第4話 ノリが軽い友人は天下をとりたいらしい
「どうせだったらさ~天下取りたくね?取りたいだろ?」
天音と異世界を旅して数日。
突如こんなことを言い出した。
俺は言葉を発することができないため、馬鹿野郎という事すらできない。しょうがなく黙って天音の戯言を聞く。
「なんかお前とだったらいけそうな気がするんだよね」
まだ魔物ばっかりで人間にすらあってないのによくそんなこと言えたな
「俺の頭脳とお前のちょー強い力があれば絶対天下とれるって」
しかもお前が頭脳担当なのかよ。どう考えても不向きだよ
「天下ってどうやったらとれるのかな?王とか倒せばいいの?国とか滅ぼす感じ?」
戦国時代のイメージにかなり引きずられているな。わざわざ現代社会から異世界転生してきた意味皆無か?
「あ、俺美少女だから傾国とかいける?」
無理だろうな。馬鹿だから。
そんな風に一方的な会話を聞いていると、ふいに、大きな物体が這いずるような音が聞こえてきた。
「だからさー俺はンムッ」
そんな事にも気づかず会話を続けようとしている天音の口を手でふさぎ黙らせる。
天音もようやくそれで音の存在に気づいたようだ。真剣な顔つきに変化する。
近づいてくる音からゆっくりと遠ざかろうと、一歩一歩と後ろに後退していく。
突如、音が止んだ。
逃げたのか?一瞬気を緩めた時
「上っす!!」
そんな声と共にまさに真上。
上空から花火のような轟音が響いた。
遅れて、どさりと大きな猿のような生き物が土埃を上げて落ちてきた。
上に飛び上がっていたのだろう。危なかった。後から冷や汗が流れるような感覚が追ってくる。今ので下手していたら死んでいたかもしれない。
「だいじょーぶっすか!?」
図体のデカい男が草むらから飛び出してた。
いかにも運動部にいそうな雰囲気の男だ。正直苦手な人種ではあるが、今は何よりも命を救ってもらった感謝の方が大きい。
「たすかった!誉めて遣わそう!」
しかし天音は驚くほどに上から目線だった。嘘だろ。
「女!?」
男は勢いよく近づいてきたと思ったら、磁力が反発したように遠ざかった。
「なんでこんなところに!?女の人が!?」
まるで珍獣を見たかのような反応に天音は怪訝な顔をして俺を見る。いや、俺を見られても。
「なんか変?」
「変もなにもこんな所女の人が来るところじゃないっすよ!」
「何?肥溜めでもあんの?」
「いやいやいやいやいやいや、ここがどこだと思ってんですか!?王都っすよ!?
戦士の街っすよ!!」
「マジ!?聞いた?轟介?よくわからんけど王いるってよ!ラッキー!」
本当に天下とるつもりかよコイツ
「よくわからんなら帰った方がいいッスって!ここら辺強い魔力を持った人が集まるせいかやたら強い魔物が大量に現れるし、天下を狙ったテロリストみたいな組織もしょっちゅうきますし!」
いや、コイツ後者に限りなく近い事を企ててたよ
「なーるほどね…」
天音は遠くの方を見つめながらつぶやいた。
「例えばあんな群れが、こぞって現れるわけだな」
気づいたら、草むらの奥から、明らかに巨大な生物の眼球が光って見えた。
「ひいいっ!?しまった!!やっぱ目立ちすぎた…」
男は涙目で叫びながらも、俺たちを守るように一歩前に出た。
「危ないので後ろ下がってください!!」
「いける、いけるいける。よし」
男は言い聞かせるようにそう唱えながら上空に向けて指を向けた
それが合図のように、打ち上げ花火のような爆発が起きた。
しかし、爆発は魔物と離れたはるか遠くの空だった。集まってきた獣は一斉にそちらに注意がそれる
「逃げるっスよ!!」
男はそう叫んで、軽々と天音を持ち上げて走り出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます