第32話 破天荒な友人のパーティは密かに強く結束している②
前には、悪い顔した魔法使い
後ろも横も、ガラの悪い魔法使い
俺達は気づいたら完全に取り囲まれていた。
これは確実にピンチである。
王都内での私闘は一応禁止されている。
特に魔法を使った私闘を行った場合は、王の騎士団の取り調べを受けなくてはならないという決まりがあるらしい。
前回の路地裏での喧嘩はどちらも魔法を使って戦おうとしたため、どちらも取り調べを受ける羽目になってしまった。
逆にチルハにトールが絡んだ時の争いは、幸いどちらも魔法を使う前にお開きになったため事なきを得たのだ。
しかし、今、ここは王の騎士団の本拠地である城からはかなり離れている。
路地裏の喧嘩の時のように運良く見つかって止めてもらえる可能性は極めて低いだろう。
見つかるとしたら、遠くからでもわかるほど派手な魔法を使った時だけだ。しかし魔法を使えば取り調べを受けなくてはならない。
今、俺達は騎士を殴って捕まりかけたというウーサーを匿っている。騎士団に取り調べを受け、それが発覚した場合、確実に何かしらの処罰を受けることになるだろう。
それはまずい。
よりによって、"巨大化"と"爆発"という、どう頑張っても目立ってしまう力の面子しかいない。だからといってこの人数相手に対抗する手段は魔法しかない。
まずい。まずい。
「なんだぁビビッてんのかぁ!」
トールの後ろの男が煽りながら、俺達の周りの壁から棘のようなものを出す。
反射的にかがむ。
俺の頬にピッと赤い飛沫が飛んだ。
それは俺とヒートの顔の間を、トールが発生させた"かまいたち"が通りヒートの頬に浅い切り傷ができた時に飛んだものであるということに遅れて思いいたった。
まずい。向こうは完全に魔法を使って攻撃をしてくるつもりだ。
取り調べられて困るものなんてないのだろう。
「…まさに、姐さんについていくと決めた事の弊害ッスね」
ヒートはかまいたちによってできた傷口をペロリと舐めて自嘲気味に笑った。
…いつもみたいな巨大化でなくとも、人間くらいの大きさになれば、確実に何人かは殴れる。
俺はヒートの肩から飛び降りて巨大化しようとする。
しかし、地面に着地する前に、ヒートによって掴まれた。
「恐らく奴らの狙いは人間の俺を見せしめにボコること、または取り調べを受けさせることッスだから俺のことしか今は認識してません。」
ネガティブ気味な性格故か、人の悪意に敏感なのか、意外にも冷静な状況分析を小声で伝えてくれた。
「だからゴースケさんは小さくなって、そのまま助けを呼んできてくれると助かります…」
その間、お前はどうするんだよ。
「ゴーレムもそんな顔するんスね。大丈夫ッス!!俺タフなことは結構取り柄だと思ってるので」
明らかにヒートの顔は無理している顔だ。
俺はなんとかここから2人で逃げ出す方法を考える。
しかし、そんな暇を与えないとでも言うように、俺とヒートの間に再び"かまいたち"が襲ってきた。
ヒートは咄嗟に俺を離す。
俺は地面に小さな土埃を上げて着地した。
トールたちの視線は、ヒートの言った通り、完全にヒートのみを捕えている。
もしかしたらヒートが他の仲間とはぐれて人通りの少ない場所にいく瞬間を、今までずっと狙っていたのだろうか。
考えてる暇はない。
今は急がなくては
俺は小さな姿のまま、トールの仲間たちの足元を全力疾走し、市場へ向かっていった。
後ろの何かが崩れるような音が、嫌に後ろ髪を引っ張ってくる。
しかし、今できる最善の方法は、目立たずにこの状態を脱することだろう。
――せめて足は引っ張りたくないんス!
そんな事を言っていたな。
お前の言う通り。少なくとも俺はただ一回ともお前に足を引っ張られたなんて思ったことないよ。
きっと、みんなお前のまっすぐさや素直さに救われていた。
特に天音は。
アイツはあぁ見えて後輩に尊敬される場面の少ない先輩なんだ。
ひたむきに慕ってくれるお前の存在が、アイツにはどれだけ嬉しかったことか想像に難くない。
頼むから無事でいてくれよ
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