第27話 それは素晴らしく尊い光景
レイアのザズリア製造や訓練。その次にサーベイさんとの盃。そしてほんの少しだけ口にした強烈なお酒。
そういったことをしていたせいか、俺は意識を失うように眠ってしまった。
布団がないベッドは石のように硬い。しかし野宿に慣れている俺にすれば大した問題じゃなく、ぐっすり夜を明かすことができた。
朝起きたあと、部屋には窓からの光でいっぱいだ。
ダンジョンで作り上げた
野宿していると、こうした光景なんて見られないからな。本当に自分の部屋で起きたような懐かしさだ。
それからというものの俺は心配だった。レイアたちはちゃんと寝られたのかと。
もし定期報告のワーウルフが来たら、布団を用意してもらおうともと思った。それと寝ているところを起こしたくないので、あちらから借りてきた『幻獣の伝承の書』……そこに記されているファフニールの伝承を読んでみることにした。
それで起きてこないレイアたちに不審に思って、扉をうっすら開けて覗いてみた。
すると驚くべき光景が目に映った訳だ。
「刺激が足りないわ……服越しじゃなくてもいいわよ……?」
「そうしたらレイアにメロメロになれるの……?」
「さぁどうかな……あん……すごっ」
それがベッドの中、リミオさんの胸を揉んでいるレイアの姿だった。
これは間違いない……女の子同士の戯れ。俗に言う『百合』というやつ!
生まれてきてこのかた、こんな濃厚なプレイを見たのは初めてだ。あまりの壮絶さで口が開きっぱなしになる。
リミオさんの胸が、レイアの手の動きで蠱惑的に波打っている。
プニッ……とか、フニ……とか、そういった弾力の音が聞こえてそうな感触だ。自分がやっていなくても見れば分かる。というか分かりたい。
いや、自分で何言っているのか分からないんだけど!
「……次……レイアの揉んでいいよ……」
「いいの……ありがとう」
えっ、レイアも?
俺が愕然としている間、リミオさんの両手がレイアの熟した果実に向かう。
そして思いっきり掴んだ。
「あっ……ん……」
「へぇ……私ほどじゃないけど、それなりにあるんだ。指が沈むわ……」
「……リミオさん……あん……」
この人、俺も触ったレイアの胸を……!
優しくこねるように揉まれて、可愛くあえぎ声を出すレイア。俺にされたときみたいに気持ちよさそうな表情をしていらっしゃる。
なんてエロくも美しい光景……朝からこんなもの見せられたら理性がおかしくなってしまう。男子ならなおさらだ。
……ってそうじゃなくて! 一体なんでこういうことになったんだ!? 俺が目が離している間に愛でも目覚めたのか!?
「……あっ、フユマ」
「えっ?」
「!!」
レイアだけじゃなく、リミオさんもこちらに振り向いてくる。見つかってしまったのだ。
彼女たちからすれば、俺は覗き見をしている変態案件。これはどう考えてもヤバい……。
「ご、ごめん……中々起きてこないなぁって心配していたら……」
「いや、夢中で気付かなかった私たちも悪かったわ。つい気持ちよくて2回戦しちゃって」
「2回……もしかして夜も?」
「ええ、あの子からやってきたからね。でも悪くなったかなぁ」
マジっすか……俺が寝ている間にそんな情事をしていたなんて!
なおその話をしている時、リミオさんが恍惚な表情をしていた。いや蕩けていると言った方がいいか。
あのクールなイメージはどこに行ってしまったのやら……でもこういうのもいいかも。
「……レイアも気付いてなくてごめん。あとで持ってきた菓子パンあげるから……」
そこにレイアがペコリと頭を下げてきた。
思わず戸惑う俺。
「は、はい……まぁ別に大丈夫だけど……」
「うん……それ食べたらダンジョン攻略しよう……」
「ああ……」
毎回思うけど、何というか釈然としない気分だ。
レイアは俺のことが好きな……はず。俺も優しくて素直なレイアが好きだ。
そのレイアがあの美しいゆ……あんなことをする理由なんてどこにある? リミオさんの色気にやられてそうしまったとか?
……それはそれで尊いかも。
「……今のことなら大丈夫」
ふと、レイアが俺の耳元へと
「えっ?」
「レイアはフユマのことが好きだから……。あれはフユマを守る為……リミオさん割としぶとかったけど」
「…………」
彼女の顔を見てみると、まるで勝負に負けない的な強気があった。
それから俺から離れ、先に部屋を出る。俺はというと……耳に当てられた甘い吐息の残り香を堪能した。
*********************************
レイアが用意した菓子パン(プチデビル製)は、小麦粉と蜂蜜で作った簡素なものだ。
ただ蜂蜜は蜂型魔物から採られた極上のものらしく、普通のよりもとても甘くまろやかだった。
菓子パンを食べて感動したのは初めてのことだ。今度古城に戻ったら、プチデビルに作ってもらうよう頼んでもらうかな。
それで腹が満たされたところで、早速ダンジョン攻略開始だ。
「レイア、はめ具合とか大丈夫?」
「うん」
レイアもザズリアを使って参加するつもりだ。
ちなみにさっきの彼女の言葉は後回しにしている。本当のところ未だに混乱しているが、攻略前に色々と考えても仕方がないのだ。
……と言いたいところだが、レイアとリミオさんを見ると嫌でも思い出してしまう。
俺の好きな女の子と美人があんなにも乱れて……ゴクリッ。
「フユマ君?」
「……あっ、すいません。ボォーとしてしまって」
「そう。まぁ、いよいよファフニールダンジョンの内部って訳ね。どうなっているのかしらね」
「そ、そんな変わったことはないですよ。俺から離れずに付いて来てください」
「はいはい」
それでリミオさんも同行するのだが、一緒に協力するというより、俺たちの攻略及び戦闘を見学するという形になる。
手出しするのは俺とレイアが非常に危なくなった時。
準備が整ったところで、俺はファフニールの部屋に向かった。
前にも言ったが、部屋の周囲には無数の通路があり、その先にアーマー系魔物やトラップが待ち構えている。
それを攻略していけば、制御装置という名のスキル獲得装置……言わばご褒美が待っている。
「ファフニール、今日のオススメは?」
『私から見て西南の通路。これは今までより趣向が違うな』
趣向が違う……これはもしかすると。
思い当たる節がない訳でもないので、そのまま通路へと向かった。その後ろを覚悟を決めた表情のレイアと、いかにもワクワクしているリミオさんも追ってくる。
歩いた通路の先には、固く閉ざされた扉があった。
ファフニールの部屋に入る前にあったやつと、同じ形状だ。
『では準備はいいか?』
「ああ、もう出来てる」
『よかろう。では開けるぞ』
きしみながら開いていく扉。
中に入っていくと円形状の部屋が広がっている。これはアーマーワイバーンがいた訓練場とどこか似ていた。
そして奥にはもう1つの扉があるが、
――ジュルルルル……!!
「床が!?」
リミオさんの言葉通り、床から流体金属が盛り上がってきた。それも多数。
そこから形成されたのは……これは懐かしい。最初攻略した時に出会ったアーマーゴブリンだ。
『部屋の魔物を倒すと先に進められる。シンプルな任務だ』
「そうだろうと思っていたよ。あそこからどれほど強くなったか確かめられるな」
とは言うものの、自分の力がスキルありきというのは分かっている。
しかしそれを知っていた上で、サーベイさんは認めてくれた。だからこそ、これは紛れもなく自分の力だと自負できる。
「……行くよレイア」
「分かった」
そうだ。俺はこのダンジョンを攻略して、
《グウウルウウウウウ!!》
スキルを手に入れて、
「ハァアアア!!」
誰もがアッと驚くようなスキルを手に入れる!
《ガア!!?》
「1体目!! 次!!」
《グオオオオ!!》
別にスキルを使って生き残ろうというシンプルなものじゃない。ただスキルが欲しいだけなんだ。
その為にハンターになって、この魔龍から進化したダンジョンを攻略しているんだ。
俺はスキルが大好きなんだ!
「
お待ちかねの即席武器変更だ!
ザズリアに
それを両腕にはめ、向かってきた1体を斬り刻む。さらに別の個体が短剣を振り下ろすも、鉤爪の間で受け止める。
《グウウ!?》
「流体金属から生まれても動揺はするん……だな!」
短剣をつまんだあと、ゴブリンごと後ろへと放り投げた。
ゴブリンはちょうどそこにいた2体の同族とぶつかり合い、壁に叩き付けられる。
そこに俺が片方の鉤爪を投擲。直後に【
槍のように鋭く長い爪が、3体もろとも突き刺し。
さながらアーマーゴブリンの串焼きだ。
「蒼炎【
一方でレイアが唱えた途端、ザズリアの拳に青白い炎が灯った。
アーマーゴブリンの短剣を弾いてから、アーマーゴブリンの頭部を鷲掴みした。
《グギャアアアアアアアアアアアアアア!!》
鷲掴みされた瞬間、アーマーゴブリンの全身が燃え上がった。一瞬で消し炭だ。
これでアーマーゴブリンは全滅した訳だが、レイアさん楽しそうで何よりです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます