全日本

3年生

桜が舞う4月になり、4人は同じクラスになった。香菜子は2年の時はクラス違ったけど3年生になってまた4人で同じクラスになれたね、みんな宜しくね。

始業式が終わり、午後からの練習で監督はピッチャー陣に対して投げ込みを重点に置いて練習し、ノックやバッティング練習は2日に1回行う感じだった。

そして大会1週間前、監督は背番号を渡した。1番桃井、2番滝沢、3番伊東、5番長谷川と続々と発表し、桃井は基本的にリリーフで使うから伊東と長谷川を中心で行くからと明言した。

練習が終わり、香菜子は広翔にリリーフとしねいくからには変化球を磨きたいから自主練に付き合ってと言った。広翔はいいよ、そしてそれを聞いていた陽菜美は伊東君私たちも投げ込みしようと誘っていつものように4人で練習することになった。

4人は公園で練習していると香菜子の携帯が鳴り、結菜からの電話で全日本高校野球連盟が会見するから早めに帰ってきて見たら?

香菜子は少しだけやって帰ると結菜に伝え、電話を切った。

香菜子は3人に今日、全日本高校野球連盟が会見するらしいから早めに切り上げて家で見ようと提案した。

広翔はそうだな、会見するっていきなりで気になるし。4人はそれぞれ家に帰った。

全日本高校野球連盟は会見を始め「昨今の野球人口の減少は如実に表れ、今迄は予選と全国大会の東京庚午かのえうまスタジアムは男子だけでしたが来年度から出場登録をすれば女子の参加を認める」会見を見た香菜子は嬉しくて春の大会、夏には全国大会に行きたいとより一層やる気に満ちていた。

会見の次の日、4人は集まって中学校に向かっていた。香菜子は昨日の会見すごかったね、私にも陽菜美ちゃんにも庚午球場で試合が出来るチャンスあるって嬉しいよね。広翔は香菜子と陽菜美にそれにはまず春の大会、夏の大会で全国大会行って知名度をあげないとねと話していた。

春の大会1週間前、背番号発表され1番桃井、3番伊東、5番長谷川、10番滝沢とそれぞれ渡された。

そして迎えた春の大会、香菜子は主に1番センターとして活躍し、最終回リリーフとして出場することがあった。

伊東と陽菜美が主に先発を務め、どちらかが先発する場合は出場機会の少ないメンバーがファーストやサードに付き、北岡中学校は4人が中心だが全員でレベルアップを図っていた。そして北岡中学校は決勝まで進んで先発伊東、陽菜美と繋いで最終回、香菜子が最後締めて北岡中学校が春の大会を制した。


夏の大会に向けて

春の大会が終わり6月で梅雨の時期に入る。北岡中学校は公立の中学校で室内練習やブルペン等はなく教室でシャトル打ちをしたり筋トレを主にやっていた。雨の日が多くランニングが出来ないとみた広翔は香菜子、陽菜美、伊東に夏に向けて体力をつけるために合羽を着て公園の近くを走ろうと声をかけた。3人はいいよ、風邪引いたら元も子もないから時間を決めて集中して走ろうと香菜子は提案した。広翔は香菜子の言う通りだな。まずは片道15分、往復30分やってみよう。もう少しいけると思ったら徐々に距離を伸ばしていこう。

雨上がりの翌日、野球部の練習が終わり3人に公園に行って練習しようと誘った。公園に行くと土がぐちゃぐちゃでとてもじゃないが練習出来るような状況ではなかった。

広翔はキャッチボールしてピッチング練習するか。香菜子はキャッチボールするだけならまだしもこんな足の悪いところでピッチング練習なんて出来ないよ。

広翔はその為に今日は3人に来てもらったんだから。夏の大会でも雨上がりで投げることは想定出来る。それでコントロール出来なくてって言い訳にならないぞ。

香菜子は広翔にストレートと変化球を交え投げていた。広翔は伊東にバット持って立ってみてくれと頼んだ。そして香菜子は広翔に投げて伊東に今のボールどう思った?

ストレートが春の時より手元でノビている感じがあるな。伊東は香菜子に変化球を投げるように言った。香菜子はストレートに続き、変化球を広翔に投げ込んだ。特にカーブのキレがヤバいな、敵だったらこのボール打てんわと広翔と話し合っていた。

香菜子に続き陽菜美と伊東は交互に投げ合い手応えを感じており、広翔は雨天練習はランニングで晴天や雨上がりはピッチング練習を重きを置いて残りの時間をバッティング練習にすることにした。

7月になり梅雨が明けた。練習試合を組んで試すのもありかなと監督は思っていたが大会も近いし手の内は明かさず、部員全員にベンチ入りのチャンスを与えるために土日の練習は紅白戦に充てた。

紅白戦の前に監督はミスは誰でもある、だからミスをしてうつむくのではなく前を向いてプレーをするように伝えた。

香菜子は塁に出ると果敢に塁を狙い、投げてもストレートのノビに自信を持っていた。

陽菜美はバントをするだけでなく※5進塁打(敢えて内野ゴロを打ってランナーを進めること)を打ったりとしていた。投げても変化球のキレがよく奪三振率が上がった。

広翔は長打を打つだけでなく、場面場面で※6犠牲フライ(外野フライを打ってランナーを進めること)で得点をあげていた。

伊東は長打、バント、盗塁、エンドラン等その時に合わせて何をするべきなのか考えていた。投げても三振を取りに行くだけでなく内野ゴロ、外野フライを打たせるにはどうしたらよいかと考えていた投げていた。

紅白戦が終わり監督は部員に休憩を伝え、背番号を最後の最後まで誰を選ぶか悩んでいた。そして10分後、監督は部員全員を集めて今から背番号発表をする。呼ばれたものは返事をして取りに来るように。

1番桃井、3番伊東、5番長谷川、10番滝沢と4人は背番号に背番号を渡した。監督はホントは全員に背番号を渡したかったが背番号には限りがある。だから背番号を貰ったものは誇りとベンチ外のメンバーの為にも恥じないプレーをして欲しい。


夏の大会

香菜子、広翔、陽菜美、伊東の4人にとって最後の大会となる。23区大会初戦の前日、4人はファストフードに行って香菜子は明日から大会だけどみんな悔いを残さず頑張ろうねと笑顔で言った。

初戦が始まる前、監督は4人を呼び出した。この大会は全試合2人または3人の継投でいくつもりだから3人ともいつでも行ける用意しておいて欲しい。もし途中で違和感があったら回の途中でも遠慮なく言って欲しい。滝沢も少しでも違和感があれば俺に言うこと。

監督が3人で行くと決めた理由としてはピッチャーの負担を減らすのもあったがそれ以外に控え選手の出場機会を増やす目的もあった。そして初戦の先発は桃井、頼むぞと監督は香菜子を託した。

初戦、香菜子は3回を投げてセンターに付き、4回から陽菜美、最終7回に伊東が抑えて危なげなく初戦を制した。2回戦、準々決勝と投手3人は無失点で準決勝南岡中学校との試合を迎える。監督は3投手をローテーションで投げさせてるつもりはなかったが南岡中学校は香菜子が先発と予想して右打者を並べてきた。北岡中学校は先発伊東で4回までパーフェクトビッチングに抑える。打順が回ってくる間、香菜子と陽菜美は今日の試合私たち投げることはなさそうだねと話していた。しかし監督はパーフェクトだからって2人が投げさせないって俺は言っていないぞ。次の回長谷川行くから肩を作っておくように。陽菜美は香菜子にボールを受けてもらっていた。陽菜美は3回を抑えて北岡中学校はついに決勝まで駒を進めた。

決勝の相手は荒北中学校の先発は香菜子が務めることになった。この試合3回まで投げて伊東に継投する予定だった。しかし1回を投げ終わり、2回に入って小雨が降ってきた。中々ストライクの入らない香菜子の元にキャッチャーの広翔がやって来た。広翔は香菜子に手が滑るなら※7ロジンバック(マウンドの横に置かれている白い粉)をポケットに入れて滑らないように。打たせて取ろうと言って広翔は戻った。

そして3回表香菜子が打席に立とうとすると雨が酷くなり試合が中断され、広翔は香菜子に肩を冷やさないようにとウィンドブレーカーを香菜子にかぶせた。30分後、主審は両チームにノーゲームを告げて明日再試合を行うことを決めた。

次の日、監督は先発を香菜子ではなく陽菜美で行くことを伝えた。記録にはなっていないが昨日2回投げた桃井も投げる準備をしておいて欲しいと言われて香菜子はいつでもいけますと監督に伝えた。

陽菜美は3回投げて被安打2で抑えて4回から伊東がマウンドに上がる。伊東も3回までパーフェクトに抑え、監督は最終回も伊東投げるか? いえ、最終回は桃井でお願いします。その話を聞いた香菜子はドキッとしたがブルペンで肩を作り最終回のマウンドに香菜子が立つ。香菜子は3者連続三振に抑え、23区大会で優勝し、都大会進出を決めた。

北岡中学校は都大会に進み、投手3人の疲労も考えて監督は投手2人で行くと決めて投げない1人はベンチで休養させることにした。監督の判断が功を奏し、バッターもより一層ピッチャーの為に1点でも多くとの思いを強く思っていた。

そして順当に勝ち上がり決勝で八王子東中学校との1戦でこの試合に勝つと4人が目標としていた全国大会に進むことになる。

決勝のマウンドには伊東が上がった。伊東は5回までランナーを出すものの要所で抑え、6回香菜子が3人で抑えた。両チーム無得点のまま6回裏1番センター香菜子が打席に立つ。フォアボールで出塁すると2番サード陽菜美がヒットエンドランで0アウト1、3塁で3番キャッチャー広翔が値千金のホームランを放つ。4番伊東が塁に出るも追加点とはならず7回表キャッチャーの広翔は主審にピッチャー交代を告げる。監督は桃井行けるか?香菜子は肘が痛いので陽菜美ちゃんでお願いします。

そしてマウンドには陽菜美が上がりフォアボールを出すものの後続をきって北岡中学校は3対0で全国大会出場を決めた。

試合翌日は休養で監督から自主練を含め練習をしないように通達された。

試合後に陽菜美は香菜子と話していた。最後投げるなら香菜子ちゃんだと思ったのにどうして私に?香菜子は3点差なら陽菜美ちゃんなら抑えられると思ったから私は陽菜美ちゃんにって監督に言ったよ。陽菜美はまさか胴上げ投手になれるなんて思わなかったよ。広翔は香菜子と陽菜美を呼びいつも通り4人で帰って行った。

香菜子は家に帰り結菜に全国大会出場を報告し、埼玉で行われる全国大会におばあちゃん(恵、莉子)を呼んで欲しいとお願いをした。結菜はスタンドで観てたから決まった時に連絡しておいたよ。香菜子は結菜になんて言ってた?香菜子におめでとうって伝えておいてって、試合は是非観に行きたいって言ってたよ。香菜子はじゃあ頑張らないとね。

次の日久しぶりのオフで香菜子は広翔に電話をかけた。香菜子は広翔に休みだからどこか行こうよと誘った。

広翔は元気だな〜、俺も香菜子も疲れが溜まってるから休んだ方がいいぞ。全国大会が終わったらまたデートしような。どこか行きたいところある?

香菜子は夏祭り行ったり海に行ったりしたいな。広翔は全国大会の数試合頑張ろうなと言った。


全国大会

そして全国大会が開催されて球場を見渡すとホントに同じ中学生なのかと思うぐらい大きい選手が沢山いて北岡中学校の部員は圧倒されていた。開会式が終わり開幕試合は北岡中学校対尾道南部中学校の試合が組まれていた。

開幕試合の先発ピッチャーは香菜子で緊張していた。その姿を見た広翔は香菜子にそんな怖い顔をするな。

香菜子はだってあのスイングやノックを見たら誰だってビビるよ。広翔はとにかく俺らはブルペンに行って準備するぞ。

試合時間になり、両チームの挨拶を済ませて全国大会のまっさらのマウンドに香菜子は立った。1番打者にボールが続き肩の力を抜くようにとジェスチャーをした。1番を打ち取って2番、3番打者を、内野ゴロに抑えて上々の立ち上がりとなった。その後香菜子は1番打者として打席に立つ。初球セーフティーバントで出塁する。

2番サードの陽菜美が打席に立ち、初球に香菜子は間一髪で盗塁を決める。

監督は相手の肩を警戒して陽菜美に送りバントのサインを出し、陽菜美はバントを決めて1アウトランナー3塁で3番キャッチャー広翔が打席に立つ。尾道南部中学は長打を警戒して内外野共に深めに守っていて1点は仕方ないという守備体系を取っていた。

監督はバッターの広翔、ランナーの香菜子にサインを送る。ピッチャーがモーションに入った瞬間、3塁ランナー香菜子はスタートを切った。

広翔はバントを決め、北岡中学校は初回から※8スクイズ(ランナー3塁でピッチャーがモーションに入ったと同時に走りバントを決めること。ランナー3塁以外の場合はバントエンドランと名前が変わる)で先制した。4番伊東は空振り三振をした。

香菜子は4回まで投げて内野ゴロで打ち取るピッチングで5回から香菜子はセンターに回り、伊東がマウンドに上がった。伊東は三振の山を築き北岡中学校は1対0で初戦を突破した。2回戦、準決勝と大量得点で全国大会の決勝に進出した。

決勝戦福島県の喜多方北部中学校とのカードが決まった。監督は今日は決勝で勝っても負けても最後の試合となるから3人とも投げさせると伝え、決勝は伊東が4番ピッチャー、香菜子は1番センター、陽菜美は2番サード、広翔は3番キャッチャーと発表された。

先発伊東は3イニングを四死球2で4回から陽菜美がマウンドに上がり好投をした。北岡中学校は喜多方北部中学校の先発右腕本宮陽凛もとみやひまりに苦戦していた。6回裏1番香菜子が低めのストレートを打ち、守備がもたついている間にホームインしてランニングホームランで北岡中学校は先制した。2番陽菜美、3番広翔、4番伊東は3者連続三振で最終7回になる。

広翔は主審にセンター桃井をピッチャーにと守備の交代を告げた。香菜子はマウンドに上がり1点を守り優勝することだけを考えていた。打者2人を簡単に打ち取り、7番ピッチャー陽凛に打席が回ってくる。下位打線と言っても全国大会の決勝に出てくるチームとあって際どいコースはファールで粘られる。10球目、広翔は"あのボール"のサインを出して香菜子は投じて陽凛は空振り三振に取り、北岡中学校は1対0で初優勝を飾り、監督がインタビューを受けていた。

その後MVPに選ばれた香菜子も選手インタビューとして呼ばれた。

香菜子は「このメンバーで優勝出来てよかったです。これもひとえに部員全員、家族、球場に足を運んで応援してくれた皆様のお陰です」インタビュアはおめでとうございます、桃井選手はこの後全日本に選出されたことについて意気込みはありますか?

香菜子は思わず全日本?私以外に誰が選出されているのか尋ねた?

今日いるメンバーだと滝沢選手、長谷川選手、伊東選手で後、対戦相手の喜多方北部中学校の本宮選手だよ。

香菜子は突然のことで嬉しいと言うより驚きの方が大きいですね。全日本にも選ばれたのでまた頑張りたいなと思います。

閉会式が終わり陽凛は香菜子に話しかけた。陽凛は香菜子ちゃん足速いし、私が最後打席に立った時見たことのないボールで三振しちゃったと話していた。

陽凛は香菜子によかったら連絡先交換しようと言うと香菜子はいいよ。香菜子は陽凛の携帯を見て思わずあ、ママだと言った。

陽凛は香菜子ちゃんの苗字って桃井だよね……。香菜子はそうだよ、ママの旧姓は虎本でおばあちゃんが桃井恵って言うんだけどよく親戚が集まると1周回ってまた桃井って言うのが鉄板ネタだったんだよ。

陽凛はお母さんが虎本結菜さんとよく試合で泳いでたって言ってて私も小学校の時水泳やってたよ。香菜子は奇遇だね、私も小学校の時水泳やってたよと話をしていた。陽凛ちゃんまだ時間ってある?陽凛は大丈夫だよ。香菜子は結菜に電話をかけて電話が繋がった。結菜は香菜子優勝おめでとうと言うと香菜子はママと話したいって言う人いるから電話代わるねと陽凛に携帯を渡した。

陽凛ははじめまして本宮陽凛といいます。母が虎本結菜さんとよく試合で泳いでたと聞いて家族で応援させてもらっていました。結菜はこの後香菜子達とご飯食べに行くんだけど陽凛ちゃんもよかったらどう?

陽凛は1度監督に聞いてくるので行けるかどうかは香菜子さんにお伝えしますと携帯を香菜子に渡した。

陽凛は急いで監督のところに行って事情を説明すると監督は今日、明日は東京観光の予定だから午後10時までにはホテルに戻って来るように伝えた。

陽凛は香菜子に午後10時までにホテルに戻って来てくれればいいと許可が出たからお食事一緒に行ってもいいかな?

香菜子はじゃあママに連絡しておくね。近くのベンチに座り話していると広翔から電話がかかってきてお店行くから駐車場に来て、みんな駐車場で待ってるぞ。

香菜子は陽凛と共に駐車場に行って結菜と恵美の2台にそれぞれ分かれて焼肉屋に向かった。車を走らせ20分、焼肉屋に着いた。

陽凛は香菜子、広翔、陽菜美、結菜、恵美の前で福島県の喜多方北部中学校の本宮陽凛ですと改めて挨拶をした。

広翔は陽凛にいいボール投げるね、香菜子がランニングホームラン打ってなかったら勝てたかどうか分からないと言うと陽凛は監督から1番から4番まで絶対に塁に出すな、出したら負けと同じだと再三言われてたよ。

香菜子は私たち全日本に選ばれたけど、どこでやるの?

広翔は香菜子何も知らないのか。東京で合宿して試合は東京庚午スタジアムで行われるよ。遠方の人はホテルに宿泊して通える人は自宅から通ってもいいって監督から聞いたよ。

陽凛は思わずホテルってどこなんだろう、ホテルに戻ったら監督に聞かないと。

結菜はまだ決まってないようだったら家においでよ、監督さんには親戚がいるって言ってさ。その方が香菜子も嬉しいと思うから。

陽凛は香菜子さんにまた連絡しますと言って1度ホテルに帰り監督に確認をした。監督は俺もまさか本宮が全日本に選ばれたってことを同じタイミングで知ったからさ。ここのホテルにも交渉してるけど中々な……。もうちょっと待っていて欲しい。

陽凛は監督、こっちに親戚がいるので期間中泊めさせてもらうことにするので大丈夫です。

監督はそうか、俺がもっと早くホテル取ればよかったなと頭を下げて謝った。喜多方北部中学校の部員は地元福島県へ帰って行った。

陽凛は香菜子に電話してお母さん泊まっていいって言ってたけど迷惑じゃない? 香菜子はいいよ、今から陽凛ちゃん迎えに行くからどこに行けばいい?

陽凛は今北岡駅ってところにいるよ。

香菜子は陽凛ちゃん迎えに行ってくるね、多分陽凛ちゃん大きな荷物持ってると思うから車で一緒に行こう。どこにいるって?

陽凛ちゃん今、北岡駅にいるって。

結菜は陽凛ちゃんに15分ぐらいで着くよって言っておいて。香菜子は陽凛にメールをした。

15分後、結菜と香菜子は北岡駅に着き陽凛の荷物をトランクに載せて家に向かった。買い物行くから2人は家でゆっくりしててね。

香菜子と陽凛は家に帰り他愛のない話をしていた。香菜子の部屋に行って野球の話や恋バナに盛り上がっていた。1時間後、結菜は買い物から帰って来て陽凛は玄関に行き荷物を運んだ。結菜はそんな事しなくていいのに。陽凛はいえ、しばらくの間居候いそうろうさせてもらう身なのでこれぐらいは。陽凛ちゃんありがとう、ご飯作るからリビングでテレビでも観てて。

ピーンポーンとチャイムが鳴り結菜は玄関を開けると恵美、広翔、陽菜美がお邪魔しますと入って来た。昼に引き続き夜もパーティーをする形となった。

結菜の携帯に電話がかかってきて誰かと話していた。結菜は今日は人が多くて賑やかだけどそれでもいいならと言って携帯を切った。

午後7時頃ピーンポーンと鳴り、香菜子は玄関を開けた。そうすると恵と莉子がやって来ておばあちゃんたち急にどうしたの?

恵と莉子は香菜子ちゃんに優勝おめでとうって言いたくて。ママにお菓子渡してくれる?香菜子は結菜にお菓子を渡し、食後に食べようと話していた。

陽凛は香菜子にこの前桃井が1周したって話してたけどもしかして……。

香菜子はそうだよ、 虎本結菜の母が恵で徳本恵美の母が莉子だよ。

結菜、香菜子、広翔、陽菜美、陽凛、恵、莉子と7人が食卓を囲み食事をしていた。陽凛は簡単に挨拶をして居候することになった経緯を説明をした。

陽凛は携帯の待受を恵と莉子に見せると2人で出たオリンピックか〜、懐かしいね。

恵と莉子は決勝戦はどっちが勝ってもおかしくない試合だったよ。次は日本代表としてみんな頑張ってね。また応援に行くよ。

ご飯が食べ終わりお茶を飲みながらお菓子を食べていた。時計を見ると9時を回っていて恵と莉子はじゃあそろそろ帰るね、香菜子ちゃん何かあればいつでも連絡してきてね。そして恵美は広翔、陽菜美ちゃん帰ろう。陽菜美ちゃん家まで送ってあげるね。陽菜美はありがとうございますと家を出ていった。


世界大会

次の日全日本代表の選手は庚午スタジアムに集まった。周りを見渡すと1度は見たことあったり、名前を聞いたことのある選手が沢山選ばれていた。そして監督やコーチも元プロ野球選手と豪華メンバーだった。

全体練習を終えて投手の香菜子、陽菜美、伊東、陽凛はブルペンに行き投げ込みをした。野手はノックとバッティング練習をして初日の練習を終えた。

次の日、適性を図るため紅白戦を行った。

紅チームで陽凛、陽菜美、広翔、白チーム香菜子、伊東とそれぞれ分かれた。香菜子、陽菜美はピッチャーと野手の2刀流として起用、陽凛はピッチャー、伊東は野手としての起用を監督は明言した。

初戦の韓国戦先発香菜子が3回を投げて陽凛、陽菜美と繋ぎ広翔は※9固め打ち(1試合4安打打つこと。3安打は猛打賞という。)の活躍で8対0で初戦を突破した。

2回戦のカナダ戦香菜子はベンチスタートで陽凛が5回まで投げて陽菜美に繋ぎ伊東のホームランで5対0で快勝した。

決勝戦アメリカ戦1番センター香菜子、2番サード陽菜美、3番キャッチャー広翔、4番ファースト伊東、6番センター陽凛と発表された。

1回表、1番香菜子はストレートを打ちボテボテのサードゴロで内野安打になった。2番陽菜美の初球盗塁を決める。1ボールの2球目ヒットエンドランで3番広翔に打席が回る。広翔はホームランを打ち先制する。

1回裏、陽凛は3者連続三振でアメリカ打線を抑えた。その後陽凛は5回まで投げた。6回から陽菜美がヒットとフォアボールを与え、監督は守備の交代でピッチャーを桃井と告げた。そして香菜子は投球練習をして5番打者にカーブを投げショート※10ダブルプレー(1度に2つのアウトを取ること。)で2アウトランナーなしで6番打者を三振に取った。

7回表日本は3者凡退で7回裏香菜子がマウンドに立った。内野ゴロ2つで簡単に打ち取り、最後のバッターを見逃し三振で香菜子は世界一の胴上げ投手となった。

香菜子と陽凛はクタクタで家に帰った。結菜は2人ともお疲れ様、お風呂沸かしてあるからとりあえずお風呂入ってきな。その間にご飯作っておくから。香菜子と陽凛はお風呂に入っていると結菜がご飯出来たからあがってくるように言った。

食事をしている時、陽凛は明日荷物をまとめて福島に帰ろうと思います。短い間ですが私を泊めていただきありがとうございます。機会があれば是非福島の家にも遊びに来てください。結菜は東京に用事ある時はいつでも来ていいよと話していた。

次の日結菜と香菜子は陽凛を見送った。

夏休みも残り数日、香菜子は広翔に電話をして夏祭りに行きたいと言うと6時に北岡駅に集合することにした。香菜子は水色の浴衣を着ていつもとは違う感じにしようとツインテールにかんざしを刺して駅に向かった。

香菜子は6時前、広翔は6時のサイレンと同時に駅に着いた。

香菜子は広翔遅い、なんで浴衣着てる私の方が早く駅にいるのと笑っていた。広翔はいつもと違って可愛くて別人かと思った。

香菜子は広翔にかわいいって言ってもらえてよかった、写真撮ろうと香菜子は携帯で2ショットを撮った。北岡駅の近くで行われている夏祭りに行き、出店でわたあめを食べたり金魚すくいをして色々周っていてベンチに座り話していた。広翔は香菜子に話があると切り出した。香菜子は改まってどうしたの?

広翔は夏の大会が終わるまで言わないようにしてたけど夏の大会、全日本が終わったし香菜子に伝えたいことがあってさ……。

香菜子は広翔の方を向いて伝えたいこと?

広翔は俺ら従姉妹で家も近いし小さい時からいつも一緒にいたけど香菜子のこと従姉妹としてじゃなくて1人の女の子として好きなんだよね。俺と交際してくれないか?

香菜子は笑顔でうん、いいよ。いつその言葉が広翔から聞かれるのかなって思ってたよ。

そして広翔は香菜子を抱き寄せてキスをした。香菜子は履いていた草履の鼻緒が破れて広翔は香菜子を家まで送り届けた。


受験

次の日は日曜日で結菜はパパがリビングで話があるから来るように言った。香菜子は結菜と共にリビングに向かった。

香菜子はパパ話って何?旦那は香菜子は高校どうするのか聞いた。正直迷っているんだよね。

香菜子には見せてなかったけど全国から香菜子に特待生で来て欲しいっていう高校が多くあった。香菜子は特待生で行けるチャンスあるなら挑戦したい。

ママは私立の高校行ってたんだけど後ろに座ってた子がテニス部で特待生の子が居たんだけどその子はケガをして部活をやめて学校に居ずらくなって転校したっていう話もあるからそれを踏まえて考えて欲しい。

香菜子は今すぐ決めなきゃダメ?

結菜は大事なことだから慎重に決めないとダメだよ。私立に行くならある程度お金いるから早めに言ってね。

香菜子はひとまず広翔に電話をかけた。

広翔は香菜子どうした?広翔はどこの高校行くか決めた?俺は北岡高校に行こうかなって思ってるよ。香菜子は北岡高校って私立?公立?どっち?

広翔は香菜子にホント何も知らないんだな。中学校から少し離れたところで工事中の所あったでしょ。そこが4月に北岡高校として開校するって新聞に載ってて野球部には元プロ野球選手が監督を務めるってウワサだよ。

香菜子は広翔の話を聞いて北岡高校か……、考えてみようと思った。

香菜子は電話を切り、結菜に公立高校の推薦の話ってきてないかと尋ねた。結菜は推薦の話来てるよ、でもね公立は私立と違ってテストを受けても合格とはならないよ。

香菜子は私立に行ったらお金かかるし、公立の推薦でも確実ではないとなるとな……。まず北岡高校のことを知るためにネットで調べると普通科の他にスポーツ科が男女共に募集されていた。

香菜子はよし、これだと思い香菜子は勉強に本腰をいれることにした。その旨を結菜、広翔に伝えると俺も北岡高校スポーツ科を受験することを伝えた。

この日から香菜子と広翔はデートをしたいのを我慢し、図書館で黙々と勉強していた。その甲斐もあり2人とも学校の成績が上がった。

年が明けて陽菜美と伊東は私立の多摩学園高校の推薦入試を受けて無事合格した。

香菜子と広翔は俺たちもあと少し頑張ろうと互いを励ましあって言った。

2月に2人は滑り止めで北岡大付属で合格をし、本命の北岡高校の試験は3月で香菜子と広翔は筆記試験と面接を受けて結果を待っていた。結果を見に行くと2人とも無事合格で香菜子と広翔は思わず抱き合った。

香菜子は結菜、陽菜美、伊東そして福島に住む陽凛にも合格を報告した。

陽凛からは私立喜多方北高校に進学するから庚午スタジアムで戦おうと言っていた。

そして卒業式が終わり香菜子、広翔、陽菜美、伊東の4人は制服で写真を撮り、その後カフェに行きカラオケで中学校生活を終えてまたみんなで庚午スタジアムで会おうと誓った。

中学通算成績

香菜子、広翔、陽菜美、伊東、陽凛の中学通算(練習試合も含む)は以下のものになる。

香菜子 野手として80打数60安打60盗塁打率0.75

投手として30回40奪三振防御率0.00

広翔 70打数45安打8本塁打40打点打率0.642

陽菜美 野手として60打数24安打30犠打30盗塁打率0.400

投手として45回10失点60奪三振防御率2.00

伊東 野手として65打数45安打3本塁打20打点打率0.692

陽凛 80回1失点100奪三振防御率0.11

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