第10話 トラブルメーカーな友人は逃げ惑う


その後、俺達は夕方まで爆睡。

起きたらもう日が下がりかけていた。


「よっし早くギルド行こうぜ!!今頃、素面に戻った酔っ払いたちが俺達の偉業に震撼してるに違いないぜ!!」


ヒートも犬属性だがこっちはこっちで犬みたいだ。起きてすぐに玄関の前で尻尾振っている幻覚が重なるな。


「ねぇこれどうしてくれんだよ?」


俺達はギルドにつくなり明らかにガラの悪い男に囲まれていた。


「なんだ?俺達の偉業に恐れをなしたか?!」


人の神経を逆なでする笑顔で天音が煽る。何故。


「こっちはさ、雑魚を適当に倒してれば生活できる金は手に入ってたんだよ」


「暗黙の了解でみんなで分け合うようにしてたわけ?わかる?」


なるほど。比較的な難易度の低い依頼をちょっとずつ時間をかけてこなすことで、どこかのパーティーが金を独り占めするのを避けていたのか。


それをいきなり4分の1も無くしたらバランスが崩れるに決まっている。

それにしても王都というぐらいだから崇高な戦士たちが集まっているのを想像していたが想像よりも治安は悪いし腐っているな。

金のために全力をださないなんて…気持ちはわからなくもないが…


「そんな自治ルール知らん。」


しかしアマネはバッサリと切った。


「ヒートお前知ってた?」


「いえ、実質仲間外れにされていたので初めて知りました…」


ヒートはヒートで別の衝撃を受けていたようだった。かわいそうに。


「正直本気を出せば俺達だってあれぐらいの量、行けるわけよ」


「はぁ?じゃあやってみろよ」


「やっちゃったらお仕事無くなって強制的に王都の騎士になるだろ。あんな危険なことやりたくねーよ」


「俺達はこっちで楽に稼いで暮らしてーの」


「うわ、腐ってんなぁ」


「なんとでも言えここの連中はみんなこうだよ」


「だからお前らにも腐ってもらわないと困るの」


「わっ」


男は天音の腕を掴んで持ち上げようとする。ヒートがすかさず男の腕をつかむ


「その人に手を触れないでください。」


ドーベルマンのような瞳で男達を睨んだ。


「役立たずのくせに、良い目をするじゃねぇか」


「でもお前相変わらず役立たずの癖に馬鹿だな算数もできねーの?」


「お前ら状況わかってる?2人対10人だが?」


気づいたら前にも後ろにもいかつい男がゲスい笑みを浮かべ囲んでいた。

2人で割っても四面楚歌以上だ。


「ヒートは適当にボコって俺達はお姉ちゃんと遊ぼうぜ」


「俺達とみんなと遊べばお姉ちゃんもわかってくれるよなぁ!!」


男達が下品の笑い声をあげる。


しかし、その笑い声には明るくやんちゃながらにどこか艶のある天音の笑い声が混じっていた。


「…なに笑ってやがる」


「お前らこそ状況わかってねーじゃん?」


「なんだ?人数差わかってんのか?2人で10人も倒せると」


「3人だよ!!」


天音はそう叫んで手を振り上げた


「轟介!!」


さすがに叩き潰すわけにはいかない。


しかし脅すぐらいは良いだろう。

俺はヒートを殴れと指示された時のように拳を巨大化させ、その場にクレーターを作って見せた。


「ひ…」


天音の手を掴んでいた男が尻もちをつく。

ヒートは俺の攻撃を一度食らいかけただけあり予想できていたのか、端の方で天音を守るように立っていた。


「お、おい人数はこっちの方が勝ってるんだぞ!ボーっとすんなお前ら!」


尻もちをついている男が慌てて叫ぶ。その時


「私闘は禁止されている!!」


つんざくような声がこの場を支配した。


「げ、王都の騎士…」


男達は水を掛けられた猫のように勢いを無くす。警察のような団体だろうか。


「捕まえはしないが違反1だ。全員身柄を確認する。入国許可証を見せろ。」


入国許可証…俺達が今確認されたら確実にまずい物だ。

さすがの天音もヤバイ状況だと察したらしい。


「やば。逃げるぞ!!」


「マジっすか?!」


男達が身柄確認を行っている隙に二人は走り出した。俺も慌てて小さくなり天音のポケットに入る。


「待て!」


男はそんな俺達を見逃さない。せっかく並ばせた屈強な男達を放りだして走り出した。

しかし、アマネは意外にも初めて来たはずの街の地形を完全に把握しているが如く巧妙に逃げる。


「あいつしつこい!!」


「あの人王都騎士の中でも有名な説教好きの堅物騎士っス!!」


「マジかよめっちゃ厄介だな…痛っ!!」


天音は小柄な人とすれ違いざまにぶつかったらしく、尻もちをついた


「悪ぃ、大丈夫?」


一緒に尻もちをついてるぶつかった相手に手を差し伸べる。


「だ、だいじょ」


「ああああヤバイごめん!!ちょっと急いでて!!」


天音は大丈夫を全て聞き終わらない内に再び走り出した。ぶつかった相手が何かを言いたげに手を伸ばしているのが見えた。


後でもう一度謝った方が良いかもしれない。


俺達はそれから数十分追いかけっこを続けていた。

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