小学校入学

楽しい1年間

僕には5歳離れた兄(真彦)がいる。僕は兄にベッタリで兄の友達が家に遊びに来たら兄の部屋に行っては友達に可愛がってくれた。

そして僕は小学校に入学し、僕は兄のクラスを知っていて授業後は兄のクラスに行くようになっていた。

そこで5年生の女の子達から"かわいい〜"と可愛がってくれた。僕は兄が好きな弟をレベルではなくもはや溺愛というレベルだった。

ある日、兄から迷惑だから授業後にクラスに来るのはやめて欲しいと通達された。


幼馴染の女の子

小学校は通学団と言うのがあり、6年生を班長で5年生副班長と言う感じで何人か固まって登校する。そして僕の班には2個下の女の子が新しく一緒に登校することになった。この2個下の女の子は前川美紅(まえかわみく)ちゃん、華奢で顔が小さくてまるで天使のような女の子だった。

家が近所と言うこともあり、普段女の子と話すことのない僕にとって気軽に喋ることの出来る唯一の女の子と言っても過言ではない。

僕は顔なじみだから普通に話せるがそうでなければ緊張してまともに顔を見て美紅と話すことが出来なかったと思う。


子供会

僕は子供会に入っていて主にソフトボールの他に町内対抗の運動会、場合によってはボーリング大会やクリスマスの時期には公民館等に集まってプレゼント交換等をする。

子供会には僕の他に真彦、美紅や隆俊の他に仲谷龍弥(なかやりゅうや)が子供会に所属していた。

龍弥とは家が近くお互いの家に行って遊んだり、公園が近くにあるのでよくキャッチボールをしていた。

龍弥と2人でキャッチボールをする時もあれば隆俊と3人でする時もあり誰とするかはその時次第であった。


一緒に通学

僕と隆敏は家が近所で美河谷小学校までよく一緒に通っていた。春になると進級しガラスにはクラス名簿が張り出される。

幼馴染で仲のいい隆敏と同じくらいになりたいなと思っていたが小学校3年生まで同じクラスにならなかった。4年生になり、張り出されたクラス名簿をみると……やはり今年も隆敏と同じクラスにはならなかった。4年生になり僕と隆敏は町内会のソフトボールに所属することになった。

そして僕は隆敏と帰ったが今年も同じクラスにならなかったねと談笑をしていた。

そして隆敏は僕にあることを尋ねてきた。俺ら4年生になったけど、部活は何部に入るのか聞いてきた。

小学校は4年生になったら部活に入るという強制ではないがどこかの部活に所属するのが不文律で決まっている。

僕は隆敏に俺はまだ何部に入るか決めてないけど、隆敏は決めたのと聞いた。

隆敏もまた僕と同じで何部に入るか悩んでいた。

僕は隆敏にお互いに悩んでいるのなら体験入部あるからそこで入る部活を決めようと提案すると隆敏はそうしようと言って、今から誠人の家に行っていいかと食い気味に話しかけてきて僕はいいよと伝えた。そして隆敏は荷物を置いて僕の家にやって来た。

隆敏は問屋でお菓子を買って2人で食べながらテレビゲームをしていた。テレビゲームと言っても僕と隆敏は専ら野球ゲームばかりしていた。

僕は何回やっても隆敏には勝てず、ゲームをやっても勝てないでいた。

そして隆敏は僕に問いかける。「なぁ誠人、俺ら野球部に入らないか?」僕は隆敏になんで野球部なわけ? 俺はゲームですら隆敏に勝てないのに野球やってもな……。

隆敏は僕に町内会のソフトボールやってる時、お世辞にも上手いとはいえない誠人が外野フライを取ったり、フリーバッティングで外野まで打って喜んでる姿みると俺は誠人が楽しんでいるんだなって思ってさ。

だから野球部に入ろうと隆敏は必死に僕を誘ってきた。僕は隆敏がそこまで言うのなら野球部に入ると伝えた。

そして次の日、僕と隆敏は学校に行くと担任の先生から体験入部希望の紙が配布された。野球部に入ろうとしていた僕と隆敏はそれぞれ野球部を探していたが見つからなかった。

僕らの小学校は野球部ではなくソフトボール部があり僕はソフトボール部を希望を出した。

授業終わりに僕は隆敏に体験入部の紙になんて書いたか尋ねると野球部って書こうとしたけどなくてかわりにソフトボール部って書いたよと言うと考えていることは一緒だなと笑いあっていた。

授業が終わり僕らは体操服に着替えてグラウンドに向かった。

僕らが目にしたのは先輩たちは小学生が投げる球なのか、ホントに小学校が打って飛ぶ飛距離なのかと衝撃をうけた。

そして僕と隆敏、龍弥を含めた4年生15人は一列に整列し、監督や上級生に挨拶をした。

僕ら4年生も先輩たちと同じようにバッティング練習等出来るかなとワクワクしていた。しかし体験入部、それも4年生が上級生と同じ練習をさせてもらえるわけもない。

体験入部の4年生はランニング10周、終わったら筋トレ(腕立て、腹筋、背筋)各50回ずつ練習が終わるまでこれの繰り返しだった。僕にとってこれは苦痛で仕方なく、ある日僕は隆敏に愚痴をこぼした。

俺、ソフトボール部入るの辞めようかな、ランニングしても筋トレしても俺が1番遅いしこんなやつがいたらみんなの足を引っ張るだけだよ……。

それを聞いていた隆敏は僕に迷惑?迷惑ってどういうこと?人によって得意不得意あるんだから早く終わる人もいれば時間がかかる人がいて当たり前だろう。

チームプレイなんだから次またそんなこと言ったら本気で怒るからな。

ホントに自分で考えて辞めるなら俺は止めないけど、迷惑だからって言う理由は許さないからと言われて僕は歯を食いしばって体験入部入部を乗り切った。

そして僕は正式にソフトボール部に入部を決めた。

正式に入部して1週間後、僕は足が痛くとてもじゃないがグラウンドを走ることも筋トレをするのも難しいと思い、この年中学から赴任してきた監督にその旨を伝えた。

監督は僕に「そんな理由で休むなら部活を辞めろと激高した」

僕は痛い足をかばいつつ練習をし家に帰って湿布を貼ったりとしていた。次の日から僕は何事もなかったかのようにランニング、筋トレの練習をこなしていた。


クラスメイト

ソフトボール部に入部して半年、部活は大変で隆敏の一言で部活を続けられている。運動が出来ないかわりに勉強は誰にも負けないと言う人がクラスに1人はいると思う。

実は僕はその1人である、と言いたいところだが僕は運動も出来なければ勉強もまるっきり言ってもいい程出来ない。

ABC評価(A 大変よくできました、B がんばりました、Cもう少しがんばりましょう)でC=でBが少し、Aがあれば先生温情で付けてくれてありがとうと言いたいぐらい勉強が出来なかった。

僕らの学校ではそれぞれの科目で1つの単元が終わればテストを行うがどれだけ勉強しても50点を超えることがあっても70点、80点と言われる高得点は年に何回かだけ出るぐらい珍しいものだった。

そんな僕が座っていたのは1番後ろの窓際に座っており斜め向かいに座っている背が低くショートカットの女の子川谷彩華(かわたにさやか)を目で追っていた。いわゆる僕の初恋である。

こんな何も出来ない僕だったが彩華の姿を見ているだけでなぜだか僕は毎日学校に行くのが楽しくて仕方がなかった。

小学校だと運動会や学芸会と少なからず男女が話をして仲良くするきっかけがある。

僕は彩華と話す機会を伺っていた。がしかし僕は小学校の2大イベントと言われるこの2つの行事で彩華に話しかけることが出来ず、気がつけば秋から冬、年が明けて桜の咲く時期に向かっている。

そう、即(すなわ)ち終業式を迎え4年生が終わり僕は彩華に気持ちを伝えることが出来ずにいた。5年生になってもまた彩華と同じクラスになれたら気持ちを伝えようと心に誓った。


部活三昧

終業式が終わり1度家に帰り再び学校に向かっていた。それはソフトボール部の練習があるからだ。

この頃にはあの地獄の筋トレとランニングが終わり、キャッチボールやノック、バッティング練習をするようになっていた。隆敏は3月に行われる4年生大会でピッチャーとしてエースの座を争っていた。

僕はバットがボールに当たらなかったころと比べたら少しまともになったものの内野の頭を超える打球が中々飛ばない。

これでは4年生大会でベンチに入ることはない。

僕は温情でもなんでもいいから背番号をもらいたかった。やはり背番号は貰えずベンチで応援することとなった。

僕たち美河小学校の初戦丘北小学校と対戦し、1対0と惜敗した。4年生大会が終わりすぐ僕らは5年生になった。


クラス発表

毎年恒例のガラスにクラス表が貼られており、またしても隆敏と同じクラスになれなかった。そして僕が思いを寄せる彩華とも同じクラスにはなれなかった。

僕は隆敏に今年も一緒のクラスじゃなかったなと言うと確かにそうだな、今年は新しく新入部員も入ってくることだし気合を入れてやらないとなと言われ改めて気を引き締めてやらないとな。

僕は下手ながらも新しく入ってくる部員達にいいところをみせたいと思っていた。4月、昨年の僕らのようにランニングに筋トレに励んでいた。

そしてベンチには新入部員が1人座っていた。

僕は気になったので新入部員にベンチに座っている理由を聞いた。

体調でも悪いのかと聞くと衝撃な答えが返ってきた。

休んでいるのは足が痛いので休んでいますと言った。その言葉を聞いた僕はあることを思った。

僕は監督に足が痛いので休みますと言った時そんな理由休むなら部活を辞めろと言われたのに同じ理由で後輩はベンチに座っているのか僕には分からない。

この日僕は何だか悲しい気持ちになりながら練習をしていた。

そして先輩たちの最後の大会で背番号発表がされていく。

監督が10番松中と呼んだ瞬間、僕たち5年生全員が嬉しいと思う反面、5年生で選ばれたのが隆敏ただ1人だけで頑張って欲しい思いがあった。

そして迎えた夏の大会の初戦、丘北小学校との対戦で5対3で負けてしまい先発の隆敏は自分の不甲斐ない投球のせいで先輩たちの夏を終わらせてしまったと思い人目を憚(はばか)らず泣いていると先輩たちは悔しいなら来年俺らの分まで活躍して優勝してくれ。

その言葉を聞いた隆敏は先輩たちの分もやり返すつもりでいた。


新チーム発足

僕は水曜日に体操教室、金曜日にスイミングスクールに通っていた。

スイミングスクールは夕方だったので部活が終わって1度帰り、バスを待っていた。

水曜日の体操教室は夕方からだったので僕は授業後職員室に行き、監督に体操教室に行くため休むと毎週言いに行っていた。

しかし僕はソフトボール部に集中すると決めて体操教室もスイミングスクールも辞めてソフトボール部1本にした。

僕は最後の大会に向けて背番号をもらい、試合で出場したいと思い僕は練習が終わったあとも素振りをして大嫌いなランニングにも取り組んだ。


転校

子供会でも部活でも同じだった龍弥が転校することになった。

家も近くてよく遊んだり、公園でキャッチボールをしたりしていて転校を聞いた時は正直寂しい思いでいっぱいだった。

ある日、いつも通り部活が終わり監督は仲谷から話があると言って龍弥は前に出た。

「今回親の転勤で転校することになりました。短い間でしたがみんなとソフトボールが出来てホントに嬉しかったです。今度はまた全国大会で会いましょう」

僕や隆俊を含めて部員は龍弥の言葉を聞いて

泣いていた。

そして次の日、龍弥が離れることを知っていたので僕は見送りに行くと龍弥からアドレスを教えてくれて互いの近況報告をしようと言ってくれた。

その後毎年、年賀状を送りあっているがお互いに忙しくて中々会えないので久しぶりに会いたいなって思っている。


通りすがり

僕は授業の合間、他のクラスメイトはドッジボールや鬼ごっこをしている人が多い中で僕は外周を休み時間の間只管(ひたすら)走っていた。

しかしある日ずっと走っており着替えたりする時間がなくそのまま授業に出てしまい風邪を引いてしまった。その後僕は5分前には切り上げて着替えをした。

ある日僕はいつものように授業の合間に外周を走っていると「皆川君頑張って」いつもは聞こえない声が聞こえ、同じクラスの誰かだろうと思っていた。


教室に戻ると何故かザワついていて理由を聞くと僕に好きな人がいると言う話題でもちきりだった。

しかし僕には思い当たるフシがなく、誰なのか分からずにいた。

特に気にも止めていなかった僕だが別のクラスの隆敏が僕の方を見るやいなや何故かニヤついている。

俺のクラスに誠人のこと気になっている人いるらしいよ。

僕は隆敏に誰なのか聞くと隆敏は僕に授業の合間何をしてるのか聞かれ、外周を走ってるよと答えるとそれなら俺も明日、誠人と一緒に走るわ。トレーニングにもなるし、それに誠人のナゾも解けるかもよ。

じゃあトレーニングを兼ねて捜査しようと言う話になった。

そして僕と隆敏は外周を走っていると渡り廊下で1人の女の子がこちらの方を見ていて、隆敏は僕にちょっと御手洗に行くと言った。僕はその間走っており、隆敏は後で合流した。

隆敏は僕に渡り廊下にいた女の子だけど、同じクラスの川谷だったよ。

僕は隆敏に川谷と何を話していたのか聞くと誠人がみんなが遊んでいる時に1人だけ走っていてすごいなってさ。チャイムが鳴る5分前、僕たちはランニングを切り上げて教室に戻った。

授業後隆敏と川谷が何か話していたが早めに部室に行こうと2人の会話は特に気にもしていなかった。

程なくして隆敏も部室にやって来て僕は隆敏にさっき何話してたのかと聞くと他の部員もいるから帰る時に話すと言った。

僕は隆敏にさっき何話してたのかと聞くと隆敏は誠人君中々背番号はもらえてないけど必死に頑張ってる姿がステキで好きだなって言ってたよ。

僕は思わず隆敏になんで俺が背番号もらえてないこと知ってるんだろうねって笑いながら言った。

隆敏は誠人川谷のこと気になったりしないの?僕は去年クラス一緒だったけど全然喋れなくて俺のことなんて覚えてないと思ってたからさ。隆敏は僕にそうだったのか、ウワサだけど川谷狙っている人いるって話題にあがってるよ。

僕は確かに川谷はかわいいし人気出てもおかしくないだろうね。

隆敏はこれは1つの意見として聞いて欲しいんだけど、もし好きならちゃんと好きって伝えた方がいいよ。

もし何か手伝うことがあれば手伝うからさ。しばらく考えてみるわ。

数日後学校では全校生徒で縄跳び大会が迫っていた。

体育の授業は専ら縄跳びの練習で1クラスではなく、学年全員でするので他の学年は体育の授業が出来ない。

学年主任が笛を吹くとみんなが一斉に飛び始め、僕は5分間飛んでいた。

体育の授業が終わり教室に戻ろうとしていたら彩華が僕に声をかけてきた。

皆川君、5分間もずっと飛び続けるなんてスゴいね。僕はありがとう、松中は10分も飛んでたからホントすごいと思うわ。

皆川君最近外周を走ってるねと言うと僕は最後の大会こそベンチ入りしたいからさ。

教室に着き、時計を見るとチャイムまで後1分で彩華は僕にもう授業始まるからまた後で話そうねと言って教室に戻った。

そしてお互いに授業を終えて再びチャイムが鳴り、僕は廊下に出ると彩華は手招きをしていたのでそちらの方に行くと茶道準備室に2人で向かった。

まず僕は彩華に渡り廊下じゃなくてここに案内したのか聞くと渡り廊下だと他の人に聞かれるのもイヤだしここなら人来ることも少ないしいいかなって思ってさ。

僕はそういうことかと納得した。

そして去年同じクラスだったけど覚えてるかと聞くと彩華は覚えているよ、でも皆川君に話しかけにくい雰囲気あったからさ。

だからこんな話しやすい人だとは思わなかった。僕は川谷は可愛くてみんなの人気者だから俺と話しても相手にされないんじゃないかと思ったら中々話しかけられなくてさ。

彩華は笑いながらもし私がそんなことしたらめっちゃ悪者になるよ、全然話しかけてくれてよかったのにと話していた。

そして外がザワつきはじめて来たので僕はそろそろ教室に戻ろうと言った。僕は改めて彩華が優しくてかわいいと思い、僕は彩華のことを気になり始めていた。

僕と彩華は授業後に茶道準備室に行き他愛のない会話をする日々が続いた。

そしてある日、外から茶道部にめっちゃかわいい子がいるらしいよあんな子と付き合いたいなと聞こえた。

僕は川谷って何部に入っているのか聞くとニッコリと茶道部だよと答えた。

そして隆敏がもし好きならちゃんと好きって伝えた方がいいよって言葉を思い出した。

僕は彩華が他の人に取られたらいけないっていう思いが強いがあまり僕は彩華に大事な話があるんだけどさ……と話を切り出した。

「僕は川谷のことが好きです、お付き合いしてください」

しばらく沈黙となり、彩華は口を開いた。

皆川君、好きって言ってくれて嬉しい。

でもね、皆川君とはお付き合いできないの、ゴメンね。僕は初めての恋はフラれた結果で終わった。

彩華はこれまで通りここでお喋りしようねと言ってくれた。

僕は授業後いつものように部室に向かうと隆敏が僕に川谷がいつもと違う顔をしていたけどなんてだか分かると聞かれて僕は帰る時に言うと伝えた。

部活が終わり僕は隆敏に一連の流れを説明すると結果は残念だったけどちゃんと自分の気持ち伝えられてよかったな、言わなかったら多分後悔してると思うよと言うと僕は去年話しかけられなくて後悔していたからこそ余計に伝えられてよかったと思っていた。

また話しようってことはもっと仲良くなったらまたチャンスがあるかも知れないからあきらめるなと隆敏は背中を押してくれた。

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