだから。」

「もしも、あたしの力を借りたい時は話しかけてよ。力で創ったものには意識は創れない。でも、あたしがその意識になればいいだけだから。」

「ありがとう。私、行くね。」

そして、エクステラは目覚めた。

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