高等学校

高校入学

北岡高校1期生として香菜子、広翔は入学式が終わり2人はスポーツ科で同じクラスとなった。香菜子は広翔に北岡高校の制服はブレザーだと思ったのにこんなかわいいセーラー服だと思わなかったよ。

広翔はそれならよかったけど、俺らが北岡高校に来た意味を忘れるなよ。

香菜子は分かってるよ、北岡高校で予選に勝って庚午スタジアムに出場することでしょ、忘れるわけないよ。陽菜美ちゃんと伊東君と戦うには同じ東京だけど代表が違うから夏の大会は勝ち上がらないとそれに福島の陽凛ちゃんとも会えないってこともね。

広翔は忘れてないならよかった。授業後に初練習の前に軽くキャッチボールしようぜと言った。放課後、2人がキャッチボールをしていると監督は新入部員か、関心だな。

新入部員とそっちのかわいい女の子はマネージャー希望かな?香菜子はかわいい女の子つて私のことですか?ありがとうございます。

広翔は調子に乗るなと強いボールを香菜子に投げ返した。

監督は間違いだったら申し訳ないけど北岡中学校の桃井香菜子さんと滝沢広翔君?

広翔はそうです、僕たちここのスポーツ科ですと挨拶をした。その後1年生が香菜子、広翔合わせて15人が勢揃いした。

そして改めて香菜子と広翔は挨拶をすると野球を初心者だと思っていたがこの中の10人はシニアやボーイズに所属していた選手が私立を倒して庚午スタジアムに行きたいと考えて北岡高校に入学してきたものが多かった。

これを聞いた香菜子と広翔は創部1年目、いや創立1年目に庚午スタジアムに出場する快挙も夢ではないと思っていた。

ノックを受ける際に香菜子はセンター、広翔はキャッチャーに付いてノックを受けていた。監督はホントに創部1年目のチームなのかと驚いていた。香菜子はセンターの深いところからノーバウンドで広翔に返球した。速球を見た監督やシニアやボーイズ出身の選手たちも驚いていた。監督はキャッチャーの広翔に桃井は長い1試合で最長何イニング投げた?広翔は桃井は中学の時、1年生の時にケガをして先発しても3回ないし4回で基本的にはリリーフで投げてました。

監督はそうなると何人かピッチャーが出来る人を作らないといけないな。監督は部員を1度呼び出し、今までピッチャーやったことのある人はいるか?その中にはシニア、ボーイズでピッチャーの経験していたと井上、広沢、向田の3人が手を挙げた。

次にキャッチャー経験があると田村が手を挙げた。その他の部員にも15人と人数が少ないから試合中不測の事態を考えてポジションは複数守れるようにして欲しいと言った。

北岡高校は1年生しかいないから香菜子をキャプテン、広翔を副キャプテンに就任して2人の高校野球が始まった。


春季大会

夏の大会と比べて春季大会は入場料を取らずあまり注目されないイメージがある。しかしそうではなく※11シード権(春の大会で成績を残すと夏の大会は1回戦からではなく、2回戦、3回戦から登場することになる)を獲得したり、前評判の高い新1年生を起用してみたりと春季大会を重点に置いてるチームも多い。

北岡高校は新設校ながら香菜子、広翔が入学したとウワサが東京全土に広がりある程度の成績を残すと予想されていた。

北岡高校は1回戦は西葛西高校との対戦で140キロ左腕の向田がマウンドに上がり、香菜子は打撃の調子が悪くベンチスタートだった。

向田は1回5失点と大乱調で2番手ストレートが130キロだがコントロールのいい技巧派の井上がマウンドに上がる。西葛西高校の勢いを止められず3失点する。

北岡高校は6回まで3安打に抑えられていた。7回裏3番広翔がホームランを打つものの北岡高校は8対1で7回※12コールドゲーム(5回終わって10点差、7回終わって7点差を離れていたら強制的に試合終了すること。但し予選の決勝、庚午スタジアムではコールドは適用されない)で北岡高校はまさかの初戦敗退で終わる。

試合が終わりキャプテンの香菜子は私が今日に合わせて打撃の調子を上げて試合に出ていたら試合の状況が変わっていたかもしれない、みんなごめんなさいと頭を下げた。監督は桃井が謝ることじゃないよ、俺が早い段階でリリーフなり代打で桃井に準備をさせるべきだった、みんなゴメン。

香菜子は監督に東京を勝ち抜くには何回勝つ必要ありますか?東京は出場校が多いから東東京と西東京で代表があるけど1回戦からだと8回勝たなくてはいけない。そのうち私立が8割を占めて庚午スタジアムに出場したのは5校しかない。

香菜子はそうなるといかに私立を倒すかだね。だがこの試合北岡高校は初の公式戦で緊張して本来の力を発揮出来なかっただけだ。みんなここからがスタートだ。

北岡高校はシード権を獲得出来なかったため、夏の大会1回戦からの登場することになる。


監督とキャプテン

試合翌日から夏の大会に向けて練習をしていた。監督はキャプテンの香菜子と話し合っていた。桃井はこのチームが勝ち上がるためにはどうするべきだと思う?

私はホームラン打って点を取ることも時には大事だと思いますが基本はみんなが※13スモールベースボール(バント、盗塁、エンドラン等場面場面によって作戦を変えること、機動力野球とも言う)がみんな出来れば勝てるのではないかと思います。

監督はそうだな、打撃練習や実戦形式の練習は主に重点にしてやるか。私はピッチャーとホームラン打たれるよりもエンドランで繋がれる方がイヤですね。

後はピッチャー陣だな、夏は暑いからスタミナが消耗する。いくら4人いるとはいえ、させるつもりはないが4人が先発完投出来るだけのスタミナはやはり必要になってくる。ピッチャー陣は先に打撃練習をして走り込みとブルペンでの投げ込みを中心になってくる。桃井には是非ピッチャー陣を引っ張っていってほしい。香菜子は分かりましたと言った。

そして香菜子は井上、広沢、向田を連れて校舎を走りに行った。時には練習の大半を走り込みに時間を割いて残り時間をブルペンで投げ込みをしていた。

数日後キャプテンの香菜子は夏の大会の抽選会に行くため、授業後に制服を着たまま北岡公民館に向かった。抽選会は3回戦から登場する第1シードの高校からクジを引き、第2シード、第3シードとクジを引いて最後にシードなしの1回戦の高校がクジを引くシステムだった。香菜子はクジを引き北岡高校15番と読み上げた。

香菜子は座席に戻り対戦相手が決まるのを待っていた。そして北岡高校の1回戦の相手は春の大会1回戦コールド負けした西葛西高校に決まった。

香菜子は北岡高校に戻って監督、部員に1回戦の相手は西葛西高校と決まったことを報告すると部員は同じ相手に2度も負けるか、今度は俺たちがコールド勝ちしようと闘志を燃やしていた。

監督は夏の大会に向けて背番号発表をして1番井上、2番滝沢、3番向田、5番広沢、8番桃井、12番田村と発表された。


夏の大会

1回戦西葛西高校戦1番センター香菜子、3番キャッチャー広翔、4番ファースト向田と発表された。春の大会に出場のなかった香菜子はついに高校野球でのベールを脱ぐことになる。試合は12対0と5回コールド勝ちを収め、香菜子は5回にマウンドに上がり投打共に活躍をした。

北岡高校は公式戦初勝利をしたが、まだ1つ勝っただけだよ。私たちの目標は庚午スタジアムに行くことでしょ、目の前の1試合ずつ勝っていこうと部員を奮起させた。

2回戦、3回戦共に打ちに打ちまくって10対2、15対5と3試合連続コールド勝ちで勝利した。

4回戦にもなると私立の強豪が登場してくる。北岡高校の4回戦の相手は前年の覇者私立三鷹高校で下馬評では三鷹高校のワンサイドゲームになると予想されていた。

北岡高校は5回にバント、エンドラン等で3点を取り、先発井上が8回まで三鷹高校を8安打打たれてつつも1失点に抑えて9回広沢が締めて3対1で大番狂わせと周囲はいった。

その後、北岡高校は飛ぶ鳥を落とす勢いで準々決勝、準決勝と強豪校を倒して決勝進出を決めた。

決勝の相手はセンバツに出場した新木場高校で春夏出場を狙っていた。相手のピッチャー宮川は既に大学進学が内定している程の投手だった。北岡高校はここまでかと落胆しており、キャプテンの香菜子は後1つで庚午スタジアムだよここまで来たら絶対に勝とうと言った。

いざ試合が始まると北岡高校は宮川から6回まで誰も塁に出ない状況だった。7回に1番香菜子がセーフティーバントで出塁する。ヒットが打てないなら出たランナーをいかに得点に繋げるかってことを考えていた。

2番打者の初球、香菜子は盗塁を決めてランナー2塁として2球目、ファーストゴロで打って1アウトランナー3塁で3番広翔がタイムリーを放つ。4番向田、5番は三振に倒れた。

8回に向田、9回香菜子が3人で抑えて1対0で北岡高校は創立1年目で東東京代表として庚午スタジアムの進出を決めた。

香菜子は陽菜美、陽凛それぞれに庚午スタジアム出場を決めたことを報告すると陽菜美、陽凛から私たちは予選で負けちゃったから春、来年の夏にまた会おうと香菜子にメールを送った。


庚午スタジアム

8月になり49代表が決まり、各高校ごとに庚午スタジアムでの練習が行われた。北岡高校の部員は電車で来るものや自転車で来るもの、歩いてくるもの様々いた。香菜子と広翔は歩いてスタジアムに向かった。

北岡高校のスタジアム練習の翌日、開会式で広翔は香菜子についに明日から開幕するんだなと話していた。

翌日、開会式で49代表校が集まり香菜子は見たことのある選手が何人もいてホントに来たんだと改めて思った。1時間が経ち、北岡高校は開会式が終わり開幕試合に向けて準備をしていた。

1回戦神奈川県代表の湘南学院高校との試合で先攻北岡高校の1番香菜子が打席に入る。初球、湘南学院高校のピッチャーが投げたボールが振りに行った香菜子の手首に当たった。その瞬間、香菜子は思わず「いた〜い」と叫んだがその声はサイレンの声にかき消されテレビを観ている人やスタジアム全体が騒然とした。

広翔はコールドスプレー持ってきて香菜子の手首にスプレーをかけた。広翔は香菜子に手首大丈夫か?

香菜子は痛むから臨時代走お願いしたいと広翔に伝え、広翔は1塁塁審に臨時代走をお願いした。香菜子はベンチに戻り臨時代走で田村が1塁に向かった。

北岡高校は香菜子が戻って来ることを信じてヒットやフォアボールで出塁するが得点には繋がらなかった。香菜子はドクターから右手首に骨折しているかも知れないからすぐに病院に行くように。

マウンドに香菜子が上がる予定だったが急遽井上が上がり、センターも控え選手が守備に付いた。監督は病院に行くように言われ、香菜子は結菜にメールして病院に向かうようにした。

香菜子は結菜と共に庚午スタジアムの近くの病院に向かうと全治1ヶ月の骨折と診断されて包帯を巻いてスタジアムに戻った。

ベンチに香菜子が戻ってきて北岡高校の部員は戻ってきてくれてありがとう。このチームには桃井が必要なんだと声を揃えて言った。試合は3対2でサヨナラ勝ちを収めた。エース井上からケガをしたのはチームとして香菜子自身もツラいと思うけど香菜子にはずっとベンチに居て欲しいと頭を下げた。

試合が終わり香菜子は広翔と一緒に帰ろうとしていたら結菜が外で待っていて2人を車に乗せて家に向かった。

結菜は広翔君1回戦突破おめでとう。広翔はありがとうございます、試合直後、香菜子さんがケガをされて驚きました。北岡高校の部員は香菜子さんにベンチにいて欲しいと思います。そして結菜は広翔を家に届けた。

家に着き、香菜子は結菜の前で思わず涙を流し私そんなに日頃の行いが悪いのかなと愚痴をこぼした。結菜は香菜子の頭を撫でてそんなことないよと抱きしめた。

結菜はいつも無邪気で弱音の吐かない香菜子がケガで野球を辞めるのではないかとすら思っていた。

2回戦の那覇農林高校戦の前日、香菜子は陽菜美にあるお願いをするために明日庚午スタジアムに来て欲しいとお願いをしていた。

次の日香菜子は結菜に上手く着替えが出来ないから手伝って欲しいとお願いをした。

パジャマから制服に着替えている時に結菜はケガで香菜子が野球を辞めるのかなって思ったから今日の試合行かないって拗ねるかなって思ったから、香菜子偉いなって思うよ。野球辞めないよ、これでも私チームのキャプテンなんだからと結菜に微笑んだ。

結菜は香菜子を車に乗せてスタジアムへと向かった。香菜子はスタジアムに着き、陽菜美と合流した。陽菜美は事情を説明して中に入れさせてもらい更衣室に向かった。

陽菜美は香菜子ちゃんすごいスタイルいいね、羨ましいな〜と言っていると香菜子は陽菜美ちゃん恥ずかしいからやめてよ。

陽菜美は香菜子ちゃんの笑顔で勝ってきてね。私もスタンドで応援してるよ。

そして香菜子はベンチに行って挨拶をした。監督がスタメンを発表し、メンバー表を香菜子に渡した。

香菜子は監督になぜ、滝沢君じゃなくてなぜ私ですか?

監督は何故ってこのチームのキャプテンは桃井だろ、早く渡してきて。

香菜子はベンチ裏に行き、ジャンケンをして北岡高校は後攻と決まった。

香菜子は試合に出場しないものの声を枯らして部員に応援し、香菜子はベンチに戻ってくる選手に対してタオルを渡したり水分を渡したりとキャプテンだけでなくマネージャーの役割を担った。

北岡高校は3対0で那覇農林高校に勝利した。その後北岡高校は3回戦、準々決勝、準決勝と強豪校を次々と勝利して決勝に駒を進める。

決勝戦の相手は兵庫県の西宮実業高校との対戦で北岡高校は打ちに打ちまくり決勝戦最多得点となる30対2で北岡高校は創立1年目にして庚午スタジアムにて初優勝を飾った。

優勝インタビューとして香菜子にマイクを向けられた。

香菜子は「インタビューで私は1打席、それもデットボールで試合に出られなくなりました。しかし仲間は試合に出られない私の為にも絶対に優勝しようと思い戦ってくれました。来年もこの舞台に帰ってきます」


憧れの存在

夏に庚午スタジアムで創立1年目での優勝を果たし、全国の高校から憧れの存在で東京都は北岡高校を倒さないと庚午スタジアムに出場出来ないと思われていた。

夏の大会が終わると1、2年生の新チームとなるが幸い北岡高校の場合は全員1年生でメンバーもそのままでセンバツも確実視されていた。

北岡高校は秋の23区大会1回戦西葛西高校相手に1対0のサヨナラ負け。その後北岡高校は練習試合でも勝ちに恵まれなかった。

香菜子が道を歩いていると北岡高校野球部の優勝は偶然だった、くじ運がよかったから優勝出来たと心ない言葉が四方八方から聞かれるようになった。

香菜子は道端で話をしているなと軽い気持ちで流していた。世間だけで言われるならまだしもついには学校や教室でも話題となった。

香菜子は授業が終わって次の授業の準備をしていたら後ろの女子が声をかけてきた。

香菜子、最近の野球部なんなの?庚午スタジアムでの活躍はたまたまだったのかなって思うわ。というよりなんで1打席しか立ってない香菜子がキャプテンで優勝インタビューを受けているわけ?おかしくない?

香菜子は思わず教室を飛び出し廊下を走った。廊下を走っていると人とぶつかり、ふと見上げると広翔で香菜子どうしたと聞いた。

もうすぐ授業だから広翔は1度教室に戻ろう、話はお昼ご飯の時に話を聞くからと言った。

授業後、広翔は香菜子をお弁当を持って屋上に呼び出した。

香菜子は広翔にクラスの子にこんなことを言われたと話すとそうか、ツラかったね。何かあれば俺に言ってたな。香菜子はありがとうやっぱり広翔は頼りになるねと言った。

まずは春の大会で勝とうと香菜子と広翔は話していた。


2年生

香菜子と広翔は2年生になり、新入部員が15人入り、新たなスタートを切った。

香菜子はケガが治り世間やクラスメイトに北岡高校野球部の優勝は偶然と言われたことを見返して北岡高校野球部ここにありと言うところを見せたかった。

香菜子は1回戦から投打の活躍で春の大会を制して夏の大会第1シードの権利を得た。

夏の大会に向けて1年生を含め個人のレベルアップを図っていた。

夏の大会を迎え、北岡高校は3回戦から登場して3回戦、4回戦、準々決勝をコールド勝ちで準決勝進出を決めた。準決勝は昨年決勝で当たった新木場高校でどの高校よりも北岡高校を意識していた。

北岡高校は先発広沢は初回に2点を取られ、打線も8回までヒット1本、フォアボール2つと完全に抑えられていた。9回裏広沢はホームランを打つものの反撃はこのままで北岡高校は東東京大会の準決勝で敗退した。

香菜子は思わずベンチで泣いていると広翔が来年また庚午スタジアム行って嬉し涙を流そうと励ました。

半年前、世間やクラスメイトから北岡高校野球部は終わったと言っていた人たちは香菜子の涙を見て感動したよ、来年こそ庚午スタジアムに行ってくれと暖かい言葉をかける人が多くなった。

試合後、香菜子は広翔にカフェに行こうと誘った。球場近くのカフェでパンケーキを2人で食べていた。テレビを見ているとJPBが緊急会見をすると報道されていた。どんな会見なのか気になりテレビに釘付けだった。

そして会見が始まり「近年野球人口が減少に伴いJPB(全ニッポン野球機構)で話し合いある改革に打ち出します。それは※14プロ志願届(高校生、大学生がそれぞれの連盟にプロに入りたい意志を表明すること)を提出すれば男子だけでなく、女子もJPBチームからの指名される可能性がある」

香菜子は会見を観て広翔にもしかしたら私もJPBのチームに指名されたらプロ野球選手になれるってことだよね?

広翔はそうだな、俺も香菜子もまた庚午スタジアムに出場して球団スカウトに欲しいって思わせないといけないね。


最後の夏へ

昨日の会見を受けて北岡高校の様子は一変することになる。朝早く香菜子と広翔は学校に行くと高校には多くのスカウトやテレビ関係者、新聞記者等が訪れていた。彼らの目的は既にドラフト候補に挙がっている広翔の他にJPB初の女子プロ野球選手に最も近いと言われている香菜子を取材する為だった。

香菜子は広翔に先に行くように伝え、メディアには練習後質問に答えると対応した。

練習後に香菜子はメディアからの質問に対して丁寧に答え、ではこれで失礼しますと言って広翔をいつもの公園じゃなく神社に呼び出した。

広翔は香菜子になんでここに呼び出したのか聞くと香菜子は公園での自主練にまで色んな人が来そうだからその前にって思ってさ。広翔は香菜子にあれだけの人から注目されるってすごいな、俺も頑張らないと。

そしてメディアが北岡高校の来る数は日を追う事に増えて行き、全国で香菜子の名を知らない人はいないほど注目される様になった。

秋の23区大会、香菜子は無意識のうちにスカウトにアピールしなきゃという思いが強くなりすぎて3打数0安打でチームも1回戦新川学苑に5対2で敗戦した。


3年生

春になり新入部員が一気に30人も入ってきて北岡高校野球部はいつしか大所帯の部活になっていた。秋から香菜子はスカウトの前で活躍しようと意気込み過ぎて本来のバッティングやピッチングが出来ずにいた。

だが香菜子はスカウトよりも目の前の試合を1つ1つ勝って2年ぶり2度目の庚午スタジアムの切符を手に入れることに集中していた。

3年生になっても香菜子目当てのスカウトやメディアが多く、ウワサではメジャーの日本スカウトが来ているとさえ言われていた。

春の大会1週間前、監督は部員を呼び背番号を発表をするから呼ばれたものは前へ。1番桃井、2番滝沢、3番向田、5番広沢、8番井上と背番号を渡していった。

春の大会北岡高校はリリーフエース香菜子、3番広翔のホームランで準決勝まで全試合コールド勝ち、決勝も12対0で新川学苑を下して北岡高校は最後の夏へ弾みをつける形となった。


最後の夏

梅雨が明けて7月になると強豪の大学から香菜子、広翔に来て欲しいと北岡高校のもとに話がきていた。監督は香菜子と広翔を会議室に呼んで進路について確認をしていた。

香菜子、広翔共にプロ志願届を出します。指名がなかった場合、受け入れてくれる大学や社会人チームがあれば大学や社会人チームがあれば行きますと監督に伝えた。

監督は2人にそうか、その旨を話がきた大学には俺から話をしておくから2人は練習に行くように。香菜子と広翔はグラウンドに行っていつものように練習をしていた。

大会1週間前、監督は部員を呼び背番号を発表をするから呼ばれたものは前へ。1番桃井、2番滝沢、3番向田、5番広沢、8番井上と春の大会と同じ背番号で戦うことになる。

北岡高校の初戦となる3回戦、西葛西高校相手に5対2で勝利して4回戦、準々決勝でコールド勝ちを収めて準決勝は昨年と同じ新木場高校戦で9回裏サヨナラ犠牲フライで1対0で北岡高校は2年ぶりに決勝進出を決めた。

決勝の相手は三鷹高校に初回に2点を取り、向田、広沢と繋ぎ最後は香菜子が締めて2対0で北岡高校は2年ぶり2度目の庚午スタジアム進出を決めた。

キャプテンの香菜子は溢れんばかりの思いで

泣いていた。香菜子は陽菜美、伊東そして陽凛に庚午スタジアム出場が決まったと連絡を入れると陽菜美、伊東、陽凛からこっちも庚午スタジアム出場が決まったから対戦出来ることを楽しみにしてるよ。

夏の地区大会が終わり高校生日本代表の1次候補として香菜子、広翔、陽菜美、伊東、陽凛の名前が公示されていた。


庚午スタジアム全員集合

香菜子と広翔は東東京代表で北岡高校、陽菜美と伊東は西東京代表多摩学園高校、陽凛は福島県代表喜多方北高校でみんなで会おうという約束を果たすことが出来た。

北岡高校と多摩学園高校は同じ東京なのでクジで決勝まで当たらない組み合わせとなった。

北岡高校、多摩学園高校、喜多方北高校の3校はに1回戦、2回戦、3回戦と勝利した。

準々決勝第1試合に多摩学園高校対喜多方北高校の試合で1対0で喜多方北高校が陽凛のサヨナラホームランを放ち勝利した。陽菜美は陽凛に対戦できて楽しかったよ、香菜子ちゃんに勝って優勝してねと告げて陽菜美はグラウンドを去った。

第3試合北岡高校は茨城県代表南つくば高校相手に4対0で北岡高校は準決勝進出を決めた。

そして準決勝で北岡高校と喜多方北高校は共に勝利し決勝進出を決めて北岡高校は2年ぶり2度目の優勝、喜多方北高校は初優勝を狙っていた。

決勝戦前日に香菜子は陽凛に電話をかけて明日は勝ち負けはあるけどお互いに楽しもうね。陽凛もここまで来たら香菜子ちゃんに負けるつもりはないよと互いに話していた。

決勝戦北岡高校井上、喜多方北高校陽凛の先発で始まった。5回終わって両チーム共に無得点で6回が始まる前、大雨が降り30分間ベンチで待機していた。主審がホームベースでノーゲームと告げて史上初の決勝戦降雨ノーゲームで決勝戦は翌日に組み込まれた。

決勝再試合は昨日と同じ井上、陽凛の投げ合いで始まった。

北岡高校は点を取られていないものの打者1巡した4回にピッチャーを向田に替えた。喜多方北高校は向田に苦戦していた。4回から8回までヒット3本に完全に抑えていた。

陽凛は前の試合から含め13回投げていることもあり甘いボールが増えてきた。8回裏先頭の3番広翔が打席に入りヒットを放ち、4番井上がストレートを振り抜くとフェンスオーバーの2ランホームランで北岡高校が2点先制する。

北岡高校は9回のマウンドに香菜子を送る。香菜子は4番、5番を簡単に打ち取って6番陽凛が打席に立つ。

香菜子は陽凛にストレートを3球投げ、陽凛は打った。香菜子はピッチャーフライを取り北岡高校は2年ぶり2度目の優勝を果たした。

優勝インタビューとしてキャプテンの香菜子が呼ばれた。

香菜子はインタビューで答えた。

「最後の夏にこの舞台に帰って来れてホントに嬉しいです。2年前は先頭打者初球デッドボールという珍記録を作って戦列を離れましたが、今大会はしっかりとプレーが出来てチームの優勝に貢献出来ました。進路はまだ決めていませんが、次の舞台でも活躍出来るように頑張ります」

その後、香菜子はベンチに戻ると向田から桃井を訪ねて来てる人がいるからベンチ裏に行くように言われた。まさか高校JAPANに選ばれたのかも。だとしたら広翔も一緒に呼ばれるはずだよね……。

香菜子の予想通り広翔は高校JAPANに選出され、他にも陽菜美、伊東、陽凛と言ったメンバーも選ばれていたがそこに香菜子の名前はなかった。

そしてベンチ裏に行くとオールジャパンのコーチが桃井香菜子ちゃんだよね?はい、桃井香菜子は私ですと言った。

コーチは驚かせてゴメンね、ホントは高校ジャパンに香菜子ちゃんも選ばれていたんだけどオールジャパンの方でケガ人が出て全日本高校野球連盟にムリを言ってこっちに来てもらう形になった。

コーチは香菜子ちゃんパスポートは持ってる?香菜子は元々高校ジャパンに候補として公示された時にもしかしたら台湾に行くかもと思い先に取っておきました。

さすが、足だけでなくやることも早いね、オールジャパンも台湾でやるから試合の合間だったら同級生の子に会いに行っても大丈夫だよ。香菜子は改めて選んでいただきありがとうございますと頭を下げた。


オールジャパン

次の日、香菜子は荷物をまとめて台湾に飛び立った。空港には庚午スタジアムで香菜子を待っていたオールジャパンのコーチが香菜子の到着を待っていた。

香菜子は空港に到着するやいなやコーチは香菜子の荷物を持ち、タクシーでオールジャパンのいる球場に向かった。

タクシーの道中、コーチは香菜子にお水を渡しバタバタでゴメンね、プロ野球選手の中に1人高校生で緊張すると思うけどみんな優しいから安心してね。

タクシーは球場に着き、オールジャパンの選手たちは集まる中でコーチは追加招集することになり、北岡高校の桃井香菜子ですと挨拶をした。

香菜子は全体練習を済ませ、ブルペンに向かった。サウスポーのアンダースローはJPBに誰もおらず、見たことのない軌道でピッチングコーチのみならず、他のピッチャーや野手もブルペンで香菜子の投球を見て驚いていた。

コーチから野手でも投手でもどちらでも行けるように準備をして欲しいと香菜子に伝えた。練習を終えた香菜子は高校ジャパンで同じく台湾に来ていた広翔、陽菜美、伊東、陽凛の5人で食事会に行こうと誘った。

広翔は香菜子も高校ジャパンに選ばれるかと思ってたらまさかオールジャパンに選ばれるとは驚きだよ。それは私もビックリした。オールジャパン、高校ジャパン共に明日から開幕だから絶対に優勝して日本に帰ろうね。

そしてオールジャパンは1回戦台湾戦を18対0、2回戦韓国戦10対2、準決勝メキシコ戦20対0と順当に勝ち上がり決勝のアメリカ戦で8対0でオールジャパンは優勝を果たし、香菜子は僅差の場面で代走やリリーフで出場する予定だったがオールジャパンの出場は幻で終わった。

高校ジャパンもまた4人の活躍で初優勝を果たし、オールジャパンと高校ジャパンは共に日本に帰国した。


運命の瞬間

ジャパンの試合が終わり伊東は大学進学を公言して広翔、陽菜美、陽凛の3人は全日本高校野球連盟にプロ志願届を提出した。

伊東は大学進学のため、プロ志願届を提出しなかった。

ドラフトの目玉の香菜子は日本のみならずアメリカからも注目されていてアメリカからは1年目からメジャーリーグに出場させると公言している球団もあった。

プロ志願届提出最終日、香菜子は進退を明かすと北岡高校にたくさんのメディアやマスコミが集まった。

香菜子はメディアの前でメジャー確約という球団もありましたが私はまず日本でプレーがしたいと考えプロ志願届を提出しますと公言した。この瞬間、テレビや新聞、ラジオで「桃井香菜子、12球団重複確実視」と大きく報道された。

ドラフト当日に香菜子と広翔は会議室で指名の瞬間を待っていた。他の生徒もまた教室にあるテレビで2人の指名を今かと待っていた。

そして午後5時、プロ野球の監督、スカウト等が入場しそれぞれの席に着いた。コミッショナー(プロ野球最高責任者)の一言でドラフト(新人選手選択)会議が開かれた。

1巡目のみ重複した場合、抽選で交渉権獲得と書かれた球団以外は2度目、3度目と12球団が確定するまで続く。2位指名以降は抽選はなく、先に指名した者勝ちとなる。

各球団が1巡目の指名を確定させてビジョンに表示されていく。第1巡選択希望選手川崎ファルコンズ「桃井香菜子投手北岡高校」と表示された。

各クラスから拍手で香菜子も安堵あんどの表情をしていた。香菜子を指名した球団はびわ湖ビクトリーズを含めて12球団(ノーザンリーグ旭川マウントリバース、函館サウスオクトパス、角館なまはげドリームス、山形さくらんぼバンバンタ、福島いわきレイクス、栃木とちおとめストロベリーズ、サウザンリーグ川崎ファルコンズ、びわ湖ビクトリーズ、広島厳島モミジーズ、松山オレンジスターズ、福岡明太子サンダーズ、長崎佐世保チャンポンズ)が指名した。全球団が1人の選手を指名したのは史上初の快挙だった。

そして12球団の監督は壇上に上がり、それぞれの球団がクジを引きハサミで封を切って渡される。コミッショナーの指示で開けてくださいと指示されクジを開いた。

滋賀びわ湖ビクトリーズの監督が香菜子の交渉権を獲得し、高らかに手を上げた。

監督は香菜子ちゃん、 是非一緒にびわ湖ビクトリーズで優勝を目指しましょうと挨拶をした。

他の11球団は席に戻り2度目の指名に頭を悩ませていた。11球団が再度指名を確定させてビジョンに表示される。5球団が陽菜美、6球団が陽凛を指名して陽菜美は川崎ファルコンズ、陽凛は福島いわきレイクスにそれぞれ指名されて12球団の1巡指名が終わった。

高校通算45本塁打の広翔はまさかの1巡目指名されずそのまま2巡目に移っていく。広翔は固唾を呑んで待っていると第2巡選択希望選手びわ湖ビクトリーズ「滝沢広翔捕手北岡高校」と広翔は奇しくも香菜子とびわ湖ビクトリーズから指名を受けた。

香菜子は広翔を抱きしめておめでとう、また一緒に野球が出来るねと2人揃って泣いていた。

次の日、2人は学校に行くと昨日のドラフトが職員室前の掲示板に貼られており、号外が配られており当事者の2人も号外を貰っていた。教室に行くと黒板には「香菜子ちゃん、広翔君ドラフト指名おめでとう」と書かれているのを見て感動した。廊下を歩けばプロ野球選手になる2人だよ、街をあるけば北岡高校から指名された2人と見る目がだんだんと変わりつつあった。

後日、びわ湖ビクトリーズの監督は校長室で香菜子と広翔と指名挨拶をして今後の方針について話をしていた。

11月に香菜子と広翔はびわ湖ビクトリーズと香菜子は契約金1億5000万円、年俸2000万円で広翔は契約金1億2000万円、年俸1000万円でそれぞれ仮契約を済ませた。

12月に香菜子は背番号22、広翔は背番号27のユニフォームを袖に通して新入団選手のお披露目をされて2人はファンの前で意気込みを語った。

仮契約を済ませ、陽菜美は背番号45、陽凛は背番号36とそれぞれ決まった。

高校通算成績(練習試合含む)

香菜子 野手として200打席数120安打100盗塁打率0.600

投手として60回2失点奪三振50防御率0.30

広翔250打数120安打打率0.48高校通算45本塁打

陽菜美 野手として180打数80安打打率0.44高校通算60犠打

投手 120回20失点奪三振80防御率1.50

伊東 野手300打数120安打打率0.300

高校通算35本塁打

投手150回35失点85奪三振防御率2.62

陽凛200回2失点180三振防御率0.09

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る