第2話 死後の世界で勃起して迷子

まぶしさを覚え目を開くと


そこは真っ白な世界だった




いつの間にトンネルを抜けたのだろうと場違いなことを考えていると


ぼくのように今しがた目覚めたのか、うすぼんやりと周りを見渡している多くの人々を認識した




声をかけようと思うがなぜが声がでない


何が何だが分からない状況に戸惑っていると




目の前からどえらい美人さんが、はだけた衣装をまとって現れたのだった


みなを見渡して手招きしている、どうやらついてこいといった感じだ




ぼくは美人さんの色香に充てられ、下半身の高ぶりが恐ろしいことになっており




勃起を隠そうと前かがみでクネクネ歩行した結果


集団から大部遅れてしまっていた


ついには誰も見えなくなってしまった…




これは困った、美人さんに興奮して、よく分からないところで迷子になってしまった…


そもそもぼくはどうしてここに…




確かエロ同人を買って早く読もうと考えていたはずだが…


答えのでない問答を繰り返し、あてどなく白い空間をぶらぶらしていると


こじんまりとした家屋に行きついた




頼れるものもいないので、意を決してドアをノックすると返事があった




質素な木造のドアがゆっくり押し開けられる


中から現れたのは、豊かな髭をたくわえる温厚そうな老人であった




彼の招きに応じ家屋に脚を踏み入れると


そこはたくさんの蔵書に囲まれた雑多な空間だった


部屋の中央にあるテーブルに招かれ、着席を勧められる




彼に好意に甘え席につくと


彼を髭をふさふさ揉みながら、徐に話始める




「こんなところにまで訪れる迷い人は久しぶりだ。君はどうして死んだ?」




彼の質問に、あぁ…そうか自分は死んだのかと納得する


どうりで答えがでないわけだ、死んだことを認められなかったのだから




そうともすると、喉の栓が抜けたかのようにスッと言葉が出てくるようになった




「散らばったエロ同人を拾っていたら、トラックに轢かれました…」




それを聞いた老人はしばらく呆けた顔をして、しばらくすると肩を小刻みに震わせだした


次第に震えは大きくなり、終いには大笑いしだした




人が死んだというのになんと失敬な!とだんだん腹立たしくなったが


思い返してみると我ながらとても恥ずかしい死に方で


その後の両親の迷惑も鑑みると、だんだん死にたくなってきた…もう死んでるのに…




その間に老人の笑いは落ち着き、すまないすまないと謝罪を述べたのだった




「大変申し訳ない…久しぶりの来訪者なもので、配慮が足りなかった…。すまないがここに辿り着いた経緯も教えてくれないか?」




とても答えにくい質問だ…


まさか美人に発情して道に迷ったなど…


しかし答えないからには話がが進まなそうと判断し


気は進まないがごまかして回答した




「目覚めてから現れた美人さんに面食らっているうちに周りとはぐれてしまって…」




「嘘だな。正直に申せ。大事なことだ。おぬしの今後に関わる」




老人のすごみのある言葉に押され


赤面しながら真実を伝えたところ


今度は溜めなしに老人は盛大に噴き出した




「死後間もなく勃起する若造とは!」




しばらく老人の笑いは続き


ぼくは羞恥に悶えるのだった




「まあその歳で、エロに興味津々。エロの希望を胸に死んだわけだから、そういうこともあるだろうな」


と理解を示してきた老人




「詳しく話すと、ここは死後の世界だ。死んだ魂を別の世界に循環させる場所だな。おぬしは本当なら、集団についていき、裁定され、次の世界で生まれ変わっているところだった。」




「もはや間に合わんし、このままこの世界でまつろわせるわけにもいかぬ。どうだろう、私の管轄する世界におぬしの魂を転移させようか?」


と驚きの提案をしてくるのだった

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