第42話 幼馴染の友人は粗削りな作戦で行く
白い、
目の前に髪も肌も服装も全てが真っ白な天使のような少女がいた。
ここはどこだ?天音は?みんな?
『何かを探しているの?』
真っ暗闇に立つ少女は抑揚の少ない声でそう言った
「あなたは私のものよ。わけのわからない行動は許可しない」
謎の少女はわけのわからない言葉を言ってから、冷たい手で俺の首当たりに触れた。
「これから、あなたは私を倒しにくるのね」
首に触れた手に力が込められた。ゴーレムである俺の首を絞められるはずがない。
それなのに
どうしようもなく苦しかった。呼吸器を圧迫する行動のはずなのに心臓や脳みそをわしづかみにされているような感覚になる。
「だから、きっと私を守ってね」
全身が白でおおわれているのに、瞳のみが赤い。
顔から温度が引いていくのを感じながら、そんな感想が頭の中で浮かんで沈んでいった。
――――――――――――――――――――――――
どこか遠くでいつものにぎやかな声が聞こえてきた。次第にその声は近くなり、そこでようやく自分が熟睡していたことに気づいた。
「あ、ゴースケ起きたぁ」
胡坐をかいていた天音が、俺を摘み上げて胡坐の上に乗っけた。
「お前珍しくめっちゃ熟睡してたな!夢でも見てたん?」
「ゴーレムも夢見るんやね」
好奇心旺盛なチルハが新たな謎にうずうずとしている。解剖などはちょっと勘弁してほしい。
それにしても夢か…みていた気がするが、いまいちどんな夢だったか思い出せない。すごく寒くて暗くて苦しかったという感想のみが残っていた。
「それにしてもタイミング良いな!今から作戦会議するとこだったんだよ」
それでみんなでこんな輪になっているわけか。会議と言っても俺には一切発言権は無いがな
「それで、魔王を倒す作戦考えたんだけど」
「え、もしかして昨日の夜ずっと考えててくれてたん?!」
「…おうよ!」
絶対嘘だ。ウーサーの顔が嘘つきの人間を見る顔になっている。絶対今考えたやつだ
「多分、正門から行ったら確実に強い敵がいっぱいいるわけじゃん?もしかしたら城に入った時点で洗脳にかかっちまうかもしれないし」
そう言いながら天音は地面にへたくそな城の図を描きだした。
「だからまずゴースケが超巨大化して屋根を取る!!!」
「「「は?」」」
3人の反応が予想外だったかのように天音は、地面に描いた図に俺のような長方形に足が生えた物体を書き足して城の屋根の部分を持ち上げる絵に変えた。
「いやいやいや、図で見たらさらに意味わからなくなったッス!!」
「だからぁ屋根を上からこうバキッて折ってさぁ~そこからみんな中に入るの突然だったら多分魔王もびっくりすると思うよ」
「いやそりゃびっくりしますけど!」
「だろー!だから魔王が一番油断する時間って何時だと思う?夜行性っぽいから真昼間とかの方が無防備だったりすんのかな?」
「ハムスターじゃないんスから…」
「おねえちゃんに聞いておけばよかったなぁ」
真面目な2人は呆れつつも一応真剣に天音の作戦を聴いている。
「本当にこのパーティの作戦立案役アイツしかいねーの?」
俺はウーサーの言葉に頷くことしかできなかった。
「…honeyの作戦は意外と有効かもしれないな」
「またまた~アランさん~俺ら馬鹿なんスからアランさんしか止められないッスよ」
「え、ウチもちゃっかり馬鹿扱いされとる?!」
チルハは知識量はあるが応用がめちゃくちゃ下手糞なタイプなだけど馬鹿だとは…いや、天音に対して馬鹿なところはたびたびあるが…
「洗脳が効かないのストーンキャットに奇襲をかけてもらいつつ洗脳をかけられる前に倒すという作戦は今考えうるかぎり最も有効な手段なのではないか?」
「だよな~!!さっすがアラン!!」
アランの同調により調子に乗った天音の声が一段階大きくなった。
「…洗脳…されたらどうなるんやろ」
チルハが天音の描いた城を見つめながら呟く
「予想するに、魔王への恐怖心を植え付けられて、近寄れなくなる…だろうか」
「魔物に変えられるとかだったらどうしましょう?!」
「それは無いだろう。人間は魔物に変えるなんて大量のエネルギーがいる魔法目立たずにできるわけがない。きっとリトルキャットの姉も気づくんじゃないか?」
「たしかに…」
「いやちょっと待てよ」
天音の隣に座っていたウーサーが不安げに会話を止める
「本当にこんな方法で上手くいくのかよ…そもそも、魔王の魔法が洗脳だけなら、腕っぷしが強い部下が何人もいるに決まってんだろ」
「それならなおさら序盤にいるであろう敵を無視して奇襲をかけるのは有効な手だぞ。少年」
「…でも」
「大丈夫。お前は安全な第5区にいてくれていいから」
天音がウーサーの不安を鎮めるように頭を撫でる。ウーサーは顔を赤くして黙り込んでしまった。
俺が屋根を破壊しそこから侵入し、洗脳される前に叩く。仮にその間に恐怖を植え付けられて帰らされたとしても天音なら確実に洗脳の影響を受けないで2度めの奇襲をかけることができる。粗削りだがなかなかいい作戦なのかもしれない。
そこで、俺が天音を拳で仕留めれば魔王様をお守りもできるしな。
「ゴースケ?」
天音が胡坐の上に座る俺を摘み上げた
どうした?
「なんかボーっとしてたから!まだ眠いのか~?お寝坊さんめ。幼馴染の俺が毎朝起こしに来てちゃっかりキスする奴やらないと起きないのかな~?」
なんて偏った幼馴染の知識なんだ。幼馴染は幼馴染でも男友達だろうが。
天音は俺の心の中のツッコミに満足そうに笑った。
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