第11話 行動力溢れる友人は仲間がほしい


数十分に及ぶ追いかけっこを止めることができたのは天音のこの一言だった。


「こっちだ!美栗飛び込め!」


天音はそう叫び思いっきり飛び込んだ。ゴミ捨て場に。



ツンと鼻を刺激する臭いで嘔吐したくなるが、幸か不幸か俺には胃袋はついていなかったため事なきを得た。嗅覚は残っているため不快感は変わらないが。


「行ったか…」


鼻をつまみながら天音がゴミの山から顔を出した。


「ゴミ捨て場に飛び込むとか姐さんマジ半端ねぇっす」


涙目ながらも天音を誉めながらヒートも顔出した。


「まぁな!!ちょっと体は臭くなってしまったが結果オーライ!」


ゴミの山から飛び出すと天音は服についたゴミを払う。俺もそれに合わせて天音のポケットから飛び出しゴミを払うのを手伝ってやった。


「うう…汚い…シャワー浴びたい…ってあれ服になんか入ってる」


そこには全く見おぼえの無い二枚折りのカードのようなものが入っていた。


「それ入国許可証じゃないっすか!?!?」


ヒートが三軒先まで聞こえそうなクソデカ声と共に後ろに仰け反った


「え、マジ?誰の?」


「中身に名前書いてあるはずっす!」


そこにはAmaneとローマ字でファーストネームのみが書かれていた。


「?俺のだ」


いやそんなわけないだろう。いや、同姓同名?そんな偶然ありうるか?


「なーんだ!入国許可証もってるなら逃げる必要なかったじゃないっすか!姐さんもせっかっちっスね!!」


「え、え貰った覚えない…え?な、なぁ轟介?!」


いや、俺に聞かれても


「そんな訳ねぇっすよ。それ試験に合格しないと貰えないじゃないっすか!いきなり湧いて出るなんてそんなぁ!」


その時、俺は先ほどぶつかった小柄な男の子を思い出す。

俺は手と手でぶつかる仕草をしながら天音にアピールする。


「ゴースケさんが何か訴えってるっス。拳と拳?がぶつかり合う」


とんでも解釈をしだしたヒートに慌てて首を振る


「ああ!さっきぶつかった女の子か?!」


俺は大きく頷いた。


「さすが姐さん!ゴースケさんの言っていることわかるんスね」


「ふふふふ、相棒ってやつだから」


いや、数年ぐらいまともに喋ってなかっただろ…でも相棒…相棒か…


人外に転生しながらも相棒として扱ってくれるのは嬉しいものかもしれない。


「それよりさっきの女の子探さないと」


「いやいや、あの子も俺と同じで微妙にパーティーが組めてない男の子っすよ。ちょっとナヨナヨして人見知りの強い子みたいで、誰かと談笑してるとこも見たこと無いっす」


「なんだよ、お前と仲良くなれそうじゃん」


「話しかけたら悲鳴あげて逃げられました」


天音はその言葉に失礼なぐらいに大爆笑をしだした。


「よし、そいつ仲間にしに行くか」


転げまわるぐらい笑っていたと思ったら、急に正気に戻って正気じゃないことを言い出した


「なんで!?」


時間差でヒートが驚く。


「使えそうだからだ!そして俺に好意があるとみた」


また根拠もないことを臆面もなく言い出す…


「いやいやいやいやまともに喋ったこと無いっすよね!?」


「俺にはわかる!!会いに行くぞ!」


胸を張ってえらそうに言った。

せめて体洗ってからの方がいいんじゃないか?その匂いで近づいてきたら再び一目散で逃げられるだろ。


「あ、その前にお風呂入らないと、轟介一緒に風呂入るか?」


ゴーレムじゃなかったら思わずぶん殴ってた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る