第4話 メタファーマーメイド
昔というほど昔でもないけれど、あるとき人魚姫は溺れた王子様を助けました。
が、特に恋に落ちたりはしませんでした。
そもそも目の前で溺れた人間を助けて、助けた側が恋に落ちたりはしません。良かったな〜!で終わりです。
しかし人魚姫はそこで見た人間の船に憧れるようになります。
「私も明るい場所でダンスをしたり歌ったりして、あんな風にたくさんの人と笑えたらなあ」
人間の世界に憧れた人魚姫は深海の魔女と契約し、声を失う代わりに脚を得て地上で生きる術を学びます。
初めて歩く砂浜は焼けるように熱く、空気は砂の味がしました。
音楽は水中のように優しく響くことはなく、頭を殴られたように鳴り渡りました。
太陽は眩しく、目を焼くようでした。
それでも人魚姫は人として暮らします。王子を助けた時点で掟を破ってしまった人魚姫に、帰る場所はありませんでした。
優しい海の底にはもう戻れません。
人魚姫は新しく得た脚を開き、人として暮らしました。
あるとき、以前海で助けた王子様と出会います。痩せた青年だった彼も、今や立派な王様です。
「そこの女を貰おう」
王様は人魚姫を指差して言いました。
人魚姫は王様に抱かれながら思いました。このクソ野郎、ぶっ殺してやる。
目が覚めたら芋虫だった件 短編集 湊 @minatoFF
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。目が覚めたら芋虫だった件 短編集の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます