プロ野球選手

入寮

年明けすぐに入寮になるため、年末は香菜子の家に広翔、陽菜美、陽凛、恵美、恵、莉子が集結して莉子はこうやってみんなで集まれるのもこれで最後かと思うと何だか寂しいなと話していた。

恵はみんなのユニフォーム姿をテレビで観たよ。ホントにプロ野球選手になったんだなって改めて実感した。これから大変なこと多いと思うけど何かあったら私たちにも連絡してきていいよと恵と莉子は4人に伝えた。

陽菜美と陽凛はいつも無関係な私たちまでお邪魔してすみませんと言うと結菜と恵美は今さら何言ってるの、私たちにとっては2人もファミリーだと思ってるからそんなよそよそしい感じじゃなくて家にいる時と同じような感じで全然いいんだよ。

結菜は宅配で寿司とオーブルを頼みみんなで食べていた。

香菜子はこうやって集まれるのも少ないことだしみんなで写真を撮ろうと提案した。恵美はでも携帯で全員分写すのは難しくない?

陽凛はカバンからあるものを取り出し、これを使えば問題ないですよとスマホの自撮り棒をスマホに取り付けて撮影した。

陽凛は写真を取り香菜子、広翔に写真を送ると陽菜美は携帯替えたばかりで連絡先消えちゃって……。陽菜美は連絡先を改めて陽凛と交換し、陽菜美はSNSで香菜子、広翔、陽菜美、陽凛、伊東の入っていたグループに改めて参加した。

香菜子は結菜の言葉を聞いて陽菜美と陽凛を桃井家ファミリーに2人を招待した。2人は結菜に香菜子ちゃんから桃井ファミリーのグループに招待されましたが参加してもよろしいですかと尋ねた。

結菜はいいよ、私たちにとって陽菜美ちゃん、陽凛ちゃんは縁のゆかりもないけどファミリーだと思ってるからさ。逆にこんなこと言ったら2人に失礼かな。

いえ、そんなことはないです。お言葉に甘えて参加させてもらいますと陽菜美と陽凛は桃井家ファミリーに加入した。

年が明けて香菜子はキャラクターのぬいぐるみ、広翔はバット1本、陽菜美は新調したグローブ、陽凛はウォーターサーバーとそれぞれ持ち込んで入寮を済ませた。


新人合同練習

年が明けて香菜子、広翔、陽菜美、陽凛はそれぞれ2軍の練習場で新人合同練習に参加していた。陽菜美の入団した川崎ファルコンズと陽凛の入団した福島いわきレイクスは2人を含めて全員高校生でその中では群を抜いており陽菜美と陽凛は1軍キャンプに参加をするのではないかと囁かれていた。

そして香菜子、広翔のびわ湖ビクトリーズは高校生の指名は香菜子と広翔のみで3位から6位までは大学、社会人卒でキャッチボールや素振りの様子を見て度肝を抜かれた。

香菜子は広翔にやっぱりプロ野球はレベルが高いね、私3年後とかにはいないかも……。

広翔は全部で勝とうとしてもダメだ。何か1つでも突出したものが香菜子にはあるはずだ。俺にはないものを香菜子は持っている。

新人合同練習が進んで、若手やベテランも合同練習に参加するようになった。

香菜子、広翔は外野を走っていると若手選手、ベテラン選手のキャッチボールをしている姿を見てすごいなと言いながら走っていた。

2月に12球団合同キャンプインするためキャンプの1軍、2軍の振り分けが行われて香菜子、広翔共に1軍キャンプで沖縄で迎える。陽菜美と陽凛は2軍キャンプで宮崎でスタートする。

プロ野球は144試合で4人は1年間戦えるだけの体力をつけないとやっていけないと思っていた。


キャンプ、オープン戦

香菜子と広翔は1軍キャンプに参加してまず驚いたのは練習が始まる前に入念にストレッチをしてケガをしないようにしていた。

香菜子と広翔はプロ野球で始めてのキャンプに参加して2人ともノックを受けていた。すると2人は監督からブルペンに行くように言われてブルペンに向かった。

香菜子はブルペンで20球投げて外を見ると沢山のファンが自分の投球に注目してくれていると思うと嬉しい気持ちだった。

香菜子は投手コーチにキャンプの時はこんなにファンの人は来られるんですか?投手コーチは今年は例年より人が多いよ。JPB初の女子選手、そして左投手のアンダースローは長い歴史でも例が少ないからね。話題性もあってお客さんも桃井がどんなものか気になるって言う話が所々で聞こえてきたよ。

次の日、香菜子はブルペンでストレートを20球投げた後にシート打撃で投げるように言われた。打者3人に対して被安打0、内野ゴロ3つとレギュラー選手から打ち取った。

香菜子と広翔は第1クールを乗り切り、休みがあるものの2人は疲れ果てていた。2人は昼に起き、自主練として近くの公園でキャッチボールや素振り等をして体を動かした。

第2クールに入るとびわ湖ビクトリーズには香菜子、広翔の大物ルーキーを見ようと第1クールの時よりも多くの人が訪れるようになった。

香菜子はブルペンに行き、ストレートとカーブを交えて40球投げるとキャッチャー、コーチ、ファンが口を揃えて"遅い"と言った。

香菜子はシート打撃に行くために歩くとファンの人も一緒に動いてまるでその様子は大名行列のような感じだった。

香菜子は打者6人に投げる予定でストレートにカーブを交えて投げると5人目までのバッターは全然バットに当たらない。6人目広翔が右打席に入ると1球もかすらず三振に抑えた。広翔は香菜子に相変わらずボール遅くて磨きがかかってるな、カーブなんて当たる気がしなかったよ。

2月14日バレンタインデー当日、球団には多くのダンボールが届いた。ダンボールの中にはチョコやクッキーが入っており選手ごとにダンボールで仕分けを球団職員をしていた。そして選手が練習を終えてホテルに戻ると各選手たちにダンボールを渡した。それはルーキーの香菜子、広翔も例外ではない。

香菜子はダンボールを受け取ると球団職員の人から今年は香菜子ちゃん宛が1番多かったよ、男の子からよりも女の子からの方が多くて憧れの存在なんだなって思ったよ。

香菜子はダンボールを開けるとチョコやクッキーの他に手紙が何通か入っていた。

手紙を読むと中学の時から応援してます、野球に直向ひたむきな姿に感動しました。実際に球場で香菜子ちゃんのプレーを見て私も野球を始めました。

香菜子は手紙を読んで自分のプレーを見て感動したとか野球を始めましたという手紙の内容には嬉しく涙を流した。

翌日、びわ湖ビクトリーズは紅白戦が行われ無料開放で多くの人が球場に来ていた。注目は香菜子で若手選手やベテラン選手に対してどのようにピッチングをするのかが期待されていた。

紅組の香菜子は7回からマウンドに上がり、白組は代打で広翔が告げられてルーキー対決でスタンドからは大きな声援が送られていた。

広翔は大きくフォームを崩されピッチャーフライに抑えると監督から打席に行くように言われ、香菜子は左打席に立った。香菜子はスイングするものの白組の投手の球威にまけてサードゴロで全力疾走で内野安打となる。

次の日バッターのところで香菜子は盗塁を決める。ピッチャーが2球目を投げると再び香菜子は3塁に走り、バッターはライト前にヒットを打つと香菜子は一気にホームに帰ってきてセーフとなった。監督を含めた首脳陣、スタンドにいるファンから足速いな〜、2刀流をしても面白いんじゃないかと話が出た。

試合後に監督は香菜子を監督室に呼び出した。

今日のピッチング、何よりも走力に魅力を感じて桃井を2刀流として考えているけど桃井は2刀流に興味あるか?

香菜子は開口一番にチャンスがあるならば2刀流でもなんでもやります。監督はオープン戦で外野とリリーフとして起用するから準備しておいて欲しいと伝えた。

香菜子、広翔は1軍キャンプを乗り切ってオーブン戦に移っていく。オープン戦の初戦、陽凛の所属する福島いわきレイクスで香菜子、広翔、陽凛はベンチスタートだった。

5回表陽凛がマウンドに上がり、打者2人を抑えて2アウトでびわ湖ビクトリーズの監督は代打で広翔を送る。陽凛対広翔のプロで初対決となり広翔がライトオーバーの2塁打を放つ。

6回表代打で香菜子が登場すると歓声が起き、陽凛との対決でショートゴロで香菜子は間一髪でアウトとなった。6回裏香菜子はマウンドに上がる。香菜子はストレートとカーブを武器に3人で抑えた。監督は香菜子にこの後はゆっくりベンチで休んでほしいと言うと香菜子はまだまだ行けます。

監督は気持ちは分かるが他の選手も見たいから後は試合見て勉強して欲しいと伝えた。

香菜子と広翔はベンチで試合を見て、試合は5対2でびわ湖ビクトリーズが勝利した。

オープン戦が終わり、開幕2週間前、びわ湖ビクトリーズはミーティングルームに監督、コーチ、選手が集められた。

監督はコーチと協議した結果、開幕1軍のメンバーを発表する。背番号と名前を呼びあげていった。22番桃井、27番滝沢と高卒ルーキーの2人は開幕1軍を掴んだ。最後に監督はあくまでも現段階ではこの布陣で行くが2軍の選手もいくらでもチャンスがある。

他球団では川崎ファルコンズの陽菜美、福島いわきレイクスの陽凛も高卒ルーキーながら開幕1軍となる。

3月になり、びわ湖ビクトリーズ対川崎ファルコンズとの開幕戦のチケットが販売が開始された。香菜子は結菜に電話をかけた。

結菜が電話に出ると香菜子久しぶりだね、どうしたの?あ、ママ?私開幕1軍が決まって開幕3連戦が川崎ドームでファルコンズとの試合があるからチケット買って送るから見に来て欲しいな。結菜は香菜子が試合に出るかは分からないけど広翔君のお母さんとおばあちゃん達と行くね。チケットはこっちで買うから大丈夫だよ。

結菜は恵と莉子に2人が出るかもしれないからと誘い、チケットは当日渡すと話した。


開幕

球春到来となるプロ野球が開幕した。川崎ドームでびわ湖ビクトリーズ対川崎ファルコンズの試合が行われ、結菜を始めとする桃井ファミリーは川崎ドームに詰めたかけた。

開幕セレモニー等を終え、両チームのスタメンが発表された。

びわ湖ビクトリーズ6番センター桃井と電光掲示板に表示されると桃井ファミリーは誰よりも抱き合って喜んだ。

2回表、6番センター桃井とコールされて香菜子は左打席に立つ。初球、セーフティーバントで内野安打をもぎ取る。

香菜子が足が速いことを警戒してファルコンズは7番打者のところで2球外して3球目、香菜子は外されるものの盗塁を決める。

7番打者はフォアボールで0アウト1、3塁で8番打者が犠牲フライで香菜子はホームを踏む。

回が進み9回裏ウグイス嬢が選手の交代をお知らせします、センターの桃井がピッチャー、センターに加藤に代わります。

香菜子はマウンドに行き、3者連続三振に取りってびわ湖ビクトリーズは開幕戦を5年ぶりに勝利した。香菜子はインタビューとしてお立ち台に立った。

インタビュアは開幕戦で初出場、初安打、初登板、初セーブと投打共に活躍おめでとうございます。

香菜子はありがとうございます。インタビュアはとてもルーキーとは思えない活躍で緊張しませんでしたか?香菜子は緊張しましたが思い切ってやるだけだと思いました。インタビュアは最後にスタジアムに来てる人、テレビで観ている人に一言。

「私は野球の華といえばホームランや速いボールを投げることだと思いますが私にはそれが出来ません。だからこそ遅いボールを極め、たとえ内野ゴロでもボールより先に1塁をかけ抜ければ塁に出れる。そうやって私は野球をやってきました。野球に限らず誰しも得意なこと、好きなことあると思います。それを大事にしてください。最後に私のプレーを見てテレビで応援したり球場に来て応援したりしてもらえると嬉しいです」

試合後に結菜からメールでインタビューに感動したよ、近くにいた小学校上がる前の男の子や女の子が香菜子みたいな野球選手になりたいって言ってたよ。

次の日にテレビでインタビューの内容が放映されており、野球を知らない人にも心を打たれた人が多くいた。

第3戦、7回表代打で広翔が打席に立ちセカンドゴロで終わった。

その後、香菜子と広翔は高卒ルーキーながら試合に出続けて活躍して月間MVP候補が発表された。

そして候補の中には香菜子が投手、野手両方でノミネートされていて香菜子自身も驚きながら選ばれたらいいなと思っていた。5月の中旬に3、4月の月間MVPが発表されて香菜子は投手、野手両方で選ばれた。

香菜子はインタビューで投手、野手片方でも嬉しいのに両方で選ばれてまさかすぎて言葉に出来ない気持ちでいっぱいです。

広翔は主に代打が中心でその後守備につくことが多かった。陽菜美と陽凛は開幕1軍を掴めなかったものの5月に1軍デビューを果たす。4人はプロ野球の世界で活躍し、6月に入った。

そして広翔、陽菜美、陽凛はフレッシュオールスターの選手にノミネートされていた。ファンの人たちはあれ!?香菜子の名前がないのはどうしてなのか、ケガでもしたのかなと思う人もいた。実はそうではなく香菜子は1軍のオールスターの方にノミネートされていた。

6月下旬、先にフレッシュオールスターのファン投票が行われ広翔、陽菜美、陽凛が選ばれた。続いて7月上旬、1軍のオールスターで香菜子は投手と外野手両方で選ばれた。

先にフレッシュオールスターが行われて広翔、陽菜美、陽凛それぞれ出場してMVPは陽凛が獲得した。

そして次の日1軍のオールスターが行われ香菜子はサウザンリーグ1番センターとして掲示板に表示された。香菜子はヒットを打つと盗塁を決める。

9回表香菜子はマウンドに向かった。ノーザンリーグの3人をストレート、カーブ、そして香菜子の代名詞の「かなちゃんボールニコニコ」を投げるとキャッチャー、審判、ノーザンリーグの選手、スタンドのファン、テレビで観ている人全員が球速不能の文字に驚いていた。


オールスター明け

オールスターが終わり、休養日が設けられていてその間にびわ湖ビクトリーズの応援団は急ピッチである選手の応援歌を作っていた。開幕前からルーキー香菜子の応援歌を考えていたが中々しっくりくるものはなく、オールスターにも選ばれて応援歌がないのはという声が球団の方に声が挙がっており作成することになった。紆余曲折を経て応援歌が完成し、ファンに配布するため印刷をしていた。

「明日に向かってベースを駆け抜けろ

びわ湖にきらめく勝利の女神となれ我等の女神その名は桃井香菜子」

オールスターが明けた最初の試合、試合前に香菜子が練習しているとスタンドでは応援歌の練習をしていると香菜子は嬉しく思った。

応援歌が作られて初めての試合で香菜子は1番センターで出塁すると4打数0安打でせっかく応援歌を作ってもらったのにも関わらずヒットを打てずにいた。

香菜子はSNSでグループ桃井家ファミリーにせっかく応援歌を作ってもらったのに打てなくて申し訳ないなと思ってと連絡をいれた。

それを知らなかった陽菜美、陽凛は香菜子ちゃんもう応援歌出来たの!?スゴいね。やっぱり私たちより1歩先にいってる感じがあるね。

莉子からは香菜子ちゃんがきっかけで私も野球を知ったけど3割打てると一流って聞いたよ。素人から言われても慰められても嬉しくないかもしれないけど追い込まないようにね。結菜から結果も大事だけど楽しむことが1番大事だよと返信がきた。

広翔から電話がかかってきて桃井家ファミリーのやつ見たけど、俺より試合出てる上に応援歌まであるって凄いことでしょ。よしまた一緒に自主練しようなと電話を切った。

びわ湖ビクトリーズはホーム3連戦で初戦の前に2人は早めにびわ湖ドーム入りしてストレッチ、ランニング等入念にしてキャッチボールをして素振りをしていた。

互いのフォームを確認していると広翔は香菜子に指摘した。香菜子、バットが下から出てるからもう少し上から振るようなイメージでと伝えた。

香菜子は広翔に言われるがまま振ると広翔からさっきよりいい感じだよ、後で打撃コーチにも見てもらって。

2人が練習して1時間、他の選手たちもドームに続々と入ってきた。香菜子は打撃コーチを呼びスイングを見てもらった。コーチはこの前の試合よりいいスイングしてるな、今日もリリーフで投げるかもしれないから先にフリーバッティングをするように言った。

香菜子は快音なバッティングとバントの練習してブルペンに向かった。

ブルペンで30球投げて選手一同はミーティングルームに呼ばれ、対戦相手の松山オレンジスターズの相手投手のVTRを見ていた。

オレンジスターズの投手はエースの立花でビクトリーズは苦手意識を持っており立花からチーム全体でも通算打率2割と抑えられていた。立花はケガでしばらく2軍でこの年初登板で1番の香菜子は対戦成績がない。

監督は香菜子に塁に出て揺さぶりをかけて欲しいと頼んだ。

その後スタメンが発表されて試合が始まった。1回裏、1番センター香菜子はボール球を見送って手元でノビがあると思いバットをいつもより短く持った。香菜子はバットを振るとライト前にヒットを放つ。

対戦するチームは香菜子が塁に出たら走られるからと警戒している。相手チームは牽制を多くしたりしているが香菜子はその中をかいくぐって盗塁を決める。

2番打者のところで初球に香菜子は盗塁を決めて2番打者がエンドランで長打を打つと香菜子は一気にホームに帰ってきた。監督は香菜子とハイタッチしてさすが勝利の女神と崇めた。

広翔のアドバイスもあり、香菜子は3安打猛打賞で9回を3人で締めた。びわ湖ビクトリーズは6対2でオレンジスターズに勝利し、1位のオレンジスターズに3ゲームに縮めた。

そして香菜子はルーキーながら投打の活躍を見せて新人賞のタイトルも見えてきたとコーチから言われ、香菜子は最後に何かタイトルが取ることが出来ればいいなと思うぐらいに思ってますと強気の発言をした。

8月が過ぎて9月に入りシーズンも佳境になってきた。

びわ湖ビクトリーズは1位の松山オレンジスターズにゲーム差0でホームびわ湖ドームに最後の3連戦を迎える。1勝1敗で迎えた第3戦びわ湖ビクトリーズの天敵立花が立ちはだかる。1回裏、1番センター香菜子が初球のカーブを振り抜いた。ボールは外野フェンスを直撃して打球が思わぬところに飛んだのを確認し、香菜子は2塁、3塁ベースを駆け抜けてホームに返ってきた。

JPB史上初の先頭打者初球ランニングホームランをこの大事な試合で決めて回は9回表、香菜子が3人で締めてこの年初めてびわ湖ビクトリーズは1位に名乗り出た。

次のカードびわ湖ビクトリーズが3連勝し、松山オレンジスターズが3連敗すると1位のビクトリーズに優勝マジック10が点灯することになる。

びわ湖ビクトリーズは3連勝し、優勝マジック10を点灯させた。松山オレンジスターズは歯車が狂い始め前カードびわ湖ビクトリーズから6連敗でびわ湖ビクトリーズは破竹の6連勝でマジック4で10年ぶり2度目の優勝が目の前までやってきた。

しかしビクトリーズは同一カード3連敗し、中々優勝を決められずにいた。一方でオレンジスターズは1勝2敗でビクトリーズのマジックは2となっていた。次の試合ビクトリーズが勝ち、オレンジスターズが負けるとびわ湖ビクトリーズの10年ぶり2度目の優勝が決まる。


優勝マジック2

同時刻に川崎ドームで川崎ファルコンズ対松山オレンジスターズ、びわ湖ドームにてびわ湖ビクトリーズ対長崎佐世保チャンポンズの試合が行われており、先に川崎ドームの試合2対0でファルコンズが勝利した。

びわ湖ドームの試合、スタメンに香菜子の名前がなかった。さすがにファンも今日は出てこないだろうと思った。

8回裏ビクトリーズは1アウトランナー1塁で監督が出てきて審判に選手の交代を告げた。誰もが代打が出てくると思われたが、ベンチから出てきたのは代走起用の香菜子だった。

ドームは溢れんばかりの声援が香菜子に送られ、1塁ベースにつく。

6番打者の初球、香菜子は盗塁を決めた。2球目に6番打者が打った打球はスタンドに叩きこみ均衡を破る2ランホームランで先制した。

びわ湖ビクトリーズの最後のマウンドにはいつもいたとアナウンサーが言うと香菜子が最終回のマウンドに向かう。ライトフライ、三振と簡単に2アウトに取ると3人目にストレートを投げるとピッチャーフライに打ち取りびわ湖ビクトリーズは10年ぶり2度目の優勝を果たす。

インタビューに呼ばれて香菜子は語った。

ルーキーの私を起用してもらった監督に感謝です。スタンドの皆さん、テレビやラジオの皆さん優勝しました。私たちはこの勢いのまま初の日本一になります。


久しぶりの帰省

プロ野球全試合の日程が終了し、日本シリーズまで約2週間の期間が空く。球団から3日間の休みを通達されて香菜子は結菜に電話して東京に帰ることを伝えた。香菜子は広翔と共に家に帰ると桃井家ファミリーが集まっていた。

そこには陽菜美や陽凛がいて、2人とも1年目で日本シリーズに出れるなんてスゴいね。私たちももっと頑張らないといけないねと話していた。

恵美は陽菜美ちゃん、陽凛ちゃんが日本シリーズに出る2人を意識するのは分かるけどオーバーワークしてケガしたら元も子もないよ。

恵は高校時代の話をした。私立の高校に一般で入って水泳の記録会で成績を出して水泳部に入ることが出来たけど、特待生で入ってきた人を超えないと試合に出れないと思って部活の他に市民プールに行って自主練で只管(ひたすら)泳いでたんだけど終わる時間が近づいたからプールに上がった時に意識を失って入院することになったの。退院して再び泳いでみるとそれまでの泳ぎには見る影もなくて立ち去るように水泳を辞めたの。だから香菜子ちゃん、広翔君にも言えることだけどオーバーワークだけは絶対にしないように。暗い話してゴメンね、みんなでご飯食べようといってキッチンからカレーとサラダ、惣菜を持ってきた。

8人は食卓を囲んで食事をしてるが野球の話で終始盛り上がった。恵と莉子はそれまでプロ野球をしっかりと見る機会がなかったが香菜子、広翔、陽菜美、陽凛をテレビや球場で見るうちに球場の一体感、野球の奥深さを知ったよ。チケット外れて現地行けないけどテレビで応援してるよ。香菜子と広翔はありがとうございますと言って8人はそれぞれの部屋で寝た。

次の日、香菜子はテレビの音で目が覚めてリビングに向かうと待ってましたかのように7人がソファー2台に座っていた。

結菜は広翔に録画を再生するように言われ、再生をした。香菜子は思わず赤面して早く録画を止めるようにいった。

7人が観ていたのは開幕戦での香菜子のインタビューだった。香菜子は改めて見て恥ずかしい思いだったが莉子から近所の小学生が野球チームに入りたいって言う声聞こえて香菜子ちゃんの言葉が効いてるね。

お昼を食べて香菜子と広翔は夕方に今から寮に戻るからまた来るねと言って2人は駅に向かった。


日本シリーズ、そして契約更改

香菜子と広翔は日本シリーズ出場するために必要な登録選手に名前があった。日本シリーズはサウザンリーグ覇者びわ湖ビクトリーズ対ノーザンリーグ覇者福島いわきレイクスで1戦、2戦はびわ湖ドームで3戦、4戦、5戦はいわきスタジアムで6戦、7戦は再びびわ湖ドームに戻ってくる。先に4勝した方が日本一でビクトリーズは4戦全勝でまた帰ってこないようにしようという思いだった。

日本シリーズ初戦、香菜子と広翔は打撃の調子が良くなく、香菜子はブルペンで投げてもボールが走っていないために2人ともベンチスタートで試合が始まった。

びわ湖ビクトリーズは1戦、2戦香菜子と広翔をベンチで準備させていたが負けていわきスタジアムに乗り込むことになる。

3戦目に香菜子はセンター、広翔はキャッチャーでスタメンに名を連ねる。香菜子は3安打6盗塁、広翔は2安打3打点の活躍で6対4でびわ湖ビクトリーズが勝利した。4戦目は5対0で完封負けで第5戦香菜子のサヨナラスクイズで2対1で2勝3敗でビクトリーズはびわ湖ドームに戻ることになる。

第6戦12対6でびわ湖ビクトリーズが勝利し、最終第7戦を迎えることになる。第7戦1番センター香菜子が塁に出て盗塁を決めるが中々点が入らない。7回裏、7番打者がフォアボールで塁に出ると8番打者が送りバントを決める。9番打者のところで代打広翔が送られてショート内野安打を放つ。そして1番センター香菜子が打席に入る。香菜子はバットを短く持って振るとサードダブルプレー崩れの間に先制した。

8回は両チーム共に無得点で9回表、マウンドに香菜子が向かった。ランナー2人を出し、キャッチャーの広翔はタイムをかけた。ストレート狙われてるからカーブを中心で組み立てる。場合によっては"アレ"を出すかもと言って戻って行った。

試合が再開されて初球カーブを引っかけてダブルプレーで2アウトランナー3塁となる。ストレート、カーブを投げて2ストライクと追い込む。3球目「かなちゃんボールニコニコ」を投げると見逃し三振に取り、びわ湖ビクトリーズは初の日本一に輝いた。

日本一のインタビューで香菜子は皆さんの応援のおかげで日本一になれました。来年以降も桃井香菜子、そしてびわ湖ビクトリーズの応援よろしくお願いしますと頭を下げた。

シーズンの開幕戦や優勝インタビューの時に比べたらいささか淡白な感じにもみえる。

日本一になり立役者の香菜子もビールかけに参加しようと思ったが未成年で参加出来ず、未成年の選手だけ集まってリンゴジュースをかけあっていた。

そしてタイトルが発表されてノーザンリーグの新人賞に本宮陽凛が選ばれ、サウザンリーグの新人賞として桃井香菜子が受賞した。

香菜子はその他に投手として120回20失点90奪三振30ホールド30セーブ防御率1.50

野手として350打数100安打2本塁打(ランニングホームラン)50打点40犠打120盗塁打率0.285

1年目から最多勝、ホールド賞、セーブ賞、内野安打賞ら盗塁賞、MVPと数々のタイトルを取った。

香菜子、広翔、陽菜美、陽凛の4人はプロ1年目のシーズンが終わり初めての契約更改に移っていく。

4人の中で最初に契約更改が行われ、陽凛は25回6失点5勝5敗30奪三振防御率2.16の成績で1500万円から100万円アップの1600万円で1発サインをした。次に3日後、陽菜美の契約更改が行われ、1軍試合出場なしで現状維持の1200万円でサインした。

2週間後、香菜子と広翔は球団に来るように言われてドームに向かった。まず広翔が契約更改を行い22打数7安打2本塁打10打点打率0.318

200万円アップの1200万円でサインをすると見知らぬ人が広翔に申し訳ないけど会議室桃井選手を呼んできてほしいと伝えた。

香菜子は初めての契約更改に緊張していたがトビラを開けた広翔が香菜子を訪ねて来てる人がいて会議室に来て欲しいってさ。

香菜子は契約更改をする前に会議室に向かった。そこにはJPBのコミッショナー前田と秘書の鈴木という人が座っていた。

香菜子ちゃんはじめまして、JPBコミッショナーの田中です。今日はある話をするためにここに来たと話をした。香菜子は話ってまさか私クビになるんですか、そんな……。

新人賞にMVP取った選手をクビにするなんてそんなことしないよ。

メジャーから※15ポスティングシステム(コミッショナーが許可を出せば一定期間経っていなくてもメジャーに挑戦することが出来る)でメジャーに行ってほしい。その話を聞いて私は超えられる記録を超えてからメジャーに行きたいので今すぐには行きませんと頭を下げた。香菜子は最短メジャー行った人は何年目ですか? 秘書の鈴木は資料を出して5年目と答えると私もその時期までは日本でプレーします。コミッショナーの前田はそっか、香菜子ちゃんの気持ちはよく分かったよ。メジャーからの打診は私から断っておくよ。契約更改行ってきなと香菜子を送り出した。

香菜子は契約更改を行い2000万円アップの4000万円で1発サインをした。

広翔は香菜子が出てくるのを待っていた。香菜子は広翔を見つけ、あれ広翔もしかして私が出てくるの待ってたの?広翔はそうだよ、ここで立ち話してたら邪魔だからファミレスに行こうと誘った。

香菜子と広翔はドーム近くにあるファミレスに向かう。広翔はさっき契約更改の前に会議室で何を話してたの?香菜子はポスティングでメジャー行かないかって言われたけど断った。相変わらず香菜子は言うことが違うな、メジャーには興味ないってこと?

香菜子はメジャーには興味あるよ。でも私はプロ野球選手になるために今迄やってきたのに1年ちょっと成績残したからってメジャー行ったら小娘が自惚れるなって思われるならこの成績ならメジャーでも成功出来る可能性があると思われてからメジャー行きたいからと言った。それより何か食べよう。

香菜子はオムライス、広翔はカレーとそれぞれ注文をした。2人で話していると小学生ぐらいの男の子が香菜子に握手を求めてきて、香菜子は快く受け入れた。気がついたら香菜子、広翔に握手やサインを求める人たちで長蛇の列が出来ていた。注文の品が来て今から食べるのでまた後で対応しますと香菜子は対応した。

2人が食べ終わる頃には周りもざわつき対応出来ないと思い、サインを飾り居る人たちに対してファン感謝祭があるのでその時にサインしたり2ショット撮るのでとお願いした。

11月下旬に香菜子と広翔はファン感謝祭に参加し、ファンと共に的当てやパン食い競走等で楽しんだ後にサイン会が行われた。

どの列にもある程度並んでいるが1列だけ長蛇の列が出来ていてその列は香菜子でサインが終わるまでになんと2時間もかかった。

12月になり香菜子と広翔はシーズンの疲れを東京の実家で過ごすことにした。

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