メジャーそして……

キャンプ

香菜子と広翔はアメリカに渡り、スプリングトレーニング(日本でいうキャンプ)に向けて2人でトレーニングをしていた。メジャーは日本より球団も多く、試合数も多く地区リーグを勝ち抜き、ワールドシリーズまで進出すると年間180試合近く行うことになる。そのため香菜子と広翔は走り込みをし、まずは基礎体力をつけないと1年間持たないと思った。広翔は香菜子に全体練習までは走り込みをするぞと言って朝から晩まで走り込みをした。

2人は球団貸切のアパートに戻り、英語の勉強をしていた。香菜子と広翔は勉強は苦手ではないが得意ではなく日常生活に支障がない程度ぐらいにはしておく必要があった。

日を追う事にスタジアムにはキャンプに向けてトレーニングに来る選手が増えて来た。

そこに日本人がいて香菜子と広翔に話しかけた。2人とも久しぶりだね、日本での活躍を見ていていつか来るとは思ったけどまさかこんな早く来るとは思わなかったよ。

2人ともはじめましてみたいな顔してるけど俺のこと分かるよね……?

香菜子はもちろんだよ、伊東君だよね……?

伊東はそうだよ、なんでそんな自信なさげなわけ?香菜子はだって高校卒業して数年間連絡なかったし、結婚式にも来なかったからさ。伊東は2人結婚したんだったね、とりあえずチームメイトになった訳だからよろしく。

こうして3人は中学以来のチームメイトとなり香菜子と広翔はアメリカの生活に不安を持っていて伊東に色々と話を聞いた。

伊東は2人に英語は出来るのかを聞くと香菜子と広翔は首を横に振った。伊東はそれならとスタジアム近くの免税店に案内した。2人は伊東に案内されるがまま免税店に入り、携帯用翻訳機を1つずつ渡して購入した。

香菜子は伊東に日常会話ぐらい出来ないと生活出来ないと思って2人揃ってどうしようかと悩んでいたところだったからホントに助かるよ。

香菜子と広翔は伊東にアメリカにあるカフェチェーンに行こうと誘い3人で向かった。広翔は翻訳機教えてくれたお礼にここは俺に奢らせてくれと言って3人でコーヒーを飲みながら2人がいたプロ野球の話をして盛り上がっていた。伊東は2人と同じアパートで暮らしており、部屋を聞くと1つ挟んだところだと知った。

帰りに買い物をして今晩鍋にするから伊東君も是非家に来てと誘い3人で鍋を食べた。


オープン戦、シーズン開幕

香菜子と広翔はイエローソックスのユニフォームを着てシアトルホークスとのオープン戦で香菜子はマウンドに上がり1イニングを抑えた。2イニング目に4番打者の打球が左肘に当たり途中降板をした。香菜子はオープン戦初戦にlL(故障者リスト)入りをしてしまう。

次の試合、広翔が6番キャッチャーとしてオープン戦に出場し2安打放つものの7回表、相手の激しいスライディングに膝を負傷して広翔も香菜子と同様ILとなる。

下馬評では2人は開幕メジャーではないかと予想されていたがケガの影響でマイナーからのスタートが決まった。2人よりも先に渡米していた伊東は開幕メジャーの座を掴んだ。

メジャーの場合、移動は飛行機で食事もステーキを食べたりと出来るがマイナーの場合は移動は基本的にはバス移動で半日を過ごし、食事もハンバーガー生活というのもざらだった。

香菜子と広翔は早くケガを治してメジャーでプレーしたいと考えていた。香菜子はマイナーでハンバーガー生活の不摂生の生活はよくないと考えてなるべく自炊をしてお昼も2人分のお弁当を作るように心がけていた。


メジャー開幕

伊東は今季も開幕メジャーを掴んだが1ヶ月後マイナーに降格となった。伊藤はメジャーに中々定着することが出来ずメジャーとマイナーをいったりきたりする日々を過ごしていた。

香菜子と広翔はケガの治療をしており、まだマイナーの試合に出れずにいた。広翔は早く治して試合に出てメジャーという思いが強く抱いていた。香菜子は焦りはなく、広翔に焦ったらかえってケガが悪化するだけだからまずはお互いにケガを治すことに専念しようと話しかけた。

先にケガが治ったのは香菜子でピッチャーとして1イニングを3人で抑えた。香菜子に続くように広翔もケガが治り代打として出場してフォアボールを選んだ。

この時、JPBではメジャーに行った香菜子と広翔を何球団か調査していて来季の獲得しようと動いていた。

香菜子、広翔共にマイナーでは成績を残すもののメジャーから中々声がかからない。香菜子は広翔に9月になったら※17ロースター枠(出場登録選手26人から40人に増えること。)が拡大するからそこに向けて調整しようと話していた。

ロースター枠拡大となる前日、マイナーの選手たちは自分が呼ばれるのでないかとドキドキしていた。コーチから数人の選手が呼ばれて話をしていたがそこには香菜子、広翔の姿はなかった。そしてそのままシーズンを終えた。

2人は球団に呼ばれてリリース※18(事実上の戦力外)を伝えられてトライアウトを受けることを決めた。香菜子、広翔はいくつかの球団のトライアウトを受けて結果を待っていた。

中々吉報がないまま日々を過ごしてい中、広翔のもとに1本の電話がかかってくる。

広翔は電話を出るとびわ湖ビクトリーズの監督で来年野球が出来る環境がないなら2人とも戻ってきたらどうだ?広翔はどうするかは香菜子と1度話し合って決まり次第、また連絡しますと電話を切った。

香菜子はテイクアウトのハンバーガーを買ってきて家に帰ってきた。2人はハンバーガーを食べながら広翔は香菜子にさっきびわ湖ビクトリーズの監督から野球が出来る環境がないならまた一緒にやろうって言ってくれたよ。香菜子はそっか、広翔はなんて答えた?

香菜子と話し合って決まったらまた連絡しますと答えたよ。

2人はメジャーからの声がかからず日本に戻ることも視野にいれつつ考えていた。

その後、陽菜美の所属する川崎ファルコンズや陽凛の所属する福島いわきレイクス等香菜子と広翔はいくつかの球団から声がかかったが考えさせてほしいと保留をした。

広翔と香菜子は話し合い、日本に戻ることを決めてどこの球団でプレーをするか悩んでいた。

広翔はビクトリーズ以外のチームでもやってみたいと思いを香菜子に伝えるとでもさ、ドラフトの時もケガ明けの私たちを1番にまた一緒にやろうって言ってくれたビクトリーズに戻ってプレーすることが恩返しになると思うと提案した。広翔は香菜子の言葉を踏まえて電話をかけた。

お疲れ様です。滝沢ですが、香菜子と話し合った結果、香菜子と共にビクトリーズでプレーをしようと思います。声をかけてくださりありがとうございますと言って電話を切った。

2人は伊東に日本に戻ることを伝えて荷物を送り、入団会見のために滋賀に戻った。

そして桃井家グループに香菜子と広翔は日本に戻ることを伝えた。

入団会見で香菜子と広翔は再びびわ湖ビクトリーズのユニフォームに袖を通し、入団会見でアメリカに行って再び帰ってくることになりましたがまたビクトリーズを優勝に導けるように頑張りますと香菜子と広翔は2年前に背負っていた22番と27番を再び背負い、香菜子は年俸2億円、広翔は年俸1億で再スタートをきった。

家は2年前に住んでいたアパートの別の部屋に住むことにした。

日本では陽菜美と陽凛は活躍し、契約更改で陽菜美は88回21失点11勝5敗奪三振60

0ホールド5セーブ防御率2.14の成績で1800万円アップの6000万円で1発サインをした。

陽凛は195回35失点12勝7敗215奪三振

防御率1.61で5900万円アップの1億5000万円で1発サインをした。


キャンプ

香菜子と広翔はキャンプに参加するとお帰りという声と結果を残せず帰ってきたのかと賛否の声が聞かれたが香菜子と広翔はシーズンオフに帰ってきてくれてよかったと言ってもらえるようにとの思いだった。

バッティング練習をしている時も2人でブルペンに向かう時も前と変わらず一緒に付いてきてくれるファンの人たちにホントにありがたいと思った。

香菜子と広翔は紅白戦に臨み、アメリカの動くボールの感覚で振ると内野フライで自分たちのバッティングが出来ずにいた。

紅白戦が終わった後、今までのバッティングを取り戻すためにマシン打撃を夜が暮れるまで練習をしていた。練習を終えて球場を出ると中学生の川崎太鳳(かわさきたお)と名乗る女の子から私は2人のプレーを見て野球を始めましたと泣きながら語った。

香菜子は太鳳の頭を撫でてちょっと待っててと言って近くにあるコンビニに向かった。その間広翔と太鳳は世間話をしていると香菜子は戻ってきた。

香菜子は色紙にサインをし、広翔にもサインするように言って2人のサインを太鳳に渡した。そして香菜子の提案で太鳳の携帯でスリーショットを撮って香菜子と広翔はホテルに戻った。

バレンタインの日、ホテルには香菜子宛に15箱という大量のダンボールが届いて中身を開けるとチョコやクッキーは1箱で残りの14箱はなんと手紙で驚いた。その手紙の中にはこの前練習後にあった太鳳からの手紙もあった。

「桃井選手へ

私はテレビを見てグラウンドを颯爽と走る姿に心を打たれました。私も桃井選手のようになれるように頑張ります。川崎太鳳より」

手紙を読んでこの前の女の子だと気づき、手紙を書いてくれたことに対して嬉しく思い、何かしてあげようと香菜子は考えていた。

オープン戦、香菜子と広翔は苦戦するものの終盤にはしっかり対応をして2年ぶりの開幕1軍の座を掴んだ。


シーズン開幕

2人は自宅に戻り開幕を待ち侘びていた。香菜子は球団に電話をして開幕戦のチケットの手配をし、翌日ドーム取りに行った。広翔は香菜子にこのチケットどうするの?

香菜子は手紙を書きながら太鳳ちゃんに手紙とチケットを郵送しようと思って。太鳳ちゃんってキャンプの時に練習を待ってた中学生の女の子だよね?

香菜子はそうだよ、生で私たちのプレーを見てほしいなって思ってさ。そして太鳳からの手紙に書かれていた住所を書いて郵送した。

数日後、手紙とチケットは太鳳のもとに届いた。開幕戦当日、太鳳は香菜子のユニフォームを着てびわ湖ドームに向かった。

開幕戦びわ湖ビクトリーズ対川崎ファルコンズの試合が行われた。香菜子と広翔は陽菜美に挨拶に行き、香菜子は切磋琢磨しようと話をすると陽菜美は2人がアメリカに行っている間にレベルアップしてるから楽しみにしててと言い放った。

1回裏ファルコンズの先発は陽菜美で1番センター香菜子が打席に立つ。香菜子は初球のカーブ見送ると前よりもキレが増しているように思えた。2球目に香菜子は3塁線上にセーフティーバントを決めた。

2番打者の初球、香菜子は間一髪で盗塁を決めた。2球目エンドランで香菜子は一気にホームに帰ってきて先制点を取った。広翔は7回に犠牲フライで3点目をアシストした。

試合は3対1でビクトリーズが勝利して香菜子は4安打4盗塁と活躍をした。

びわ湖ビクトリーズは2年ぶりに開幕戦を勝利して選手、ファン共にこのチームにはやはり香菜子と広翔が必要だと改めて思った。

そして6月に1軍のオールスターファン投票に陽菜美、陽凛がノミネートされていて他を探していると香菜子と広翔もノミネートされていた。

陽菜美、陽凛は5年連続でオールスターに選出されて香菜子と広翔は2年ぶりに選出された。

香菜子は久しぶりのオールスターで結果は別として楽しむことを考えていた。香菜子はオールスター3戦で0安打だったが陽凛との対決や陽菜美、他球団との選手の交流を楽しんだ。

オールスターが明けて香菜子と広翔の活躍もあり、びわ湖ビクトリーズは1位を独走して2年ぶりの優勝にまっしぐらだった。そして9月上旬、広島厳島モミジーズとの3連戦でビクトリーズは2勝して次の試合に勝つとマジック15が点灯する。この試合、香菜子は3安打、6盗塁を決めて香菜子は通算600盗塁を決めた。8対1でビクトリーズが勝利しマジック14点灯した。10日後、ビクトリーズはマジック2となり5対3で9回香菜子はマウンドに上がり3人で抑えて通算150セーブを挙げた。

最終戦、川崎ファルコンズとの試合で香菜子は5安打を放ち通算1000本安打を放ってシーズンを終えた。


日本シリーズ、契約更改

2年ぶりにサウザンリーグを制したびわ湖ビクトリーズはノーザンリーグを制した角館なまはげドリームスとの対戦が決まった。

香菜子と広翔は2年ぶりの日本シリーズに心を踊らせていた。

びわ湖ビクトリーズは4戦4勝で日本シリーズを制して4戦で60対0という記録を作った。

香菜子は表彰式に参加し、投手として30ホールドでホールド賞、50セーブでセーブ賞

野手として打率3割3分3厘(600打数200安打)で首位打者、150盗塁で盗塁賞、そしてMVP、ゴールデングラブ賞、ベストナイン、カムバック賞など帰国して1年目だがタイトルをいくつも獲得した。

契約更改が行われて川崎ファルコンズの陽菜美は68回20失点5勝7敗104奪三振

26ホールド8セーブ防御率2.64の成績で4000万円アップの年俸1億円、福島いわきレイクスの陽凛は220回70失点は21勝8敗180奪三振 防御率2.86の成績で5000万円アップの2億で同日行われてそれぞれ1発サインをした。

そして12月上旬、広翔と香菜子は同日に契約更改でまず広翔が先に部屋に入った。

広翔は530打数170安打30本塁打90打点2盗塁打率0.320の活躍でリーグ優勝に貢献したとして5000万円アップの1億5000万円で1発サインをした。

次に香菜子が契約更改のため部屋に入った。香菜子は帰国して2刀流として成績を残しただけでなくグッズの収益、ドームに訪れるファンが増えたことを考慮して1億円アップの3億円で1発サインをした。

2人は家に帰り、お互いに年俸いくらだったかと話し合っていて広翔は香菜子の大幅アップに嫉妬していた。


大物高校生

年末にスポーツ番組を香菜子と広翔の2人は観ていた。アマチュアの中学生、高校生がプロ野球選手相手に対戦するという企画で高校生の女の子がプロ野球選手相手に3者三振に抑え、アナウンサーが女の子に名前を尋ねると川崎太鳳ですと答えた。

広翔は聞いたことある名前で香菜子はキャンプの時にいた中学生だった太鳳ちゃんだね。

広翔と香菜子は将来プロ野球で対戦出来たらいいよねと話していた。

太鳳は多摩学園の1年生で庚午スタジアムを5試合連続完封、そして3番としてチームを牽引してチームを優勝に導いた。

太鳳は周りから桃井2世と呼ばれ、2年後のドラフト候補に挙げられていた。

次の日香菜子と広翔はドームで自主練に向かっていると滋賀に帰省していた制服を着た太鳳と出会った。

広翔は太鳳ちゃん久しぶりだね、昨日のテレビ見たよと話していた。そうすると香菜子は太鳳ちゃんにここで会ったのも縁だから一緒に練習する?太鳳はお願いしますと頭を下げた。

3人はドームに入り広翔は先に着替えてウォーミングアップをしていた。更衣室で香菜子と太鳳は庚午スタジアムで優勝投手になるってすごいねと話しながらグラウンドに向かった。

遅れて香菜子と太鳳もストレッチをしてランニング、キャッチボールをして身体をほぐしていた。

香菜子はいつものルーティンとしてバント練習、トスバッティングを太鳳も一緒にやっていた。香菜子は打球を転がす方向を広翔に言って確実にやっていて太鳳はこれぞプロだなと衝撃を受けた。

その後、広翔がフリーバッティングをするのに打ちやすいボールを香菜子は投げて広翔の打球に驚いていた。

打撃練習を終えて香菜子はマウンドに向かった。香菜子はストレートを30球投げた時、太鳳は香菜子におこがましいお願いですが私のボールを取ってもらえませんか?

香菜子は分かったと言ってホームベースに向かった。太鳳は10球程投げて香菜子に座ってください。

太鳳は香菜子にストレートを投げ込むと香菜子はいいボール投げるね、太鳳は香菜子に1打席勝負しませんかと勝負を仕掛けた。

香菜子は打席に立ち、広翔はキャッチャーミットをつけると太鳳は香菜子にいきますよといって香菜子にストレートを投げた。

広翔は1ストライクとコールし、2球目チェンジアップをファールにすると2ストライクで香菜子に追い込まれた。3球目香菜子はフルスイングをした。打球は広翔のミットに収まりキャッチャーフライで香菜子の負けだね。

香菜子は感情を露わにして太鳳ちゃん、今度は私が投げるから打席に立ってと言った。

広翔は太鳳に大人げなくてゴメンねと言うと香菜子さんの投げるボールを打てる日が来るとは思わなかったので嬉しいと言った。

1球目ストレートを投げて太鳳は見送った。2球目カーブを空振りを取り、3球目香菜子は「かなちゃんボールニコニコ」を投げて空振り三振を取った。

香菜子は太鳳と握手をしてこれで1勝1敗だね、この勝負の続きはプロでしようねと言って香菜子と広翔は家に帰った。


ケガ、引退

年明けに陽凛は自主練をしている時に肩を痛め、ボールを投げられない状態にまでなっていた。陽凛はチームドクターに診てもらうと今シーズンは投げられない。強行して投げたら日常生活に影響が出るよと言われた。

中学時代から投げ続けてきた陽凛の肩はついに悲鳴をあげていた。そして陽凛は思わず涙が出てきて桃井家グループにメールをした。

私、投げすぎてチームドクターから今シーズンは投げられない。投げたら日常生活に支障が出るって言われちゃった……。

それを見た結菜は1年間リハビリして来年またグラウンドに戻ってくるか、日常生活を脅かしたとしても投げるかの2つに1つだね。私たちは陽凛ちゃんが悲しむ顔はみたくないよと書き添えた。その言葉に陽凛は1度考えて答えを出しますと返信した。

陽凛は悩みに悩んだ末、現役を引退することを決めた。そして陽凛はいわきレイクスに引退することを伝えると夜に引退会見をした。

陽凛はしばらく家でゆっくりしようと思っていたが、いわきレイクスの臨時コーチを依頼された。

キャンプに入り陽凛は若手投手を指導して変化球などを伝授し、練習後に陽凛は同じ沖縄でキャンプを張るびわ湖ビクトリーズの香菜子と広翔を食事に誘った。

陽凛は今年からは2人と対戦することは出来なくなったからこれからは1人のファンとして2人を応援していけたらといいなと伝えた。それを聞いた香菜子と広翔は陽凛ちゃんの分まで私たちは頑張るねと言った。

キャンプが終わり陽凛は解説の仕事がやってきた。オープン戦びわ湖ビクトリーズ対川崎ファルコンズの試合で初解説を務めた。

アナウンサーは解説の陽凛に対して注目の対戦はと聞かれ、長谷川選手対桃井選手の対決は見どころですと答えた。

2人の対戦は2奪三振と陽菜美に軍配が上がった。そして3月になりシーズンの開幕が迫っていた。

陽凛はシーズンに入っても解説の仕事がいくつも来てその中にはびわ湖ビクトリーズ対川崎ファルコンズだけでなくオールスター、日本シリーズ等の試合を務め、1年が過ぎた。


監督就任

シーズンが終えてびわ湖ビクトリーズと福島いわきレイクスはそれぞれある発表をした。11月下旬、福島いわきレイクスの新監督として本宮陽凛が就任した。

新監督に就任した陽凛は今季は優勝出来なかったので来季は優勝出来るようにしたいと語った。

陽凛が監督就任した2日後、びわ湖ビクトリーズは契約更改を終えた香菜子に選手兼任監督を務めることを発表した。

香菜子は新監督に就任し、来季は選手としても監督としても結果を残して優勝したいと言った。

香菜子と陽凛は現チームをどのようにすれば優勝出来るのか、ルーキーや助っ人をどう使うか等頭を悩まさせていた。

そしてキャンプインをして香菜子と陽凛は若手、ベテラン、ルーキー、助っ人の練習の様子を見ていた。だがそれだけでは分からないため紅白戦を実施し、現状を確認した。

キャンプが進みオープン戦の初戦、びわ湖ビクトリーズ対福島いわきレイクスの新監督対決とかり3対1でいわきレイクスが勝利した。

オープン戦を終えてびわ湖ビクトリーズの香菜子は選手としてよりも若手を多く起用して結果の有無問わず使い続けた。いわきレイクスの陽凛は開幕から若手、ベテランがケガ人が多く中々勝てずにいた。

監督1年目のシーズンを終えてビクトリーズは3位、いわきレイクスは5位でシーズンを終えた。この成績を踏まえて香菜子、陽凛共にオフの補強に力を入れようと考えていた。

補強第1弾としてこの年のドラフトの目玉選手の川崎太鳳をビクトリーズ、いわきレイクスを含めた6球団が指名し、陽凛がガッツポーズをした。交渉権は福島いわきレイクスが獲得した。

抽選で外れたびわ湖ビクトリーズはこの年、アメリカから帰国してびわ湖ビクトリーズの入団テストを受けて合格した伊東海音を指名した。

いわきレイクスは5人指名し、びわ湖ビクトリーズは6人を指名した。

香菜子は伊東に入団テストを受けてくれてありがとう。伊東は香菜子にこちらこそ指名してくれてありがとうございます。その後伊東は仮契約を済ませた。

陽凛は太鳳に挨拶に向かった。太鳳は陽凛にリーグ優勝に導けるように頑張りますと意気込みを語った。

新入団会見で伊東は30、太鳳は球界を代表する選手になって欲しいという気持ちから背番号18とそれぞれ発表した。

そして契約更改に進み、香菜子は投手として30回8失点5勝2敗18奪三振5ホールド10セーブ防御率2.40

野手として120打数40安打40打点30盗塁5犠打打率0.333の成績で現状維持の3億円でサインした。

広翔は590打数190安打42本塁打115打点打率0.322の成績で1億円アップの2億円でサインした。

陽菜美は30回3勝0敗失点8奪三振60

2ホールド3セーブ防御率2.40の成績で現状維持の1億円でサインした。


勝負の2年目

香菜子と陽凛は監督2年目を迎え、1年目では結果を出せなくても多少許されるが2年目は世間の目も厳しくなる。

香菜子は前年よりも選手としてもっと試合に出場を増やそうとキャンプインから精力的に練習をし、その後広翔共に自主練をしていた。

オープン戦初戦、前年同様びわ湖ビクトリーズ対福島いわきレイクスの試合で陽凛は思い切った起用をする。いわきレイクスの先発は太鳳でびわ湖ビクトリーズは1回表、1番センターで香菜子と初対決を迎える。

太鳳が投げた初球、センター前ヒットを放つ。そして2番打者の初球、盗塁を決める。0アウトランナー2塁と得点圏にランナーを進めたがビクトリーズは無得点に終わる。その後、両チーム共に点が入らず0対0の引き分けで終わった。

開幕を迎える直前、陽凛は太鳳を呼んで先発として投げない日は打者として試合に出場して欲しいと伝えた。太鳳は高卒で2刀流って言うと……。びわ湖ビクトリーズの選手兼任監督をしている桃井香菜子選手以来2人目ってことになるよ。太鳳は分かりましたと2刀流の準備をしていた。

ノーザンリーグ福島いわきレイクスは栃木とちおとめストロベリーズとの試合の開幕戦の先発は太鳳が起用されて8回無失点18奪三振4対0でいわきレイクスが勝利し、太鳳は高卒ルーキー初の開幕戦登板、初勝利を挙げた。

サウザンリーグではびわ湖ビクトリーズ対広島厳島モミジーズで1番センター香菜子、3番キャッチャー広翔として出場して香菜子は3安打3盗塁、広翔は2安打と開幕を切った。

香菜子は監督業に専念した前シーズンは、成績を残せずにいたので今シーズンは全試合出場しようと考えていた。

とはいえ香菜子は選手でありながら監督もやっていて他の選手の調子がよければ自分を起用するか、他の選手を起用するかコーチと話し合って決めていた。開幕3連戦、香菜子は野手として投手としてフル稼働をしていた。

そのため香菜子は試合前と試合後には必ず1時間のマッサージを欠かさず行っていた。

シーズンが進み香菜子、広翔、陽菜美は1軍のオールスターにノミネートされて香菜子、広翔、陽菜美の3人はオールスターに選出されて香菜子は史上初のオールスター選手兼任監督を務めることになった。

香菜子は第1戦1番ピッチャーとして1回表を3人で抑えた。1回裏香菜子は1番打者としてライト前にヒットを放つと2番打者の初球に盗塁を決める。2球目に3盗を決め、2ストライクの3球目犠牲フライで香菜子はホームを踏む。

香菜子は2回表にピッチャー交代して監督業に専念した。ノーザンリーグは1回の1点を守りきり勝利した。

シーズンが再開してノーザンリーグ福島いわきレイクス、サウザンリーグびわ湖ビクトリーズ共に独走状態で8月にはマジックが点灯して8月下旬には両チームとも早々と優勝を決めた。

香菜子はリーグ優勝を決めてこれで心置きなく選手として試合に集中出来ると思い香菜子は1番センターで試合に出場し続けた。川崎ファルコンズとの3連戦の初戦、香菜子は10試合で60盗塁を決めて通算800盗塁を達成した。

そして3戦目には1イニング1失点で抑えてセーブを記録し、JPB新記録の276セーブも記録した。香菜子は向かうところ敵無し状態となりびわ湖の女神と呼んで香菜子を崇めるファンが多くいた。

香菜子は2軍にいた伊東を1軍に呼び、代打として起用した。2試合で2安打と結果を残したので9月から香菜子は伊東をスタメンで起用し続けた。

そしてシーズン最終戦となる広島厳島モミジーズに4四死球で8盗塁を決めて前人未到の通算1000盗塁を決めて8対2で最終戦を終えた。


日本シリーズ

サウザンリーグ覇者、びわ湖ビクトリーズはノーザンリーグ覇者、福島いわきレイクスの本拠地いわきスタジアムに向かうためビクトリーズは福島入りをしていた。

香菜子は陽凛に連絡を取り、スタジアム近くにある福島ラーメンを食べながら話していた。陽凛は香菜子ちゃんは兼任監督で私は監督でまさか私たちが監督として戦う日が来るなんて思わなかったよね。香菜子は相手が陽凛ちゃんでも勝ちを譲るつもりはないよ、4連勝でビクトリーズが日本一になるからねと言い放った。

陽凛もまた香菜子にいや、日本一になるのはいわきレイクスだからと言ってバチバチだった。

第1戦、いわきレイクスの先発は高卒ルーキーながら15勝を挙げてチームの勝ち頭となった太鳳が先発で香菜子も広翔も0安打と完全に抑えられて3対0でビクトリーズは初戦を落とした。第2戦5対2で敗れ、2敗でびわ湖ドームに戻った。第3戦6対4、第4戦2対1とビクトリーズが連勝した。第5戦いわきレイクスは太鳳を登板させるものの両チーム共に点が入らず0対0で再びいわきスタジアムに向かった。第6戦1対0でビクトリーズ、第7戦2対1で3勝3敗1分けでずっと試合に出ずっぱりだった香菜子はスタメンから外れた。

第8戦再度びわ湖ドームに戻ってきた。

ビクトリーズは苦手意識のある太鳳が先発で香菜子はビクトリーズの選手たちに今日で8試合目で集中力も切れかけているかもしれないけどこの試合で決めるつもりでいるからこの試合は全員出るつもりで準備するように語った。

1巡目でビクトリーズは2安打に抑えられてきた。3回から中継ぎのピッチャーを1イニングずつ投げさせ、8回まで0で抑えてきた。だがビクトリーズも太鳳に0点に抑えられていて8番打者のところに伊東を代打に送った。

伊東は2塁打を放ち先制のチャンスを掴むものの太鳳はその後を抑えた。9回陽凛は太鳳を呼んだ。コントロールが乱れてきてるけど変わる?太鳳は監督もう1イニング行かせてくださいと直訴し、陽凛は太鳳をマウンドに送った。

太鳳は9回のマウンドに上がり、簡単に2アウトで香菜子は7番打者を呼び寄せてバットを短く持っていくように指示をした。そしてヒットを放つと8番伊東がフォアボールを選ぶ。9番打者も際どいボールを見送り連続四死球を選ぶ。

1番打者が行こうとする時、広翔は香菜子にここ1番で強いのが監督の香菜子でしょ。香菜子はヘルメットを被り審判に代打桃井と告げて打席に向かう。1球目チェンジアップを見送り1ストライク、2球目カーブをファールで簡単に2ストライクと追い込まれる。誰しも延長を覚悟をしていた3球目甘く入ったストレートを香菜子は振り抜く。打球はセンターバックスクリーンに運ばれてびわ湖ビクトリーズは4対0で日本一に輝いた。

そして香菜子はメジャーでも記録のない代打サヨナラ逆転満塁日本一ホームランを放った。このホームランは香菜子に取っての初めてのフェンスオーバーのホームランだった。


電撃引退、表彰式

香菜子は日本一で胴上げ監督になった次の日、マスコミをドームに来るように言った。集まったマスコミに対して香菜子は若干25歳の若さで引退をすることを発表した。

「主な引退の理由として膝に注射を打たないと全力プレーが出来ず、衰えた姿を皆さんに見せるなら全盛期に活躍してすごい選手がいたなと言ってもらえるところで引退したいと思ったからと答えた。これからは監督としてチームを再び優勝に導けるように頑張ります」

香菜子は野手として打600打数300安打15本塁打(うちランニング本塁打14本)70打点40犠打350盗塁打率0.500

投手と95回30失点10勝2敗125奪三振

35セーブで35セーブ防御率2.84

首位打者、犠打賞、盗塁賞、セーブ賞を獲得してベストナイン、ゴールデングラブ賞、MVPを獲得した。

そしてノーザンリーグの新人賞には太鳳が輝いて投手として200回46失点15勝5敗220奪三振防御率2.02

野手として450打数120安打本塁打20、60打点15盗塁打率0.267の成績で1500万円アップ3000万円でサインした。

この年に引退した香菜子のように投打の2刀流で活躍した選手には桃井賞が新設され、初代の桃井賞は太鳳が受賞した。

表彰式の帰りに香菜子は太鳳を呼び、これからは太鳳ちゃんがプロ野球界を引っ張っていってね。日本シリーズでの太鳳ちゃんとの対決は楽しかったよ。

香菜子は太鳳にプロ野球界のバトンを渡して選手としてグラウンドを去った。


プロ通算成績

香菜子

投手685回148失点500奪三振

82勝17敗150ホールド270セーブ 防御率1.94

野球として3390打数1300安打50本塁打(うち49本がランニングホームラン)380打点110犠打打率0.383

広翔2812打数922安打193本塁打558打点

2盗塁打率0.327

陽菜美

521回181失点奪三振430

43勝31敗113ホールド47セーブ 防御率3.12

陽凛

1034回256失点奪三振1062

80勝40敗防御率2.22

太鳳 投手200回45失点奪三振220

15勝3敗防御率2.02

野手450打数120安打20本塁打60打点15盗塁 打率0.267(1年目)

伊東280打数90安打12本塁打48打点8盗塁

打率0.321(1年目)

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